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使用感の、報告有り
しおりを挟むジュンの背負う背嚢は体に合わせた大きさで、僕のより一回りは小さい。外泊用の装備を詰めるとして、普通に詰めるとなると寝袋とテントは背嚢の上に積み上げて縛り付ける事になるだろう。食料と炊具を入れたら満員な大きさの背嚢から10人前は下らない大きさの円柱鍋がスポンと出て来た。更にパンが入っているバスケットに練り肉の焼いたのの入った金属の箱。そしてカトラリーまで取り出した。明らかに容量オーバーだ。
「凄いヤツだねそれ」
「ええ…。お爺様が、用意してくれまして…」
ジュンの背嚢はマジックバッグを加工した物で容量が大きく、保存の付与がされていると言う。間違い無く高いヤツだ。
お爺様は過保護だが、僕等にとってもありがたい。クリスエス商会に注文した商品は全て貸与と言う形で実用的な上級品が宛てがわれたからだ。ロープやアイゼン等、ほとんどの物が最初の見積もりより何倍も高い物に変わった。これが買い取りだったら毎週忙しくなっていた事だろうな。
「すごっ、温かいっ、んまっ」
「会頭様には頭が上がりませんね」
「私からも後日お礼文を送りましょう」
温かく、体に染みる味の濃さ。商会が用意してくれたと言う食事はとても美味しいが、とにかく時間が惜しい。とは言え今回は不運と諦め開き直るしかないだろう。山歩きが初めてだったり敵と戦うのが初めての子も居るのだ。ゆっくり食べて、食休みを取りながら、もうちょっとだけ散策したら戻ろうと提案した。
「崖の下から見上げて、見える場所に生えてたら次の時に採ろうって思うんだけど」
「無ければ次。ですわね?」
エリザベス様も一度の遠征で成せるとは考えていないようで、すぐに次へと切り替えが早い。物は物でなるべく早く欲しいだろう。それでも今日得た経験が自分達の糧になっている事を理解しているようだ。
「アタシだけでも登ってみよっか?」
「谷間はすぐ暗くなるから止めとこう。夕飯に遅れたくないからね」
「あーい」
ロシェルなら登って降りるは出来るだろう。花木の同定が出来るならお願いしたかった。片っ端から毟って来るのも有りか?取り敢えず現場判断で目的地に向かう事となった。
しかし崖の下に着いた所で時間切れ。日が山に隠れて暗くなり始めてしまった。
「やっぱりここまでだったね」
「登る?」
「見た感じ、ソレらしき木は無いみたい」
「昼前に、着きたかったね。調べる時間が全然無いもの」
「戦闘を早める必要がありますね。精進します」
「私も足手まといにならぬようにしませんと」
「エリザベス様は居て下さるだけでありがたいのですっ」
「エリザベス様のお手を煩わせる訳にはっ」
取り巻き達に囲まれて、あらあらと困った顔をするエリザベス様だが、今回はレイナと共に一度も戦闘には参加させず指示をしてもらった。2人共火魔法の使い手で、森を焼くのを回避した結果だ。
崖の上を凝視しながら休憩し、山を下りる。来た道を帰るのでブフリムの死体にブフリムやウォリスが集っているのを倒して進み、町に戻ったのは夕方。
「早くしないとご飯無くなっちゃうよ!?」
「その前に門に鍵を掛けられてしまいます」
余程緊急の時でないと開けてくれないそうなので、皆急ぎ足で学園に戻った。
「お嬢様、いつでもお呼び下さい」
「ええ。早く呼ばなくても良くなって見せますわ。では、お父様に宜しく」
学園の門前まで付いて来た隊長はエリザベス様に深く頭を下げると、僕達が見えなくなるまで見送っていたようだ。
「明日はどうする?ブフリムの小銭を分けたいんだけど」
「貴方達でお分けなさい。私には無用です」
「冒険者はきっちりしないとダメだよ。初めて戦って勝ち取った報酬だからね」
記念として受け取ってもらうため、明日も皆で集まる事になった。
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