【完結】剣の世界に憧れて上京した村人だけど兵士にも冒険者にもなれませんでした。

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裾は、切らない

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 朝になり、服が乾いていてホッとする。タオルや着替えを買わないと、町では生活出来ないな。服を着て、朝食を摂る。昼のパンを買って12銅貨だ。今日は生活雑貨を買う日と決めた。

 衣類は高い。しかも何枚も重ね着するので一揃え買おうとすると吐きそうな値段となる。目の前にある古着屋は、僕達庶民の味方であり、戦いの場でもある。

 大通りの北側に構えた古着屋は、まだ午前中だと言うのにお客で賑わっている。

「いらっしゃいませー、自由にご覧なって下さいねー」

 売り子だろう女性が声を張り、お客を煽って行く。

「男物が欲しいんだけど、この店で良かったかな?」

「はーい、大丈夫ですよー。そこの角にあるのが男性用なんでー。あ良かったら選びますよー?」

 断れず、頷いてしまった。僕は押しに弱いのかも知れない。僕からの『手頃な値段で一揃え』との注文に、バババッと瞬く間に3パターン揃えられた。

 古着を買う時は必ず大きい方を選ぶ。これは小さい物だと着られないからである。なので必ず試着をしなければならない。

 靴を脱ぎ、その場でズボンを履く。履いてるズボンの上から履くのだ。キツかった物はココで省かれる。そして同様にシャツと上着を確認し、サイズに合った物同士を値段を見ながら組み合わせて、一揃えが完成する。下着は試着しない。下着含めてお値段1,28,00ウーラ。足が出た。下着は諦め1,18,00ウーラでお買い上げ。手持ちが銅貨4枚と鉄貨4枚になってしまった。

 昨日の今日で銀座に行くのは恥かしいが、金を引き出す練習とでも言えば納得してくれるだろうと言い聞かせ、昨日出向いた銀座へ赴いた。

「いらっしゃいませ。セーナ様のお使いでしょうか?」

「お金を下ろす練習をして来い、と」

「左様ですか。では此方へ」

 銀座カードを出して、引出し金額を書いた引出し用紙と共に職員に出すと、ビカッと光る箱がビカッとなり、銀座カードとお金を受け取る事が出来る。僕はカードのやり取りと引出し金額を言うだけで、書くのは職員がやってくれた。銀貨2枚とカードを財布に入れて、銀座を出る。

「ふぅ~~…」

 緊張した。この町の庶民はみんなこんな緊張して金を遣り繰りしているのだろうか。とにかくこれで、下着が買える。古着屋に戻って下着とタオルを購入した。20銅貨也。

 カバン2つに服を詰め、昼まで町を見て回る。武器の専門店に肉屋に野菜屋。椅子や家具を売る店もある。色んな店があるけれど、最後はココに戻ってしまった。吊り下げ看板に剣と斧。武器の専門店だ。

「お客さん、じゃ無いね?」

 店主の言葉が刺さる。

「来年買うからっ」

「来年おいで」

 ぐうの音も出ないが腹が鳴り、店主に笑われた。野菜屋でアカナス2つと、肉屋でほぐし身の茹で肉を買って、馬を見ながらお昼を食べた。塩気があって美味かった。

 洗濯は風呂屋で行う。女性の場合は分からないが、男湯では半数程が服や鎧を洗ってる。どうやら暗黙の了解らしいのだが、武器だけは危ないから外でやれと言われているらしい。暗くなる前に銭湯に着いて、着ていた服を全部洗い、新調した古着を着けて帰った。

 翌日。洗った服が乾いてないので継続して部屋を借りる。何日分か一気に払っても良いと言われたが、いつ死ぬか分からないので1日分で支払い、町を出た。

 今日の採集は昼までやって、ジャリソウがカバン半分、ツルショウガが1束、キセルタケが5本。そしてキズグスリが20枚採れた。勿論加減しての成果だ。

 キズグスリと言う植物は長さ10cm、幅8cm程のギザギザ楕円の葉を持つ草で、昔から傷薬として重用されている。噛んでネトネトして来たら傷に塗り付け、上から1枚貼り付けると言う使い方が一般的だ。どこにでもある薬草だから売れるかどうかは分からないが、取り敢えずセーナの店に持って行く。ギルドに行くと服を変えた事で何か言われそうだったので今日は行かない。





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