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美味そうに飲む、馬
しおりを挟む水場の匂いが分かると言うハキ。学さえあればスリになんてならなかっただろうに。
「例えば今、井戸以外で水場の匂いって分かるのか?」
「風向きからしてあっちだな」
「北か」
「北上しながら匂いを辿るのが良さそうですわね」
少なくとも西じゃない。エリザベス様の提案に乗る事にした。
馬に跨り林を進む。歩く程度の速度しか出せないが、索敵に集中出来る分安全に移動する事が出来る。
「方向はズレてないか?」
「おっぱい揉んでくれたら分かっかも」
「水場があれば洗ってやる。おっぱいもお尻も揉んで擦ってやるからな?」
冗談言うって事は問題無いのだろう。それに言ってる事がエヴィナと変わらない。それ即ちこの地方の人皆が言ってる冗談なのだ。真に受けて揉んだらどうなってしまうのだろうか。凄く気になる。
「本当に必要なら揉むから言ってくれ」
「う…」
揉む程無い胸を両腕でギュッとしたハキであった。
「臭ぇけど、水場があっぜ?」
「貴方様。前方やや西に10体」
「魔物の水場ってか」
ハキに臭いと言わしめる水場があると言うが、それは僕達が飲める水なのか?だか魔物がいるのならば倒しておいて損は無い。ブフリム以外なら食料にもなるしな。
「慎重に殺り切ろう」
「「おう」」「よしなに」
水場にいたのはボア種。四足の魔物で雑食性が強く、農作物や人を食う奴だ。村で狩られていた物より小型が多いが、顔がゴツゴツしている気がする。
「干し肉でしか食べた事無いけど美味いぞ」
「やってやんぜ」
「上手く避けて横から。皮は無視。行くぞっ」
馬を降り、林の木々を盾にして近付く。そしてエヴィナに気付いて突進して来たボア種に中剣を構えて突っ込んだ。
「ピギィイッ!!」
「とどめっ」
横倒しになったボア種の首に、エヴィナの剣が突き刺さる。生きていても攻撃する程の力は残って無いだろう。後9匹。皆がこちらを狙ってる。
2匹目、3匹目までは狩れていたが、こちらが上と分かると残りは逃げてしまった。本来魔物は人を見ると絶対殺しに来るモノだが、多少知恵が付くと逃げる者がいる。数を増やして復讐に来たりするのだが、今ですら多勢に無勢。追う事は出来なかった。
「今夜は焼肉だぜ!」「うおー」
「それより水。装備を洗いたいよ…」
突進して刃物を突き立て、血糊を浴びた僕の鎧の正面は真っ赤になってしまった。葉っぱを毟って拭いてみたが、赤いのと臭いのは拭い切れない。アルアインさんが恋しい。
「飲むのは論外だぜこれ」
「ドロッドロだな」
魔物の水場は口に出すのもちょっとアレな感じで利用には適さない場所であった。とは言え見過ごす事は出来ない。ここの水が南下しているのならば、廃村の井戸水にコレが混ざってしまうかも知れないからだ。だが今は無理。
「いるだけで気分が滅入るね。解体したら先に進もう」
首と臟を外して軽く血抜きしたボア肉をエリザベス様のポーチに収納してもらい、先を急ぐ。林が濃くなり、高木が増えると同時に地面がぬかるんで来る。馬の足音がグポグポ鳴って、歩くのもキツそうだ。
「旦那様、水の音がすっぜ?」
「チョロチョロ?ゴーゴー?」
「チョロチョロ…かな」
馬に勢いを付けて向かうと、ぬかるみの溝に水の流れがあるのを見付けられた。
「この辺りから地面に入ってくんだね」
「かもな。せっかく水があってもよ、こんなぬかるみじゃ村は作れなそーだな」
エヴィナの地方はそう言う考えなのだな。とにかく下馬してナイフを取り出し、チョロチョロした流れに穴を掘る。地面は柔らかく、膝下くらいまで掘るのにも時間は掛からなかった。ハキとエヴィナにも近くにあるチョロチョロに穴を掘ってもらった。濁りが流れ、澄んだ水になるのを待ち、ポーチに収納したり馬に飲ませる。流石に人はそのまま飲めないね。最後に武器と防具を洗う。血糊が黒くなってて落ちやしない…。
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