神憑き令嬢の死に方

ろろる

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第5章 第二皇子

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ゴソゴソという音がして、目が覚めた。
「……ん」
「悪い、起こしたかイヴ。」
「おはよう、サリス。」
「おはよう。」
「随分と起きるのがお早いのね」
目を擦りながらサリスを見上げた。
「まあな。」
「朝食をご一緒してよろしいですか?」
「構わない。行こう」
「はい。」


朝食のオムレツをサリスが口に運んだ時、
「あ」
と思い出した。
「どうした?」
「そう言えばサリス、あなたって50代くらいの女性がタイプなの?」
「……昨日のドレスか」
「忘れたとは言わせませんよ?」
と、ブラックスマイルでサリスを見た。
「悪かったって。あと、今君が着ているドレスも俺が選んだ。やっぱりイヴには青が似合うな。」
「まぁお上手」
え、何!?シレッとかましてきたよこんな恥ずかしセリフ……!!青、青か。
「ご馳走様。じゃあ俺は行くが、その前に…、入れ。」
食事が終わった後、サリスがドアの方に声をかけた。
「失礼いたします」
誰かが入ってくる。
「お初目にかかります、皇太子妃殿下。
私近衛騎士団副団長、エルバード・レ・イーグレットと申します。」
「……、サリス、この方は?」
「君の護衛騎士だ。俺も公務中は君を守れないからな。昨日のようなことがないように、護衛にエルバードをつける。エルバード、頼む」
「御意にございます。」
「いいかイヴ、俺が側にいるとき以外はエルバードから絶対に離れるな。」
「わかりました。」
「では行ってくる。」
「行ってらっしゃいませ」
扉までサリスを送り出す。
「皇太子妃殿下、今日のご予定は?」
「皇太子妃殿下では長いでしょう。イヴで構いません」
「ではイヴ様。」
「今日は書籍庫にずっといるつもりよ。」
「承知致しました。」
そういえば、今日はアンジュに会っていないな。
まぁ、昨日私が何人も殺すところを見たんですもの。私の専属侍女を辞めてしまったかもしれない……
「専属侍女のことが気になりますか?」
「えっ」
何で分かったんだろう、この人。顔に出てたとしてもわかる事じゃないよね?
「大丈夫ですよ。今日は体調を崩しただけだとおオルゴットが言っておりました。」
「……本当に?」
「騎士の誇りにかけて誓いましょう。」
に、しても……、エルバードってすごい美形。
サラサラの黒髪に、整った顔立ち、エメラルドの瞳。これはモテるな。
アンジュが辞めたわけじゃなくて良かった。
「着きましたよ。扉をお開けいたします。」
「ありがとう」
「皇太子妃!」
「おはようございます、オルゴット。
アンジュの体調は大丈夫?」
「今熱がありまして……。決して皇太子妃のことが嫌になったという訳ではございませんので、ご安心下さい。」
そういえば、あの時サリスを呼びに走ってくれたのはオルゴットだと昨日聞いた。だったら、私のあの姿も見たのだろう。
「それより」
オルゴットがバッと、頭を下げた。
「お、オルゴット?」
「昨日は、妻を助けていただき、ありがとうございました。」
「!」
「すぐにお礼をお伝え出来なかったこと、申しわけありません。」
ありがとう、か。散々化け物だと後ろ指をさされたこともあったのに、ここでは、お礼を言われた。
……確実にここに来て何かが変わり始めてる。
「あなたこそ、サリスを呼んできてくれてありがとう。じゃなければ、心が折れていた所よ。感謝いたします。」
「そんな、恐れ多いです。」
「アンジュによろしく。」
「はい。」
そう言って奥の方へ歩いていった。
「イヴ様は本がお好きなのですか?」
「それもあるけれど、もっとベルツェのことを勉強しようと思ってね」
私はサリスの妃、皇太子妃。つまりそれは、サリスが皇帝になった際、私は皇后になる。
その時に皇后が国のことを知らないんじゃ話にならない。サリスの仕事を手伝うことも増えるかもしれないし、勉強できることは勉強したいのだ。
「……ご立派です」
「意外だったかしら」
「失礼しました」
「ああ、いいのよ。」
……あ、探してた本だ。
本を手に取った瞬間、カチッという音がした。
「ん?……うわっ!!」
本棚が高速で回転し始めて、本棚の奥にあった、部屋の様な空間に放り出された。
「イヴ様!!」



「いったた……。ここどこ?」
誰かの、書斎?広い……。まずいな、エルバードと離れちゃった。
辺りをくるくると見渡す。
「!!」
一瞬でもの凄い殺気がこちらに向かってきたのに気がついた。これは、後ろから……!?だめだ、避けきれないっ。
「キイイインっ!!」
「っ……、あれ?」
ギュッとつぶった目をそーっと開けた。
「!リコリス!!」
「ったくよぉ、まったく危なっかしいご主人様だぜ」
リコリスが向かってきた殺気の正体だと思われる人の、槍の攻撃を死神の鎌でギリギリと受け止めていた。
「おいてめぇ。死神の主人に手ぇだしたんだ、タダで済むと思うなよ」
「!!」
攻撃を仕掛けてきたのは人間じゃない。
体が宙に浮いている。しかも格好が異様だった。
クラシックメイド姿に、顔には細目で不気味に笑う目と口が描かれたお面。……、不気味でしかない。体つきからして女性?
「やめな、ヨルデミアン」
「「!!」」
奥の方から、誰か近づいてくる。
その人の声で、ヨルデミアンと呼ばれた女性はすぐに槍を下ろした。
「すみません姉上。失礼いたしました。」
「!」
姉上、って言った?つまり、この人は…
「第二皇子殿下でいらっしゃいますか」
「ええ、よく分かりましたね。
第二皇子のロイド・レミーア・デ・ベルツェと申します。」
……よくもまぁへらへらと。昨日私を殺すためにあんなに人を寄越したくせに。
「また私を殺しに来たのですか」
「なんの事だか存じ上げません。」
「しらを切るつもりですか」
「ここは僕の書斎なんですよ。勝手に入ってきたのはそちらでは?」
「……。ここは隠し部屋なのですか?」
「ええそうです。ベルツェの歴史書を引くとこの部屋に放り出されます。歴史書を読もうとするなんて渋いですね。」
「確かに入ってきたのはこちらですね。
謝罪いたしますわ。」
「いえいえ。」
「それより、その女性はあなたのなんです?」
「やっぱり見えてるんですね。さすがは神の加護を受ける令嬢だ。」
「……ということはあなたも私の後ろにいる男性が見えていますか」
「黒いローブを着た男性ですよね。見えていますよ。」
「!!」
なんてことだ。リコリスが見えているだけで、この皇子は神憑きということになる。
「じゃあ、その女性あなたに憑くは神ですか?」
「ヨルデミアンっていうんですよ」
「ちょっと待て」
リコリスが口を挟み、第二皇子を睨んだ。
「おい小僧、お前、今そいつがヨルデミアンって名前なんだって言ったのか?」
「はい。こいつはヨルデミアンですよ」
「てめぇ何したらそんな性悪の神に取り憑かれるんだよ!!」
「はい?」
「ヨルデミアンは殺戮の女神だ。いいか、神は自分と似た性格のやつに憑くんだよ。」
「いや、リコリスと私の性格は全然違う」
「黙ってろやイヴ」
「そんなやつに取り憑かれるって、てめぇ何人殺してやがる」
「あなた達には言われたくないですねぇ。そんなことより」
「ドンっ!」
「!?」
身体を壁に押しつけられた。
「ねぇ姉上。兄上じゃなくて俺にしません?
神憑き同士、仲良くしましょうよ。」
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