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旅立ち 2/2
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「ティア、頼んだぞ。あの子が道を誤らぬよう、しかと導いてやってくれ」
「はい。旦那様も、ご自愛下さい」
旅立ちであるにも拘らず、ティアの装いは平素の侍女服。その上にシルキィとお揃いのフードケープを羽織っている。適切な旅装とはいえないが、誰も指摘しないのでセスもあえて言及はしなかった。
ティアが乗り込むや否や、馬車の扉が勢いよく閉められた。乗車しようとしていたセスと、その様子を見ていたトゥジクスが、顔を会わせて苦笑を漏らす。
セスは仕方なく御者席につく。手綱を握ると、二頭の魔導馬の瞳に青白い光が宿った。
「セス、娘をよろしく頼む。じゃじゃ馬だが上手く扱ってやってくれ」
「この命に代えても」
「君を信じている」
トゥジクスは真摯な表情で、御者席のセスを見上げる。彼の深い瞳には、様々な感情が渦巻いているようだった。
ゆっくりと馬車が動き出し、いよいよ屋敷を出発する。
シルキィは窓越しに父と使用人達に手を振っていたが、森に入ると座席に落ち着いた。そして、物憂げな面持ちでうそぶいた。
「ひと月かぁ」
温室育ちの令嬢には、過酷な旅路だろう。快適な馬車と高性能の馬を携えておいて贅沢な話ではあるが。
セスは開かれた窓から車内をのぞき込んだ。
「お嬢、一つ伝えておきたいんだけど」
「……なによ」
一転して砕けた物言いのセスに、シルキィは湿度の高い眼差しを向ける。
「護衛中はあえて敬語は使わない。礼儀作法も最低限にする」
「理由を聞きましょうか」
「万が一の時、お嬢を守るために指示を飛ばすことがあるかもしれない。そんな時に回りくどい言葉を使うのはナンセンスだ。たとえ一秒でも対応を速くするために、普段からこの口調に慣れてもらいたい。無礼は承知の上だ」
シルキィは唇をへの字に曲げる。反論を考えているのだろうか。少しの間思案する仕草を見せたが、ふと隣に座るティアに目を向けた。
「身分を考えればあり得ないことですが、今は平時とは違います。旅の途中で何が起こるか予測できない以上、セス様のお言葉にも一理あるかと」
ティアは目線だけで主人の意図を汲み、自分なりの考えを述べた。
シルキィは多少むっとしたものの、ティアがそう言うなら、と素直に納得した。
「なら、私もあなたに礼を払う必要はないわね」
いったい今までどのような礼を払っていたのだろう。思い当たる節は皆無だったが、セスは気にしない。
「もちろん。気軽にセスと呼んでくれると嬉しい」
にこにこと笑むセスと、鼻を鳴らしてそっぽを向くシルキィ。そんな二人を、ティアが交互に見やる。
帝都を目指す長い旅は、ここから始まった。
「はい。旦那様も、ご自愛下さい」
旅立ちであるにも拘らず、ティアの装いは平素の侍女服。その上にシルキィとお揃いのフードケープを羽織っている。適切な旅装とはいえないが、誰も指摘しないのでセスもあえて言及はしなかった。
ティアが乗り込むや否や、馬車の扉が勢いよく閉められた。乗車しようとしていたセスと、その様子を見ていたトゥジクスが、顔を会わせて苦笑を漏らす。
セスは仕方なく御者席につく。手綱を握ると、二頭の魔導馬の瞳に青白い光が宿った。
「セス、娘をよろしく頼む。じゃじゃ馬だが上手く扱ってやってくれ」
「この命に代えても」
「君を信じている」
トゥジクスは真摯な表情で、御者席のセスを見上げる。彼の深い瞳には、様々な感情が渦巻いているようだった。
ゆっくりと馬車が動き出し、いよいよ屋敷を出発する。
シルキィは窓越しに父と使用人達に手を振っていたが、森に入ると座席に落ち着いた。そして、物憂げな面持ちでうそぶいた。
「ひと月かぁ」
温室育ちの令嬢には、過酷な旅路だろう。快適な馬車と高性能の馬を携えておいて贅沢な話ではあるが。
セスは開かれた窓から車内をのぞき込んだ。
「お嬢、一つ伝えておきたいんだけど」
「……なによ」
一転して砕けた物言いのセスに、シルキィは湿度の高い眼差しを向ける。
「護衛中はあえて敬語は使わない。礼儀作法も最低限にする」
「理由を聞きましょうか」
「万が一の時、お嬢を守るために指示を飛ばすことがあるかもしれない。そんな時に回りくどい言葉を使うのはナンセンスだ。たとえ一秒でも対応を速くするために、普段からこの口調に慣れてもらいたい。無礼は承知の上だ」
シルキィは唇をへの字に曲げる。反論を考えているのだろうか。少しの間思案する仕草を見せたが、ふと隣に座るティアに目を向けた。
「身分を考えればあり得ないことですが、今は平時とは違います。旅の途中で何が起こるか予測できない以上、セス様のお言葉にも一理あるかと」
ティアは目線だけで主人の意図を汲み、自分なりの考えを述べた。
シルキィは多少むっとしたものの、ティアがそう言うなら、と素直に納得した。
「なら、私もあなたに礼を払う必要はないわね」
いったい今までどのような礼を払っていたのだろう。思い当たる節は皆無だったが、セスは気にしない。
「もちろん。気軽にセスと呼んでくれると嬉しい」
にこにこと笑むセスと、鼻を鳴らしてそっぽを向くシルキィ。そんな二人を、ティアが交互に見やる。
帝都を目指す長い旅は、ここから始まった。
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