38 / 78
第38話四年前~ユリウス王子side~
学園生活にもようやく慣れてきた頃に父上から舞台の招待状が届いた。新しい公式愛妾が主演するものだった。それだけでも忌々しいと言うのに、舞台作品は小娘が手掛けたものだというではないか!父上からの手紙では「ブリリアント嬢がわざわざ招待状を送ってくれたのだから、必ず参加するように」と締めくくられていた!
まったく、余計な事を!!
あの小娘と女狐の為に僕の貴重な時間を削って劇場に赴かねばならないとは!
だが、これには父上と王妃も観に行くと書かれている。欠席はできない。二人に劇の感想など聞かれでもしたら厄介だからな。
…………やっと終わった。
なんだあの、芝居だか歌だか分からんものは!
しかも途中で踊りだす始末だ!
役者の衣装も露出が高くひらひらしている! なんなのだ!? あれは? 男優など上半身が裸も同然ではないか!!
女は、へ、へそが見えているぞ!?
なんて破廉恥な衣装なんだ!
その上、なんだ?あのダンスは?腰を振りまくっているではないか!!
精神的に疲れたところで小娘に会った。
言うに事を欠いて、女狐に会いにいこうだと!?ふざけるな!!あの女も母上を愚弄した者の一人だ!
小娘に振り返ることなく馬車に乗った。
ジークフリートが心配そうに僕を見る。そんな目で見るんじゃない! ジークフリートが何か言い出す前に「疲れたから寝る。王宮についたら起こしてくれ」と言って瞼を閉じた。
とんだ一日だった。
小娘の事もそうだが。なによりも、あの女狐がチヤホヤとされているのを見るのは不愉快極まりない! あの女が視界に入るだけで吐き気がする。同じ空気すら吸いたくないのだ!身の程知らずの女優上がりの公式愛妾は随分と強かだ。マイナスにも等しい立場から一気に社交界にのし上がった。その背景には小娘の存在がある事は否めない。シャイン公爵家の事業に一枚噛んでいるという話を聞いた。その手腕は認めざるを得ない。だからこそ、腹立たしいのだ! たかが愛妾如きの為に、なぜあそこまでする必要があるのか?全く理解できない。周囲は「ブリリアント嬢はベリー伯爵夫人の才覚を正しく評価している」などと口を揃えて言っているが、貴族どもが小娘と女狐に媚びを売るための方便に過ぎないと劇を観てつくづく感じる。
あんな下賤な女を褒め称える言葉には何の価値もない。女優だと威張っているが娼婦と大して変わらんだろうに。そう考えていると、女狐との会話を思い出した。
『あら?ユリウス殿下は女優と娼婦の区別ができないほど無知なのですね』
『なに!?』
『まあ!何故怒るのですか?私は本当の事を申しただけですわ。確かに、娼婦まがいの事をする役者もおりますけど。もしかして、ユリウス殿下は三文芝居の女優しか御存知ないのかしら?今まで安っぽい芝居しか観た事がないのではありませんか?だからそのような馬鹿げたセリフを臆面もなく言えるんですわ。お気の毒に。今度、私の舞台を観にいらしてくださいな。三流と一流の違いが分かるという者ですわ。宜しいですか、殿下。一流の女優は“芸”を売りますのよ。覚えておいてくださいね。そうでなければ、婚約者のブリリアント様まで殿下のせいで恥をかいてしまいますもの。芸事を嫌うのは結構ですが、その価値を正確に把握しておかなければ後悔なさいますわよ。ユリウス殿下もせっかく良いモノを持っていらっしゃいますのに。ソレを活用しないなんて。なんとも勿体ない話ですわ。殿下、ソレを使えるのは“若さ”という限られた時間の間だけですわ。もて囃されている今のうちにドンドン活用なさいませ』
あの女狐は、僕に顔を使って貴族共に取り入るように言ってきた。
確かに外見は人並み以上に整っている事は自覚している。母上によく似ていると皆が言うからな。だが、それ以上に。いや、男であるため母上よりも叔父に似ているとも言われてきた。恥知らずの男。叔父とすら呼びたくなかった男。女狐が言うのは、この僕にあの男と同じ真似をしろと言っているに等しいものだった。
あなたにおすすめの小説
特技は有効利用しよう。
庭にハニワ
ファンタジー
血の繋がらない義妹が、ボンクラ息子どもとはしゃいでる。
…………。
どうしてくれよう……。
婚約破棄、になるのかイマイチ自信が無いという事実。
この作者に色恋沙汰の話は、どーにもムリっポい。
もう私、好きなようにさせていただきますね? 〜とりあえず、元婚約者はコテンパン〜
野菜ばたけ@既刊5冊📚好評発売中!
ファンタジー
「婚約破棄ですね、はいどうぞ」
婚約者から、婚約破棄を言い渡されたので、そういう対応を致しました。
もう面倒だし、食い下がる事も辞めたのですが、まぁ家族が許してくれたから全ては大団円ですね。
……え? いまさら何ですか? 殿下。
そんな虫のいいお話に、まさか私が「はい分かりました」と頷くとは思っていませんよね?
もう私の、使い潰されるだけの生活からは解放されたのです。
だって私はもう貴方の婚約者ではありませんから。
これはそうやって、自らが得た自由の為に戦う令嬢の物語。
※本作はそれぞれ違うタイプのざまぁをお届けする、『野菜の夏休みざまぁ』作品、4作の内の1作です。
他作品は検索画面で『野菜の夏休みざまぁ』と打つとヒット致します。
【完結】そして、誰もいなくなった
杜野秋人
ファンタジー
「そなたは私の妻として、侯爵夫人として相応しくない!よって婚約を破棄する!」
愛する令嬢を傍らに声高にそう叫ぶ婚約者イグナシオに伯爵家令嬢セリアは誤解だと訴えるが、イグナシオは聞く耳を持たない。それどころか明らかに犯してもいない罪を挙げられ糾弾され、彼女は思わず彼に手を伸ばして取り縋ろうとした。
「触るな!」
だがその手をイグナシオは大きく振り払った。振り払われよろめいたセリアは、受け身も取れないまま仰向けに倒れ、頭を打って昏倒した。
「突き飛ばしたぞ」
「彼が手を上げた」
「誰か衛兵を呼べ!」
騒然となるパーティー会場。すぐさま会場警護の騎士たちに取り囲まれ、彼は「違うんだ、話を聞いてくれ!」と叫びながら愛人の令嬢とともに連行されていった。
そして倒れたセリアもすぐさま人が集められ運び出されていった。
そして誰もいなくなった。
彼女と彼と愛人と、果たして誰が悪かったのか。
これはとある悲しい、婚約破棄の物語である。
◆小説家になろう様でも公開しています。話数の関係上あちらの方が進みが早いです。
3/27、なろう版完結。あちらは全8話です。
3/30、小説家になろうヒューマンドラマランキング日間1位になりました!
4/1、完結しました。全14話。
婚約破棄?とっくにしてますけど笑
蘧饗礪
ファンタジー
ウクリナ王国の公爵令嬢アリア・ラミーリアの婚約者は、見た目完璧、中身最悪の第2王子エディヤ・ウクリナである。彼の10人目の愛人は最近男爵になったマリハス家の令嬢ディアナだ。
さて、そろそろ婚約破棄をしましょうか。
欠席魔の公爵令嬢、冤罪断罪も欠席す 〜メイリーン戦記〜
水戸直樹
ファンタジー
王太子との婚約――それは、彼に恋したからでも、権力のためでもなかった。
魔王乱立の時代。
王も公爵も外征に出ている王都で、公爵令嬢メイリーンは“地味な婚約者”として王城に現れる。
だが、王太子は初顔合わせに現れなかった。
にもかかわらず、記録に残ったのは「公爵令嬢の欠席」。
抗議はしない。
訂正もしない。
ただ一つ、欠席という事実だけを積み上げていく。
――それが、誰にとっての不合格なのか。
まだ、誰も気づいていない。
欠席から始まる、静かなるファンタジー戦記。
【完結】婚約破棄された悪役令嬢、元婚約者を裏で裁きます
音無響一
ファンタジー
王城の大広間で、リリアーナ・エルヴァルトは婚約者である王太子から一方的に婚約破棄を言い渡される。罪を捏造され、断罪され、国外追放。誰も味方のいない中、彼女は一切の弁明をせず静かに受け入れた。
だがその夜。
彼女は別の顔を持つ。
王都の闇で依頼を受け、悪を裁く裏稼業の元締め。
今度の標的は――自分を断罪した元婚約者。
婚約は終わった。だが清算はまだ終わっていない。
表では悪役令嬢。裏では裁く側。
これは、断罪された令嬢が王都の闇を静かに切り裂く物語。
出来損ないと呼ばれた伯爵令嬢は出来損ないを望む
家具屋ふふみに
ファンタジー
この世界には魔法が存在する。
そして生まれ持つ適性がある属性しか使えない。
その属性は主に6つ。
火・水・風・土・雷・そして……無。
クーリアは伯爵令嬢として生まれた。
貴族は生まれながらに魔力、そして属性の適性が多いとされている。
そんな中で、クーリアは無属性の適性しかなかった。
無属性しか扱えない者は『白』と呼ばれる。
その呼び名は貴族にとって屈辱でしかない。
だからクーリアは出来損ないと呼ばれた。
そして彼女はその通りの出来損ない……ではなかった。
これは彼女の本気を引き出したい彼女の周りの人達と、絶対に本気を出したくない彼女との攻防を描いた、そんな物語。
そしてクーリアは、自身に隠された秘密を知る……そんなお話。
設定揺らぎまくりで安定しないかもしれませんが、そういうものだと納得してくださいm(_ _)m
※←このマークがある話は大体一人称。