【完結】義姉上が悪役令嬢だと!?ふざけるな!姉を貶めたお前達を絶対に許さない!!

つくも茄子

文字の大きさ
11 / 112

11.家族

しおりを挟む

 前回の子供時代。
 それは魔の子供時代だった。

 周りと違うという事はそれだけで虐めの対象になる。
 特に子供っていうのは残酷だ。大人が目を背けることも平気でやる。それは貴族も同じで――いや、同じだからこそ容赦がなかった。
 
『あいつの母親、公爵様の愛人だったらしいぜ』
 
『へぇ~~。それじゃあ、あの髪と目は母親の色って訳だ』
 
『なんでも他国の女性らしい。やれやれ、誉れある公爵家に異分子を入れるなんて世も末だ』
 
『なんだって母親の国に戻らなかったんだ?もしかして乗っ取りか!?』
 
『あり得る話だ。公爵様自身が婿養子だからな』
 
『怖い怖い』

『母上が仰っていた。下賤な女の息子が公爵家の跡を継ぐなんてとんでもないって』

『なんだ?平民出身か?』

『愛人同士の交流会にも一切参加しなかったって話だ。正妻である公爵夫人にさえ挨拶一つしなかった非常識な女だという噂だ』

『げっ!非公認の妾か……』

『僕の母上の話だと商売女じゃないかって』

『商売?何処か商会の娘か?』

『『『『『…………』』』』』


『なんだよ?違うのか!?』

『いや……その反応は予想外だった』

『お前はそのままでいろ』

『今時珍しい純粋さだ』
 
『はっ!?』
 
『おい、そんなに言うんだったら本人に聞いてみようぜ』
 
『いいね』

 公爵家の庭で話すことじゃない。
 僕はあっという間に、数人の少年たちに囲まれて詰問を受けた。
 当時の僕は怖くて何も言えなかった。

 だけど――
 
『お止めなさい!!』

 突然、義姉が間に入ってきた。
 唖然としている僕を無視して義姉上は少年達に立ち向かった。
 義姉上の言葉は凛々しく勇ましい。
 貴族令嬢としては恐ろしく辛辣だったが間違った事は何一つ言っていなかった。
 
 その後、義母にも叱られたけど、一番印象に残っている言葉がある。
 義姉は言った。
 
『ミゲル。貴男はペーゼロット家の長男として恥ずかしくない人間になりなさい。いいえ、ならなくてはいけないの。それが貴男を守る事に繋がるわ!』

 その言葉の意味を理解したのは数年後のこと。
 義姉上を亡くした後の事だった。

 もっと早く気付いて対処していれば何かが違ったのかもしれない。
 後悔は尽きない。


「……ありがとう義姉上。これからはしっかりするように努力する」
 
「そうしてくれると助かるわ」

 義姉上は満足そうに微笑んで見せた。
 美しく気高い義姉。
 前の時は随分と苦労させてしまった。
 公爵家のこと、王家のこと。その上、義弟のこと。
 今度こそ僕が守る。
 僕が頑張らないで誰が公爵家を背負うというのか。前の時はその全てを無意識に義姉上に押し付けてしまった。そのせいで義姉上が高飛車で傲慢な令嬢だという根も葉もない噂が流れたんだ。
 もう過ちは犯さない。今はまだ未熟だけど、僕にはこの世界の記憶がある。前回では得られなかった知識や知恵もある。それらを総動員して公爵家に恥をかかせないような立派な息子になろうと心に誓った。

 



 

しおりを挟む
感想 98

あなたにおすすめの小説

〈完結〉この女を家に入れたことが父にとっての致命傷でした。

江戸川ばた散歩
ファンタジー
「私」アリサは父の後妻の言葉により、家を追い出されることとなる。 だがそれは待ち望んでいた日がやってきたでもあった。横領の罪で連座蟄居されられていた祖父の復活する日だった。 十年前、八歳の時からアリサは父と後妻により使用人として扱われてきた。 ところが自分の代わりに可愛がられてきたはずの異母妹ミュゼットまでもが、義母によって使用人に落とされてしまった。義母は自分の周囲に年頃の女が居ること自体が気に食わなかったのだ。 元々それぞれ自体は仲が悪い訳ではなかった二人は、お互い使用人の立場で二年間共に過ごすが、ミュゼットへの義母の仕打ちの酷さに、アリサは彼女を乳母のもとへ逃がす。 そして更に二年、とうとうその日が来た…… 

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

竹井ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

リリゼットの学園生活 〜 聖魔法?我が家では誰でも使えますよ?

あくの
ファンタジー
 15になって領地の修道院から王立ディアーヌ学園、通称『学園』に通うことになったリリゼット。 加護細工の家系のドルバック伯爵家の娘として他家の令嬢達と交流開始するも世間知らずのリリゼットは令嬢との会話についていけない。 また姉と婚約者の破天荒な行動からリリゼットも同じなのかと学園の男子生徒が近寄ってくる。 長女気質のダンテス公爵家の長女リーゼはそんなリリゼットの危うさを危惧しており…。 リリゼットは楽しい学園生活を全うできるのか?!

【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます

腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった! 私が死ぬまでには完結させます。 追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。 追記2:ひとまず完結しました!

【完結】婚約者と仕事を失いましたが、すべて隣国でバージョンアップするようです。

鋼雅 暁
ファンタジー
聖女として働いていたアリサ。ある日突然、王子から婚約破棄を告げられる。 さらに、偽聖女と決めつけられる始末。 しかし、これ幸いと王都を出たアリサは辺境の地でのんびり暮らすことに。しかしアリサは自覚のない「魔力の塊」であったらしく、それに気付かずアリサを放り出した王国は傾き、アリサの魔力に気付いた隣国は皇太子を派遣し……捨てる国あれば拾う国あり!? 他サイトにも重複掲載中です。

投獄された聖女は祈るのをやめ、自由を満喫している。

七辻ゆゆ
ファンタジー
「偽聖女リーリエ、おまえとの婚約を破棄する。衛兵、偽聖女を地下牢に入れよ!」  リーリエは喜んだ。 「じゆ……、じゆう……自由だわ……!」  もう教会で一日中祈り続けなくてもいいのだ。

巻添え召喚されたので、引きこもりスローライフを希望します!

あきづきみなと
ファンタジー
階段から女の子が降ってきた!? 資料を抱えて歩いていた紗江は、階段から飛び下りてきた転校生に巻き込まれて転倒する。気がついたらその彼女と二人、全く知らない場所にいた。 そしてその場にいた人達は、聖女を召喚したのだという。 どちらが『聖女』なのか、と問われる前に転校生の少女が声をあげる。 「私、ガンバる!」 だったら私は帰してもらえない?ダメ? 聖女の扱いを他所に、巻き込まれた紗江が『食』を元に自分の居場所を見つける話。 スローライフまでは到達しなかったよ……。 緩いざまああり。 注意 いわゆる『キラキラネーム』への苦言というか、マイナス感情の描写があります。気にされる方には申し訳ありませんが、作中人物の説明には必要と考えました。

【本編完結】ただの平凡令嬢なので、姉に婚約者を取られました。

138ネコ@書籍化&コミカライズしました
ファンタジー
「誰にも出来ないような事は求めないから、せめて人並みになってくれ」  お父様にそう言われ、平凡になるためにたゆまぬ努力をしたつもりです。  賢者様が使ったとされる神級魔法を会得し、復活した魔王をかつての勇者様のように倒し、領民に慕われた名領主のように領地を治めました。  誰にも出来ないような事は、私には出来ません。私に出来るのは、誰かがやれる事を平凡に努めてきただけ。  そんな平凡な私だから、非凡な姉に婚約者を奪われてしまうのは、仕方がない事なのです。  諦めきれない私は、せめて平凡なりに仕返しをしてみようと思います。

処理中です...