【完結】剣の世界に憧れて上京した村人だけど兵士にも冒険者にもなれませんでした。

もる

文字の大きさ
288 / 385

美味そうに飲む、馬

しおりを挟む


 水場の匂いが分かると言うハキ。学さえあればスリになんてならなかっただろうに。

「例えば今、井戸以外で水場の匂いって分かるのか?」

「風向きからしてあっちだな」

「北か」

「北上しながら匂いを辿るのが良さそうですわね」

 少なくとも西じゃない。エリザベス様の提案に乗る事にした。

 馬に跨り林を進む。歩く程度の速度しか出せないが、索敵に集中出来る分安全に移動する事が出来る。

「方向はズレてないか?」

「おっぱい揉んでくれたら分かっかも」

「水場があれば洗ってやる。おっぱいもお尻も揉んで擦ってやるからな?」

 冗談言うって事は問題無いのだろう。それに言ってる事がエヴィナと変わらない。それ即ちこの地方の人皆が言ってる冗談なのだ。真に受けて揉んだらどうなってしまうのだろうか。凄く気になる。

「本当に必要なら揉むから言ってくれ」

「う…」

 揉む程無い胸を両腕でギュッとしたハキであった。

「臭ぇけど、水場があっぜ?」

「貴方様。前方やや西に10体」

「魔物の水場ってか」

 ハキに臭いと言わしめる水場があると言うが、それは僕達が飲める水なのか?だか魔物がいるのならば倒しておいて損は無い。ブフリム以外なら食料にもなるしな。

「慎重に殺り切ろう」

「「おう」」「よしなに」

 水場にいたのはボア種。四足の魔物で雑食性が強く、農作物や人を食う奴だ。村で狩られていた物より小型が多いが、顔がゴツゴツしている気がする。

「干し肉でしか食べた事無いけど美味いぞ」

「やってやんぜ」

「上手く避けて横から。皮は無視。行くぞっ」

 馬を降り、林の木々を盾にして近付く。そしてエヴィナに気付いて突進して来たボア種に中剣を構えて突っ込んだ。

「ピギィイッ!!」

「とどめっ」

 横倒しになったボア種の首に、エヴィナの剣が突き刺さる。生きていても攻撃する程の力は残って無いだろう。後9匹。皆がこちらを狙ってる。

 2匹目、3匹目までは狩れていたが、こちらが上と分かると残りは逃げてしまった。本来魔物は人を見ると絶対殺しに来るモノだが、多少知恵が付くと逃げる者がいる。数を増やして復讐に来たりするのだが、今ですら多勢に無勢。追う事は出来なかった。

「今夜は焼肉だぜ!」「うおー」

「それより水。装備を洗いたいよ…」

 突進して刃物を突き立て、血糊を浴びた僕の鎧の正面は真っ赤になってしまった。葉っぱを毟って拭いてみたが、赤いのと臭いのは拭い切れない。アルアインさんが恋しい。

「飲むのは論外だぜこれ」

「ドロッドロだな」

 魔物の水場は口に出すのもちょっとアレな感じで利用には適さない場所であった。とは言え見過ごす事は出来ない。ここの水が南下しているのならば、廃村の井戸水にコレが混ざってしまうかも知れないからだ。だが今は無理。

「いるだけで気分が滅入るね。解体したら先に進もう」

 首と臟を外して軽く血抜きしたボア肉をエリザベス様のポーチに収納してもらい、先を急ぐ。林が濃くなり、高木が増えると同時に地面がぬかるんで来る。馬の足音がグポグポ鳴って、歩くのもキツそうだ。

「旦那様、水の音がすっぜ?」

「チョロチョロ?ゴーゴー?」

「チョロチョロ…かな」

 馬に勢いを付けて向かうと、ぬかるみの溝に水の流れがあるのを見付けられた。

「この辺りから地面に入ってくんだね」

「かもな。せっかく水があってもよ、こんなぬかるみじゃ村は作れなそーだな」

 エヴィナの地方はそう言う考えなのだな。とにかく下馬してナイフを取り出し、チョロチョロした流れに穴を掘る。地面は柔らかく、膝下くらいまで掘るのにも時間は掛からなかった。ハキとエヴィナにも近くにあるチョロチョロに穴を掘ってもらった。濁りが流れ、澄んだ水になるのを待ち、ポーチに収納したり馬に飲ませる。流石に人はそのまま飲めないね。最後に武器と防具を洗う。血糊が黒くなってて落ちやしない…。







しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった〜

霞杏檎
ファンタジー
祝【コミカライズ決定】!! 「使えん者はいらん……よって、正式にお前には戦力外通告を申し立てる。即刻、このギルドから立ち去って貰おう!! 」 回復術士なのにギルド内で雑用係に成り下がっていたフールは自身が専属で働いていたギルドから、何も活躍がないと言う理由で戦力外通告を受けて、追放されてしまう。 フールは回復術士でありながら自己主張の低さ、そして『単体回復魔法しか使えない』と言う能力上の理由からギルドメンバーからは舐められ、S級ギルドパーティのリーダーであるダレンからも馬鹿にされる存在だった。 しかし、奴らは知らない、フールが【魔力無限】の能力を持っていることを…… 途方に暮れている道中で見つけたダンジョン。そこで傷ついた”ケモ耳銀髪美少女”セシリアを助けたことによって彼女はフールの能力を知ることになる。 フールに助けてもらったセシリアはフールの事を気に入り、パーティの前衛として共に冒険することを決めるのであった。 フールとセシリアは共にダンジョン攻略をしながら自由に生きていくことを始めた一方で、フールのダンジョン攻略の噂を聞いたギルドをはじめ、ダレンはフールを引き戻そうとするが、フールの意思が変わることはなかった…… これは雑用係に成り下がった【最強】回復術士フールと"ケモ耳美少女"達が『伝説』のパーティだと語られるまでを描いた冒険の物語である! (160話で完結予定) 元タイトル 「雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜でも、ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった。噂を聞いたギルドが戻ってこいと言ってるがお断りします〜」

病弱少年が怪我した小鳥を偶然テイムして、冒険者ギルドの採取系クエストをやらせていたら、知らないうちにLV99になってました。

もう書かないって言ったよね?
ファンタジー
 ベッドで寝たきりだった少年が、ある日、家の外で怪我している青い小鳥『ピーちゃん』を助けたことから二人の大冒険の日々が始まった。

エリクサーは不老不死の薬ではありません。~完成したエリクサーのせいで追放されましたが、隣国で色々助けてたら聖人に……ただの草使いですよ~

シロ鼬
ファンタジー
エリクサー……それは生命あるものすべてを癒し、治す薬――そう、それだけだ。 主人公、リッツはスキル『草』と持ち前の知識でついにエリクサーを完成させるが、なぜか王様に偽物と判断されてしまう。 追放され行く当てもなくなったリッツは、とりあえず大好きな草を集めていると怪我をした神獣の子に出会う。 さらには倒れた少女と出会い、疫病が発生したという隣国へ向かった。 疫病? これ飲めば治りますよ? これは自前の薬とエリクサーを使い、聖人と呼ばれてしまった男の物語。

魔法物語 - 倒したモンスターの魔法を習得する加護がチートすぎる件について -

花京院 光
ファンタジー
全ての生命が生まれながらにして持つ魔力。 魔力によって作られる魔法は、日常生活を潤し、モンスターの魔の手から地域を守る。 十五歳の誕生日を迎え、魔術師になる夢を叶えるために、俺は魔法都市を目指して旅に出た。 俺は旅の途中で、「討伐したモンスターの魔法を習得する」という反則的な加護を手に入れた……。 モンスターが巣食う剣と魔法の世界で、チート級の能力に慢心しない主人公が、努力を重ねて魔術師を目指す物語です。

酒好きおじさんの異世界酒造スローライフ

天野 恵
ファンタジー
酒井健一(51歳)は大の酒好きで、酒類マスターの称号を持ち世界各国を飛び回っていたほどの実力だった。 ある日、深酒して帰宅途中に事故に遭い、気がついたら異世界に転生していた。転移した際に一つの“スキル”を授かった。 そのスキルというのは【酒聖(しゅせい)】という名のスキル。 よくわからないスキルのせいで見捨てられてしまう。 そんな時、修道院シスターのアリアと出会う。 こうして、2人は異世界で仲間と出会い、お酒作りや飲み歩きスローライフが始まる。

生贄にされた少年。故郷を離れてゆるりと暮らす。

水定ゆう
ファンタジー
 村の仕来りで生贄にされた少年、天月・オボロナ。魔物が蠢く危険な森で死を覚悟した天月は、三人の異形の者たちに命を救われる。  異形の者たちの弟子となった天月は、数年後故郷を離れ、魔物による被害と魔法の溢れる町でバイトをしながら冒険者活動を続けていた。  そこで待ち受けるのは数々の陰謀や危険な魔物たち。  生贄として魔物に捧げられた少年は、冒険者活動を続けながらゆるりと日常を満喫する!  ※とりあえず、一時完結いたしました。  今後は、短編や別タイトルで続けていくと思いますが、今回はここまで。  その際は、ぜひ読んでいただけると幸いです。

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

竹井ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

【本編45話にて完結】『追放された荷物持ちの俺を「必要だ」と言ってくれたのは、落ちこぼれヒーラーの彼女だけだった。』

ブヒ太郎
ファンタジー
「お前はもう用済みだ」――荷物持ちとして命懸けで尽くしてきた高ランクパーティから、ゼロスは無能の烙印を押され、なんの手切れ金もなく追放された。彼のスキルは【筋力強化(微)】。誰もが最弱と嘲笑う、あまりにも地味な能力。仲間たちは彼の本当の価値に気づくことなく、その存在をゴミのように切り捨てた。 全てを失い、絶望の淵をさまよう彼に手を差し伸べたのは、一人の不遇なヒーラー、アリシアだった。彼女もまた、治癒の力が弱いと誰からも相手にされず、教会からも冒険者仲間からも居場所を奪われ、孤独に耐えてきた。だからこそ、彼女だけはゼロスの瞳の奥に宿る、静かで、しかし折れない闘志の光を見抜いていたのだ。 「私と、パーティを組んでくれませんか?」 これは、社会の評価軸から外れた二人が出会い、互いの傷を癒しながらどん底から這い上がり、やがて世界を驚かせる伝説となるまでの物語。見捨てられた最強の荷物持ちによる、静かで、しかし痛快な逆襲劇が今、幕を開ける!

処理中です...