偽物の侯爵子息は平民落ちのうえに国外追放を言い渡されたので自由に生きる。え?帰ってきてくれ?それは無理というもの

つくも茄子

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~第二章~

41.とある王族side

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 翌朝、調査兵団と騎士団が到着した。

 夜が更ける前に祭りが行われる森に向けて出発した。
 数人の団員は祭りの参加者を逃がさないように観光客を装って参加させている。

 月の光さえ届かない鬱蒼とした森の中に踏み込むと途端に視界が悪くなった。足元は雑草で覆われていて足場が悪い。
 
「気をつけろよ」
 
「はい!」
 
「わかっております!」
 
 騎士達が緊張を含んだ声で返事をする。
 
「おい、お前らしっかりついてこい!」
 
「はっ!」
 
 班長らしき男が部下に声をかけていた。
 しばらく歩くと開けた場所に出た。
 
「よし、ここで待機しろ」
 
「「「了解!」」」

 班長は部下を引き連れて更に先に進んでいく。
 その先の神殿で行われている祭りはこの世のものとは思えない光景だった。
 薄暗い中、ぼんやりと浮かぶ白い肌。
 美しい顔立ちの乙女達が全裸で祭壇の上に横たわっていた。
 彼女達は皆一糸まとわぬ姿で、手足に鎖を巻き付けられた状態で、大勢の男達によって凌辱されていたのだ。
 ある者は四つん這いになり後ろから激しく突かれ、また別の者は仰向けになって両脚を大きく開かれており、そこに覆い被さるようにして腰を打ちつけている者もいた。

 報告書を読んではいたが実際にその光景を目の当たりにする衝撃は想像以上だった。


 私は手で号令をかける。
 
「今だ!捕らえよ!!」
 
 私の合図と共に一斉に男達に襲いかかる。
 
「なっ!?何者だ!!?」
 
 突然の出来事に狼臥した男達の怒声が上がる。
 私は剣を抜いて叫んだ。
 
「抵抗するなら容赦しないぞ!」
 
「くそっ……!!何故こんなところに……!!!」
 
「おいっ!!どうなってんだ!!」
 
「知らん!!!とにかくこいつらを殺せ!!」
 
 男達は口々に喚きながら応戦してくる。
 しかし多勢に無勢。
 次々と倒されていく仲間を見て恐怖を覚えた者達が逃げ出そうと背を向ける。
 それを見逃すはずもなく取り押さえられていく。
 やがてその場に立っているのは私だけになった。
 
「隊長殿、ご無事ですか?」
 
「ああ、大丈夫だ。それよりもこの娘達を急いで連れ帰る準備をしておけ」
 
「はっ!畏まりました!」
 
 部下に命じて私はその場を後にした。

 本命がまだ残っている。
 この神殿にいる祭司!
 奴がこの事件の主犯格である事は明白だった。
 私は逸る気持ちを抑えつつ、数人の部下と共に足早に神殿の奥へと進んだ。


 最奥の部屋を見つけた。
 隠し扉になっていた。これだけ古い建物だ。恐らく昔の神官達が後から増設したに違いない。

 私は意を決して重いドアを押し開けた。ギィッと音を立てて開く。その先に広がる光景を見た時、全身の血の気が引いた。
 棚に並べられた髑髏の数の多さに吐きそうになった。
 
 よく見ると年代ごとに並べ替えられているようだ。

「嫌な部屋ですね……」

 一緒に来た若い団員も青い顔をしている。これほど沢山の人間の頭蓋骨など通常見ないものだ。恐らく女子供ばかりだろう。胸糞悪い話だが。

「祭司を探せ。何処かに隠れてるはずだ」

 私がそう言うと他の団員達が次々と部屋の中を探し始める。この部屋の件といい、隠し扉が他にあっても不思議ではないからだ。



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