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~第二章~
38.誘拐計画4
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「さて、行きますか」
僕は最低限の身支度を終えると、部屋を出た。
行き先は決まっている。連中が喋っていた屋敷の『美女』の所だ。旅でアクシデントは付き物だ。それでも厄介事はスルーする。降り掛かる火の粉は避けて通るのが基本だ。でも、今回は流石にスルーは出来ない。
何故かって?
黒革の本にそう書かれているから。
一見、何も書かれていない本は古代魔導具の一つだというだけあって普通じゃなかった。僕の知らない事を教えてくれる貴重な存在だ。最初は分からなかった。でも本が光ると予言めいたものが書かれている事が分かった。
ペラリッと本のページを捲った。
――【館に住まう高貴なる女性を村人達が襲う】
その予言には続きがあった。
――【村人は金でならず者を雇い入れ館を襲わせる。連れ去れた館の女性達は森の奥、神殿の生贄となるであろう】
衝撃的な内容だった。
最終的に女性達は助け出されるが殆どが発狂し廃人となると書かれている。
しかも、館の高貴な女性とやらは辱めを受ける前に舌を噛み切って死んだらしい。
悲惨だ。
でも更に悲劇は続く。
女性は王族の妻だった。
王族の夫は激怒し、村を焼き払い村人を一人残らず殺した。
ペラリと続きを読む。
――【王族は後に一国の国王になり、平民を強く憎み続けた】
そこで文章は終わっていた。
予言というより歴史書を読んでいる気分になった。
どう考えても僕に関わりがあるとは思えない。
「でも気になるんだよなぁ」
これは勘だけど、無関係じゃない気がした。
「行ってみるしかないか」
僕は本を閉じ懐に入れた。
そして宿を出た。
「ここかな?」
男達が話していた町の外れまで来ると立派な建物が見えてきた。
それは豪邸と呼べる程ではない。ただ、田園地帯の景観に溶け込むように建てられた可愛らしい館だった。
貴族の別荘って感じだ。
周囲を見渡す。
まだ男達は来ていない。見張りもいないようだ。てっきり、見張り番がいそうなものなのに。男達は自分達の計画が成功する事を疑っていない。普通は慎重に行動するものだ。だけど男達にそれはない。よっぽど自信があるのか。それとも何かあるのかな? 失敗する事を考えてないようだ。
あの馬鹿な連中の背後に誰かいるのかもしれない。村長や町長クラスじゃない。もっと上。例の祭りも只の祭りではなさそうだし。神殿が絡んでいそうだ。
僕は最低限の身支度を終えると、部屋を出た。
行き先は決まっている。連中が喋っていた屋敷の『美女』の所だ。旅でアクシデントは付き物だ。それでも厄介事はスルーする。降り掛かる火の粉は避けて通るのが基本だ。でも、今回は流石にスルーは出来ない。
何故かって?
黒革の本にそう書かれているから。
一見、何も書かれていない本は古代魔導具の一つだというだけあって普通じゃなかった。僕の知らない事を教えてくれる貴重な存在だ。最初は分からなかった。でも本が光ると予言めいたものが書かれている事が分かった。
ペラリッと本のページを捲った。
――【館に住まう高貴なる女性を村人達が襲う】
その予言には続きがあった。
――【村人は金でならず者を雇い入れ館を襲わせる。連れ去れた館の女性達は森の奥、神殿の生贄となるであろう】
衝撃的な内容だった。
最終的に女性達は助け出されるが殆どが発狂し廃人となると書かれている。
しかも、館の高貴な女性とやらは辱めを受ける前に舌を噛み切って死んだらしい。
悲惨だ。
でも更に悲劇は続く。
女性は王族の妻だった。
王族の夫は激怒し、村を焼き払い村人を一人残らず殺した。
ペラリと続きを読む。
――【王族は後に一国の国王になり、平民を強く憎み続けた】
そこで文章は終わっていた。
予言というより歴史書を読んでいる気分になった。
どう考えても僕に関わりがあるとは思えない。
「でも気になるんだよなぁ」
これは勘だけど、無関係じゃない気がした。
「行ってみるしかないか」
僕は本を閉じ懐に入れた。
そして宿を出た。
「ここかな?」
男達が話していた町の外れまで来ると立派な建物が見えてきた。
それは豪邸と呼べる程ではない。ただ、田園地帯の景観に溶け込むように建てられた可愛らしい館だった。
貴族の別荘って感じだ。
周囲を見渡す。
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