【完結】不協和音を奏で続ける二人の関係

つくも茄子

文字の大きさ
36 / 78

第36話四年前~ブリリアントside~


 ユリウス王子が学園に入学されました。

 物理的に距離ができると以前の平穏な日々が戻ってきたかのような心地です。屋敷も皆にも「お元気になられました」と言われる位なのでよほど私とユリウス王子は合わないのだと思いますわ。両親は薄々察してくれているようですが、国王陛下はどうなんでしょうね。時が解決すると思っていそうで怖いですわ。時間がどれだけ経とうと根本的に分かり合えないように思うのは私の考え過ぎなのでしょうか? どうも、あの方と会話のキャッチボールができません。

 そもそも、ユリウス王子は私と歩み寄る気持ちがないのでしょうね。

 


「お待たせいたしました、ブリリアント様。こちらが以前仰っていました美容法のレシピですわ」

「ベリー伯爵夫人、ありがとうございます」

「いいえ、私も儲けさせていただいておりますので、これくらいお安い御用ですわ」

 ベリー伯爵夫人の美貌とスタイルの維持、健康法などは実に参考になります。シャイン公爵家とベリー伯爵家とで共同で化粧品ブランドを立ち上げたのは正解でした。幾ら人気女優とはいえ、貧民街育ちの彼女を直ぐに受け入れる貴族はいませんでした。貴族の中には彼女のファンはいたことは居たのですが、それとこれとは話が別だと言わんばかりの態度でした。もっとも、非難に晒されたのは最初のうちだけ。ベリー伯爵夫人の話し上手で聞き上手な態度と、業界秘伝の美容方法や化粧方法を話題に出せば御夫人方は食いついてきました。特に、若く見える化粧方法などは御年輩の夫人などは目の色を変えていましたわ。こうして、ベリー伯爵夫人は御自分の特技を生かして貴族社会に認めさせていったのです。

「そういえば、例の案件は如何でしたか?」

「はい、夫も大層乗り気です。ブリリアント様には劇作家の才能が御有りだとしきりに感心しておりました」

 私の考えがどうやらベリー伯爵に受け入れられたようです。
 演劇とバレエとオペラが融合した作品。歌って踊って演じて感動を呼ぶという新しい試みを思いついたきっかけは、ベリー伯爵夫人が毎日実践している美容のエクササイズと発声練習からでした。それを聞くと皆さま「何故!?」と不思議がられるのですが、ベリー伯爵夫人のエクササイズは異国のダンスのような不思議な魅力があったのです。なんでも東方諸国の民族舞踊を参考にしているのだとか。リズミカルな発声練習は彼女独自のもので、まるで歌のようにシナリオを読み上げていたので驚きました。

『実は、これは夫からのアイディアなんです。ブリリアント様は御存知でしょうが、私は後宮に来る前まで文字を書くことも読むことも出来ませんでした。これは女優としては些か不利だったのですが、私は聴覚だけはずば抜けて良かったのが幸いしました。一度聞いた“音”は決して忘れませんでした。夫はそこに目をつけたのです。舞台のシナリオを渡されると決まって夫が私に全て音読をしてくれていまいした。そのお陰で私は舞台に立つ事ができていたんです。普通に口ずさんで覚えるよりも歌って覚えた方がいいと言って。その方が私には覚えやすい上に声の練習にもなるだろうからっと言って……』

 ベリー伯爵夫人が恥ずかしそうに語ってくださった内容は惚気に近いものがありました。夫婦と言っても名ばかり。恋愛感情は互いにないとハッキリ宣言なさっているお二人ですが、もっと深いところで繋がっているのだと実感してしまいました。

 ただ演じるだけではなく、舞台の上で様々な動きを取り入れることにより観客を一掃引きつけるという新しい試みの主役には、ベリー伯爵夫人が演じてくださいます。それだけで成功は約束されたも同然でした。


感想 75

あなたにおすすめの小説

特技は有効利用しよう。

庭にハニワ
ファンタジー
血の繋がらない義妹が、ボンクラ息子どもとはしゃいでる。 …………。 どうしてくれよう……。 婚約破棄、になるのかイマイチ自信が無いという事実。 この作者に色恋沙汰の話は、どーにもムリっポい。

愚かな者たちは国を滅ぼす【完結】

春の小径
ファンタジー
婚約破棄から始まる国の崩壊 『知らなかったから許される』なんて思わないでください。 それ自体、罪ですよ。 ⭐︎他社でも公開します

もう私、好きなようにさせていただきますね? 〜とりあえず、元婚約者はコテンパン〜

野菜ばたけ@既刊5冊📚好評発売中!
ファンタジー
「婚約破棄ですね、はいどうぞ」 婚約者から、婚約破棄を言い渡されたので、そういう対応を致しました。 もう面倒だし、食い下がる事も辞めたのですが、まぁ家族が許してくれたから全ては大団円ですね。 ……え? いまさら何ですか? 殿下。 そんな虫のいいお話に、まさか私が「はい分かりました」と頷くとは思っていませんよね? もう私の、使い潰されるだけの生活からは解放されたのです。 だって私はもう貴方の婚約者ではありませんから。 これはそうやって、自らが得た自由の為に戦う令嬢の物語。 ※本作はそれぞれ違うタイプのざまぁをお届けする、『野菜の夏休みざまぁ』作品、4作の内の1作です。    他作品は検索画面で『野菜の夏休みざまぁ』と打つとヒット致します。

【完結】そして、誰もいなくなった

杜野秋人
ファンタジー
「そなたは私の妻として、侯爵夫人として相応しくない!よって婚約を破棄する!」 愛する令嬢を傍らに声高にそう叫ぶ婚約者イグナシオに伯爵家令嬢セリアは誤解だと訴えるが、イグナシオは聞く耳を持たない。それどころか明らかに犯してもいない罪を挙げられ糾弾され、彼女は思わず彼に手を伸ばして取り縋ろうとした。 「触るな!」 だがその手をイグナシオは大きく振り払った。振り払われよろめいたセリアは、受け身も取れないまま仰向けに倒れ、頭を打って昏倒した。 「突き飛ばしたぞ」 「彼が手を上げた」 「誰か衛兵を呼べ!」 騒然となるパーティー会場。すぐさま会場警護の騎士たちに取り囲まれ、彼は「違うんだ、話を聞いてくれ!」と叫びながら愛人の令嬢とともに連行されていった。 そして倒れたセリアもすぐさま人が集められ運び出されていった。 そして誰もいなくなった。 彼女と彼と愛人と、果たして誰が悪かったのか。 これはとある悲しい、婚約破棄の物語である。 ◆小説家になろう様でも公開しています。話数の関係上あちらの方が進みが早いです。 3/27、なろう版完結。あちらは全8話です。 3/30、小説家になろうヒューマンドラマランキング日間1位になりました! 4/1、完結しました。全14話。

婚約破棄?とっくにしてますけど笑

蘧饗礪
ファンタジー
ウクリナ王国の公爵令嬢アリア・ラミーリアの婚約者は、見た目完璧、中身最悪の第2王子エディヤ・ウクリナである。彼の10人目の愛人は最近男爵になったマリハス家の令嬢ディアナだ。  さて、そろそろ婚約破棄をしましょうか。

欠席魔の公爵令嬢、冤罪断罪も欠席す 〜メイリーン戦記〜

水戸直樹
ファンタジー
王太子との婚約――それは、彼に恋したからでも、権力のためでもなかった。 魔王乱立の時代。 王も公爵も外征に出ている王都で、公爵令嬢メイリーンは“地味な婚約者”として王城に現れる。 だが、王太子は初顔合わせに現れなかった。 にもかかわらず、記録に残ったのは「公爵令嬢の欠席」。 抗議はしない。 訂正もしない。 ただ一つ、欠席という事実だけを積み上げていく。 ――それが、誰にとっての不合格なのか。 まだ、誰も気づいていない。 欠席から始まる、静かなるファンタジー戦記。

【完結】婚約破棄された悪役令嬢、元婚約者を裏で裁きます

音無響一
ファンタジー
王城の大広間で、リリアーナ・エルヴァルトは婚約者である王太子から一方的に婚約破棄を言い渡される。罪を捏造され、断罪され、国外追放。誰も味方のいない中、彼女は一切の弁明をせず静かに受け入れた。 だがその夜。 彼女は別の顔を持つ。 王都の闇で依頼を受け、悪を裁く裏稼業の元締め。 今度の標的は――自分を断罪した元婚約者。 婚約は終わった。だが清算はまだ終わっていない。 表では悪役令嬢。裏では裁く側。 これは、断罪された令嬢が王都の闇を静かに切り裂く物語。

出来損ないと呼ばれた伯爵令嬢は出来損ないを望む

家具屋ふふみに
ファンタジー
 この世界には魔法が存在する。  そして生まれ持つ適性がある属性しか使えない。  その属性は主に6つ。  火・水・風・土・雷・そして……無。    クーリアは伯爵令嬢として生まれた。  貴族は生まれながらに魔力、そして属性の適性が多いとされている。  そんな中で、クーリアは無属性の適性しかなかった。    無属性しか扱えない者は『白』と呼ばれる。  その呼び名は貴族にとって屈辱でしかない。      だからクーリアは出来損ないと呼ばれた。    そして彼女はその通りの出来損ない……ではなかった。    これは彼女の本気を引き出したい彼女の周りの人達と、絶対に本気を出したくない彼女との攻防を描いた、そんな物語。  そしてクーリアは、自身に隠された秘密を知る……そんなお話。 設定揺らぎまくりで安定しないかもしれませんが、そういうものだと納得してくださいm(_ _)m ※←このマークがある話は大体一人称。