偽物の侯爵子息は平民落ちのうえに国外追放を言い渡されたので自由に生きる。え?帰ってきてくれ?それは無理というもの

つくも茄子

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~第二章~

37.誘拐計画3

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 年老いてから生まれた一人息子を村長は溺愛しているらしく、ドラ息子の言葉を鵜呑みにしてた。そこは疑問を持てよ!どう考えても道理に反しているし、言っている事はメチャクチャだ。

「孫の顔を見られるなら」との思いで、ドラ息子とその仲間達が結託して美女を誘拐する事に全面的に協力している。

 一言、言わせて貰って良いかな?
 ばぁぁぁぁかじゃないの!!?

 アホなの?
 馬鹿なの??
 死にたいの???

 どう考えても、その美女は貴族の出だ!
 貴族じゃなくても、相当な資産家だ!
 そんな相手が、行方をくらましたら大捜査されるに決まっている。首謀者全員縛り首の案件だ!
 
 ばぁぁぁぁぁぁぁかっ!!!

 勝手に惚れた挙句にストーカー行為の数々。
 相手にされないから誘拐する?
 力づくでモノにすれば女は言う事をきく?
 どこの蛮族だよ!?
 ドラ息子は一度死ねばいい!

 


 
 犯罪計画を聴いていたら、いつのまにかデザートを食べ終えていた。
 デザートの味を覚えてない。嫌な会話を聞いたからだ。まったく!
 
 空になった皿を一度見てから、店主に声を掛ける。

「おじさん。僕、この村で行われる祭りを見に来たんだけど、参加費用とかいるの?」
 
「……祭りに参加するのか?」
 
「え? 男は参加していいんだよね?村の住人でなくても参加できるって町で聞いたんだけど?」
 
「あ、ああ。それは問題ないが……」

 店主のおじさんは酷く驚いたのか、暫く僕をジロジロ見てた。それと同時に店内がざわついたけど。気にしない。

「……余所者でも参加可能だ。祭りは明日の夕方から森の広場で開催される」

「開催場所は神殿だと聞いたけど?」

「開会式は広場でする事になっている」

「そうなんだ」

「あぁ……まぁ、遅れずにこいよ」

「ありがとう。じゃあ、宿泊代金も全額先に払っておくよ」

 即金で支払った。多少色を付けて。すると店主の顔が綻んだ。

 どうやらコレは正解だ。

 食事中、ずっと僕を見る店主は目つきがドンドン鋭くなっていた。
 多分、この店主はドラ息子達とグルになっているんだろう。それはココにいる村人も同様だ。グルだと言うと聞こえは悪いけど、恐らく村長から何かしら言い含められている可能性はある。

 店内の雰囲気が、どんどん悪くなっていくのを肌で感じていたしね。

 僕が誘拐計画を聞いていると察したんだろう。
 勿論、根拠はない。
 ただ余所者と同じ空気を吸いたくない、ってだけの話かもしれない。
 それでも警戒していた事は確かだ。

 村の住人じゃないという事は、それだけ自由に行動できる。
 余所者が役人に告げ口に行くのでは?と考えても不思議じゃない。だってどう考えても事件だ。まだ事件は起きてないから未遂(?)だけど。
 もし僕がこのまま村を出て行く素振りを少しでも見せてたら何らかのアクションはあった筈だ。口封じ……は言い過ぎかな?でもあながち間違ってない。小柄な子供一人、しかも旅人ときてる。始末したところで誰も騒がない。

 予想に反して僕が『美女』を助けようと行動しなかった。寧ろ、関心を示さなかった。その上で、多少大目にチップを渡しておいたから一応は警戒を解いたってとこかな。

 つまり誘拐計画は村ぐるみという訳か。

 ゲスの集まりだ。

 誘拐はそのまま決行する予定だろう。話し合ってた男達以外の客も目配せしあっていたし。

 クズ同士とっっっても仲がよろしいことで!!
 
 僕はそんな村人達クズの様子に気付いてないフリをして二階の部屋に向かった。




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