【完結】不協和音を奏で続ける二人の関係

つくも茄子

文字の大きさ
25 / 78

第25話六年前~ウジェーヌ王妃side~

 
「王妃殿下、お花はこちらで宜しいでしょうか?」

「ええ、それで大丈夫よ。茶器の準備はできていて?」

「はい。帝国産の薔薇の絵柄模様の磁器を準備致しました」

「宜しい。レオノール様は特に薔薇がお好みだわ。おだしする菓子は甘すぎないようにね、お茶は必ずストレートでお出しして頂戴」

「畏まりました」

 侍女達が頭を下げて明日の茶会の部屋から退室していく。部屋の中に残っているのは王妃である私と侍女頭、それと護衛兵の二人だけになった。私は椅子に座りなおすと小さく息をつく。

「王妃殿下、何かお飲み物でもお持ちいたしましょうか?紅茶などいかがでしょう」
 
「いいえ、結構よ。ここは明日、大切なお客人をお招きする場所ですもの。何かあってはいけないわ」

 専属として仕えている侍女頭の言葉に首を横に振って答えた。この場には帝国皇女に当たる公爵夫人とその御令嬢がお見えになる予定。気を引き締めなければならないわ。

「それでは、お部屋に戻られますか?」
 
「そうね……いえ、もう少しここで外の様子を眺めていようかしら。ここの窓からなら庭園の花も一望できるでしょう?」

 私の言葉に侍女頭が少し困ったように微笑む。この侍女頭は心配性なのできっと私の体を案じているのでしょう。
 
「ですが、王妃殿下のお身体をお冷やしになっては……」
 
「大丈夫よ。ありがとう。貴方はもう下がって構わないわ」
 
「王妃殿下」
 
「心配ないわ、すぐに戻るから先に自室に帰っておいでなさい」
 
「……はい、承知いたしました。それでは失礼致します」

 納得していない表情を浮かべながら侍女頭が静かに頭を下げると扉に向かって歩いていく。部屋の外へ出ていく彼女の背中を見送った後、窓の方へ近寄っていくと眼下に広がる美しい庭園の風景は張り詰めていた緊張感を解きほぐすかのようだった。

 明日はいよいよシャイン公爵家の方々がいらっしゃる。

 まったく、陛下も無茶な事を仰るものです。
 ですが気持ちは分からなくもありません。
 恐らく、ユリウス王子とブリリアント嬢の仲が上手くいっていない事が原因でこのような行動にでられたのでしょう。確かにあの二人が結ばれれば国力は大幅に上昇するでしょう。王家としてもこれ以上の良縁は望めません。けれど何故でしょう。胸騒ぎがするのです。このまま事が進んでしまえば良くないことが起きるような……。

 漠然とした不安感を抱えながら私はしばらくの間、美しい庭園の風景を見つめ続けていました。




 陛下は憂慮されているのでしょう。
 それは分かります。国を想うが故の行動だということもよく理解しております。しかしこれは些かやり過ぎではないでしょうか。「婚約者の親だからシュゼット側妃に後見人になれ」と言うのは幾ら何でもありえません。私でも拒否する案件です。側妃の後見人を王命で命じられたコリンズ伯爵には申し訳ありませんが、これ以上シャイン公爵家や貴族派の反感を買うわけにもいかないのですから仕方ありません。

 まさかユリウス王子とブリリアント嬢の仲が良くないのは予想外でした。こう言っては何ですが、ユリウス王子は幼いながら目を見張る美しさがあり聡明な少年です。身分の低い側妃の王子ということで今まであまり表に出る事はありませんでした。
 
 あれは何時だったかしら?
 陛下の気まぐれでパーティーに参加するように促された時でした。小規模なパーティー。それでも参加したパーティーでは注目を一身に集めたユリウス王子。奢な金髪に碧眼をした華やかな美貌は同年代の令嬢達の心を鷲掴みにしていました。だからこそ王子の美貌にブリリアント嬢も夢中になるのではないかと期待していた部分がなかったとは言いません。陛下はそうなるであろうと目論んでいたのも事実ですが、どうやら陛下の目論見は外れてしまったようです。
 




感想 75

あなたにおすすめの小説

特技は有効利用しよう。

庭にハニワ
ファンタジー
血の繋がらない義妹が、ボンクラ息子どもとはしゃいでる。 …………。 どうしてくれよう……。 婚約破棄、になるのかイマイチ自信が無いという事実。 この作者に色恋沙汰の話は、どーにもムリっポい。

愚かな者たちは国を滅ぼす【完結】

春の小径
ファンタジー
婚約破棄から始まる国の崩壊 『知らなかったから許される』なんて思わないでください。 それ自体、罪ですよ。 ⭐︎他社でも公開します

もう私、好きなようにさせていただきますね? 〜とりあえず、元婚約者はコテンパン〜

野菜ばたけ@既刊5冊📚好評発売中!
ファンタジー
「婚約破棄ですね、はいどうぞ」 婚約者から、婚約破棄を言い渡されたので、そういう対応を致しました。 もう面倒だし、食い下がる事も辞めたのですが、まぁ家族が許してくれたから全ては大団円ですね。 ……え? いまさら何ですか? 殿下。 そんな虫のいいお話に、まさか私が「はい分かりました」と頷くとは思っていませんよね? もう私の、使い潰されるだけの生活からは解放されたのです。 だって私はもう貴方の婚約者ではありませんから。 これはそうやって、自らが得た自由の為に戦う令嬢の物語。 ※本作はそれぞれ違うタイプのざまぁをお届けする、『野菜の夏休みざまぁ』作品、4作の内の1作です。    他作品は検索画面で『野菜の夏休みざまぁ』と打つとヒット致します。

【完結】そして、誰もいなくなった

杜野秋人
ファンタジー
「そなたは私の妻として、侯爵夫人として相応しくない!よって婚約を破棄する!」 愛する令嬢を傍らに声高にそう叫ぶ婚約者イグナシオに伯爵家令嬢セリアは誤解だと訴えるが、イグナシオは聞く耳を持たない。それどころか明らかに犯してもいない罪を挙げられ糾弾され、彼女は思わず彼に手を伸ばして取り縋ろうとした。 「触るな!」 だがその手をイグナシオは大きく振り払った。振り払われよろめいたセリアは、受け身も取れないまま仰向けに倒れ、頭を打って昏倒した。 「突き飛ばしたぞ」 「彼が手を上げた」 「誰か衛兵を呼べ!」 騒然となるパーティー会場。すぐさま会場警護の騎士たちに取り囲まれ、彼は「違うんだ、話を聞いてくれ!」と叫びながら愛人の令嬢とともに連行されていった。 そして倒れたセリアもすぐさま人が集められ運び出されていった。 そして誰もいなくなった。 彼女と彼と愛人と、果たして誰が悪かったのか。 これはとある悲しい、婚約破棄の物語である。 ◆小説家になろう様でも公開しています。話数の関係上あちらの方が進みが早いです。 3/27、なろう版完結。あちらは全8話です。 3/30、小説家になろうヒューマンドラマランキング日間1位になりました! 4/1、完結しました。全14話。

婚約破棄?とっくにしてますけど笑

蘧饗礪
ファンタジー
ウクリナ王国の公爵令嬢アリア・ラミーリアの婚約者は、見た目完璧、中身最悪の第2王子エディヤ・ウクリナである。彼の10人目の愛人は最近男爵になったマリハス家の令嬢ディアナだ。  さて、そろそろ婚約破棄をしましょうか。

欠席魔の公爵令嬢、冤罪断罪も欠席す 〜メイリーン戦記〜

水戸直樹
ファンタジー
王太子との婚約――それは、彼に恋したからでも、権力のためでもなかった。 魔王乱立の時代。 王も公爵も外征に出ている王都で、公爵令嬢メイリーンは“地味な婚約者”として王城に現れる。 だが、王太子は初顔合わせに現れなかった。 にもかかわらず、記録に残ったのは「公爵令嬢の欠席」。 抗議はしない。 訂正もしない。 ただ一つ、欠席という事実だけを積み上げていく。 ――それが、誰にとっての不合格なのか。 まだ、誰も気づいていない。 欠席から始まる、静かなるファンタジー戦記。

【完結】婚約破棄された悪役令嬢、元婚約者を裏で裁きます

音無響一
ファンタジー
王城の大広間で、リリアーナ・エルヴァルトは婚約者である王太子から一方的に婚約破棄を言い渡される。罪を捏造され、断罪され、国外追放。誰も味方のいない中、彼女は一切の弁明をせず静かに受け入れた。 だがその夜。 彼女は別の顔を持つ。 王都の闇で依頼を受け、悪を裁く裏稼業の元締め。 今度の標的は――自分を断罪した元婚約者。 婚約は終わった。だが清算はまだ終わっていない。 表では悪役令嬢。裏では裁く側。 これは、断罪された令嬢が王都の闇を静かに切り裂く物語。

出来損ないと呼ばれた伯爵令嬢は出来損ないを望む

家具屋ふふみに
ファンタジー
 この世界には魔法が存在する。  そして生まれ持つ適性がある属性しか使えない。  その属性は主に6つ。  火・水・風・土・雷・そして……無。    クーリアは伯爵令嬢として生まれた。  貴族は生まれながらに魔力、そして属性の適性が多いとされている。  そんな中で、クーリアは無属性の適性しかなかった。    無属性しか扱えない者は『白』と呼ばれる。  その呼び名は貴族にとって屈辱でしかない。      だからクーリアは出来損ないと呼ばれた。    そして彼女はその通りの出来損ない……ではなかった。    これは彼女の本気を引き出したい彼女の周りの人達と、絶対に本気を出したくない彼女との攻防を描いた、そんな物語。  そしてクーリアは、自身に隠された秘密を知る……そんなお話。 設定揺らぎまくりで安定しないかもしれませんが、そういうものだと納得してくださいm(_ _)m ※←このマークがある話は大体一人称。