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第29話六年前~ブリリアントside~
「シュゼット側妃。いい加減覚えてください。貴女より歳下のベリー伯爵夫人は既にマスターしていますのよ? 彼女にできた事が、どうして貴女にはできませんの?」
「……申し訳ありません。私は平民同然の暮らしでしたので……覚えが悪いのです……伯爵夫人のようなきちんとした貴族の方とは違うのです」
「何を言ってますの? ベリー伯爵夫人は貴女と違って“本物の平民出身”ですわよ!ベリー劇場の看板女優だと説明しましたでしょう!?」
他の妃達がキレるのも仕方のない状況でした。
幾ら言っても、勉強をする気のないシュゼット側妃のやる気を出させるために行った異例の措置。それは『新たな公式愛妾と共に勉強をして覚えさす』というものでした。
提案した妃もそうですが、承認した王妃殿下も血迷われたかと思いました。ですが、これは必要なことでした。
「私も頑張っているのですが……これ以上は……」
涙ながらに語るシュゼット側妃は正直鬱陶しいですわ。
別に虐めている訳でもないのに涙を流すのです。勉強をするように注意を促しているだけですのに顔を俯いてしまうのです。気分転換にとテラスで休息の茶会を開いても一人つまらなそうな態度。会話に参加する気配すらありません。
私も何度かシュゼット側妃と会って話をしましたが、何時も悲し気で怯えたような表情しか向けられません。
シュゼット側妃が、今までまともに教育されていなかった事は皆も承知していました。そのため、他の側妃たちも最初は同情的でしたが……今では、「最初の同情心を返していただきたい」と訴えております。
王妃殿下もお手上げ状態で、もう国王陛下にお伺いを立てるしかないと頭を抱えていらっしゃいました。
そこで提案された新たな公式愛妾が、ベリー伯爵の奥方様。つまり、ルース・ベリー伯爵夫人だったわけです。彼女は王都で注目の人気女優。貧民街産まれで九歳の頃からオレンジ売りを始め、十五歳で女優に転身した成功者でした。十二歳で女優を志し、彼女を見込んだ劇団のオーナー兼劇作家のオーギュスト・ベリー伯爵は慧眼の持ち主でした。彼女は富裕層から下層階級まで幅広いファン層を持ち、人気を不動のものとしているのです。もっとも、そのせいで国王陛下に目を付けられてしまったのですが、流石は職業女性。陛下相手に一歩も譲らず、愛人契約を結んだと言う女傑でした。
彼女は「ベリー劇場の女優ルース」として、国王陛下にこう言ったそうです。
『私は女優よ、商品なの。大貴族だろうが、王様だろうが恋愛関係のない男とタダで寝る程安くはないわ。どうしても私を囲いたいと言うのなら、私個人に見合ったものを用意して頂戴。この国一番の女優になろうとしている私に見合ったものをね。言っておくけど、私は囲われ者になっても女優は止めないわ。あら?貴男の後ろの護衛、物凄い顔になっているわね。今にも斬りかかってきそうな雰囲気だわ。私は何もおかしな事は言ってないわよ?不敬罪?上等じゃない。そんなに殺したいなら殺せばいいわ。ただし、殺すのは私が舞台に上がった時にして頂戴。何故ですって?私は女優なのよ。死ぬなら舞台の上よ!事前に死ぬのが分かっているのならとっておきの演目にしておくわ。腐れ外道の国王と護衛、どうかしら?』
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