宰相に手帳を見られ、見られたら乙女ゲームが崩壊し始めたことに気が付きました。

ろろる

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第1章 ご都合主義はごめんあそばせ(1)

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宰相のグロキシニアから聖なる魔力を秘めた少女、
「ユリシア」の話を説明され、
その少女が皇后になるのではないか…と噂を聞いた皇太子妃、
シウ・サーシャニアは全てを悟ったかのように、真顔になった。

そう、前世の記憶を思い出してしまったからである。
そして現在脳内で死亡フラグすぎるんじゃないのかと絶望していた。

シウ・サーシャニアは元はペルビアナ公爵家と言われる、
このサーシャニア帝国に古くから尽くし、貢献してきた名家であり、
成績優秀、頭脳明晰、そして顔も良しということで、
元は宰相一族のクロデンドルム家に嫁ぐはずが、皇太子妃に選ばれた。

自分がその優秀なシウが乙女ゲームの中に登場すらしない
作者のご都合主義が過ぎるキャラクターなどと気づきたくなどなかった。

そう、ここは乙女ゲームの世界、
主人公でヒロインの聖なる魔力を持つ乙女、「ユリシア」。

そのユリシアは聖なる魔力を持っていることが判明し、
王城に呼び出される。
そして呼び出され、何日か攻略対象と過ごすことによってイベントが発生し、
やがて恋に…。という設定。

ちなみにシウの夫で次期皇帝、皇太子のルマン・サーシャニアはシウがいながら
攻略対象の一人である。
そしてユリシアがルマンとのルートを選んだ場合、
シウは都合よく何者かに紅茶に毒を盛られ、殺害される
名前もセリフも出番もない、逆に「シウの存在って何の意味があるの?」という謎の皇太子妃だ。

それが自分だなんて思いたくない…が、
ヒロインのユリシア、攻略対象のルマン、そのルマンの名前すら登場しなかった妻…
という名前がそろえば、必然的にそれはらシウ・サーシャニア、自分だということになる。

「あー死んだ死んだ。
やってらんないわ」
「か、仮にそのユリシアが皇后になったとしても死ぬ…
ってことには繋がりにくいと思いますけれど…」

もうすでにグロキシニアは何か地雷を踏んだのではないか…と慌て始めた。
いや、実際踏みまくりだが。
からかうつもりで言ったのに、いつも何事も気にしないシウの絶望した表情に、
何があったのだと考え始めていた。

「その…死ぬっていうのはどういう?」
「言葉が足りてなかったわね。
ええと…、正確には、殺されるのよ私。」

大して意味は変わっていないが、
「ああ、えっと…そうなんですか」
とグロキシニアは分かった風に返すことにした。

「何の話?」
「あらチヤ。
お帰りなさい。私殺されるかもしれないわ。」

皇太子妃直属の騎士、獣人と人間のハーフでシウの騎士のチヤが帰って来るなり、
シウはそれをまた口にした。

「は…?え、何なのそのパワーワード…。
宰相閣下…まさかご主人様に変な事吹き込んでないよね?」

とチヤがグロキシニアを睨む。
「いやいや、妃殿下がお聞きになられたことに答えたらさっきから
死ぬだの殺されるだの…」
「ふうん。
…つまりはその返答がご主人様をおかしくしたんだね」
「だから違うって!」

二人のやり取りにに、シウはハッと我に返る。
…毒殺されるタイミングは分かっているのだから、回避できないことはないと。
そのことに気が付き、冷静さを取り戻した。

「こ、コホン!
大丈夫よ、きっと小説の読みすぎなんだわ。
さっき言ったことは忘れてくれる?」
「ええ、是非そうさせてください」
「ご主人様がそうしろって言うならそうする。」

と、二人が頷いたのを見て、シウは「よろしい」と笑う。
それにグロキシニアとチヤは「今のは何だったのか…」と顔を見合わせる。

「その子が皇后になるなんてただの噂話にすぎません。
それにそれが本当だったとしても、
人生は近くで見ると悲劇だが、遠くから見ると喜劇である…っていう言葉が
あるでしょ?」

チャップリンの言葉に、「人生は近くで見ると悲劇だが、遠くから見ると喜劇である」
…という言葉がある。
その言葉の意味は即ち、あまり近くで見た物ごとに深刻になりすぎず、
客観的に遠くから眺めるとその悲劇の滑稽さに気が付き、笑えて来る。
そしてその余裕の心で悲劇に正面衝突し、見事に解決することで
悲劇を喜劇に変えられる。そしてその起こった悲劇には神のなんらかの意図があると考えなさい、
そういう意味だ。

シウはこれだけ聞くと落ち着き、
立派なことを言っているかのように聞こえるが、
紅茶を持った手は、紅茶が今にもティーカップから溢れだしそうなほどに、
ガッタガタに震えていた。
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