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11.家族
前回の子供時代。
それは魔の子供時代だった。
周りと違うという事はそれだけで虐めの対象になる。
特に子供っていうのは残酷だ。大人が目を背けることも平気でやる。それは貴族も同じで――いや、同じだからこそ容赦がなかった。
『あいつの母親、公爵様の愛人だったらしいぜ』
『へぇ~~。それじゃあ、あの髪と目は母親の色って訳だ』
『なんでも他国の女性らしい。やれやれ、誉れある公爵家に異分子を入れるなんて世も末だ』
『なんだって母親の国に戻らなかったんだ?もしかして乗っ取りか!?』
『あり得る話だ。公爵様自身が婿養子だからな』
『怖い怖い』
『母上が仰っていた。下賤な女の息子が公爵家の跡を継ぐなんてとんでもないって』
『なんだ?平民出身か?』
『愛人同士の交流会にも一切参加しなかったって話だ。正妻である公爵夫人にさえ挨拶一つしなかった非常識な女だという噂だ』
『げっ!非公認の妾か……』
『僕の母上の話だと商売女じゃないかって』
『商売?何処か商会の娘か?』
『『『『『…………』』』』』
『なんだよ?違うのか!?』
『いや……その反応は予想外だった』
『お前はそのままでいろ』
『今時珍しい純粋さだ』
『はっ!?』
『おい、そんなに言うんだったら本人に聞いてみようぜ』
『いいね』
公爵家の庭で話すことじゃない。
僕はあっという間に、数人の少年たちに囲まれて詰問を受けた。
当時の僕は怖くて何も言えなかった。
だけど――
『お止めなさい!!』
突然、義姉が間に入ってきた。
唖然としている僕を無視して義姉上は少年達に立ち向かった。
義姉上の言葉は凛々しく勇ましい。
貴族令嬢としては恐ろしく辛辣だったが間違った事は何一つ言っていなかった。
その後、義母にも叱られたけど、一番印象に残っている言葉がある。
義姉は言った。
『ミゲル。貴男はペーゼロット家の長男として恥ずかしくない人間になりなさい。いいえ、ならなくてはいけないの。それが貴男を守る事に繋がるわ!』
その言葉の意味を理解したのは数年後のこと。
義姉上を亡くした後の事だった。
もっと早く気付いて対処していれば何かが違ったのかもしれない。
後悔は尽きない。
「……ありがとう義姉上。これからはしっかりするように努力する」
「そうしてくれると助かるわ」
義姉上は満足そうに微笑んで見せた。
美しく気高い義姉。
前の時は随分と苦労させてしまった。
公爵家のこと、王家のこと。その上、義弟のこと。
今度こそ僕が守る。
僕が頑張らないで誰が公爵家を背負うというのか。前の時はその全てを無意識に義姉上に押し付けてしまった。そのせいで義姉上が高飛車で傲慢な令嬢だという根も葉もない噂が流れたんだ。
もう過ちは犯さない。今はまだ未熟だけど、僕にはこの世界の記憶がある。前回では得られなかった知識や知恵もある。それらを総動員して公爵家に恥をかかせないような立派な息子になろうと心に誓った。
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