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~第二章~
36.誘拐計画2
しおりを挟む言い訳になるけど、僕は別に盗み聞きする意図は無かった。
店内はガヤガヤと賑やかだ。本人達も小声で話していた。よほど彼らに注意を向けなければ聞こえなかっただろう。
旅先での情報は大事だ。
犯罪に巻き込まれないための用心とでも言うべきか。
つい気になったら人に注意を向ける癖がついてしまった。
なので今回も彼らの話を拾ってしまったという訳だ。
会話から大体の事が分かった。
どうやらこの村より少し離れた場所に、大きな屋敷が一軒建っているらしい。もともと変わり者の貴族が建てた屋敷で、その貴族が亡くなってからは空き家だったそうだ。そこに最近、新しい人が住みついたんだとか。それもとびきりの『美女』が。
屋敷に住み始めた女性は、たちまち噂の的になったらしい。
噂を耳にした村長のドラ息子は「そこまで美人なら一度見に行ってやろう」と仲間を引き連れて赴いたところ、未だかつてお目にかかった事の無い美女が庭園で花を愛でながら優雅に散歩をしていたそうだ。
それはそれは美しい光景だったらしい。
一目見てすっかりその美女に心奪われたドラ息子は、その美女を自分の妻候補に認定したらしい。
……ヤバイ奴である。
当然、美女の方にはそんな気はさらさら無い。むしろ屋敷の敷地内から一歩も外に出ないためドラ息子の存在すらしらない。
…………知っていたら逆に怖いよ。
一方的に恋い焦がれているドラ息子は、なんとかして美女を手に入れたい。なのに仲が進展しない状況を嘆いた。
………………それ以前に知り合いですらないだろうに。
痺れを切らしたドラ息子は屋敷に勝手に入り込もうとしたようだが、腕利きの護衛や使用人がいるため潜入できなかったそうだ。
……………………何故、入れると思ったのか謎だ。
鬱屈した日々を過ごしていた中、朗報が入ってきた。
町の治安がここ最近悪い。
ゴロツキが増えているという話だ。
彼らを雇う事ができれば数で屋敷の人間を制圧できる。
チャンスだ!と考えたドラ息子は、村の仲間たちと雇った連中で襲撃すれば美女が手に入る!そうして計画を立てた。
美女を拉致した後は、町にある別邸でしばらく過ごす。美女が身ごもったら村に帰って親達に紹介する算段らしい。ドラ息子には、妻がいる。妻は町の市長の娘で、政略に近い形での結婚だったらしい。そこそこの美人でしっかり者の働き者。だがドラ息子は妻と性格的に合わず、今では家庭内別居の状態のようだ。そのため子供はいない。ここで、美女との間に子供ができれば跡継ぎと共に美女の持つ財産も転がり込んでくる。妻とは離縁し、新しい妻と子供と本当の家庭を築く。素晴らしい計画だと自画自賛するドラ息子。
一人相撲もここまで来るともはや正気を疑うレベルだよ。滑稽を通り越して哀れにすら感じるほど頭がお花畑だが、もっと酷い内容が聞こえてきた。
ドラ息子の父親も一枚かんでいるとのこと。
なぜ!?
普通止めるだろう!?
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