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~第二章~
42.とある王族side
しおりを挟む「取り逃がしたか……」
神殿の祭司は既にいなかった。
「すみません。もう少し早く来ていれば……」
若い隊員は項垂れている。
「いや、お前達は良くやってくれた」
主犯であろう祭司は隠し通路を使って逃げたらしい。
「仕方がない。それより今は被害者達を早くこの村から連れだす方が先決だ」
「はっ!」
「急ぐぞ」
私は部下に呼びかけて出口に向かうことにした。
被害にあった少女達は全員救出できた。
こうして事件は無事に解決した。
だが、この事件はただの序章に過ぎななかった事を私はまだ知らなかった。
一年後、長兄が謎の死を遂げた。
そして半年後に今度は次兄が亡くなった。
王位に最も遠いと言われた私が即位する事になった。
貴族達の動揺は凄まじく、一時とはいえ国は荒れた。
その最悪の状況を打破できたのは黒曜のおかげだと言っていいだろう。
彼は私に協力してくれた。
彼の協力がなければここまで上手くはいかなかっただろう。
彼には感謝してもしきれない。
そうして今は私の相談役だ。実質的な宰相のようなものだが。彼は、「研究が第一だから本職の宰相にはなれないよ。忙し過ぎて研究どころじゃなくなるからね」と言っていた。
きっと、それだけではないはずだ。
自身の出自と騒動の関係を危ぶんでいるのだろう。
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未成年の身で謂れなき国外追放だ。
神殿の一部の暴走とはいえ、許される事じゃない。
とはいえ、この事は未だ極秘だ。
真実を知れば神殿側は決して認めないだろうし、アンハルト王国は口を閉ざす事になるだろう。
だからと言うべきではないが、私も彼も真実を口にしない。それで良いのだと思っているからだ。
『元々、貴族社会には嫌気がさしていたからね』
『権利よりも義務と責任の方が重い。割に合わない商売だと思うよ』
以前彼が言った言葉だ。
余程、かの国に嫌気が差したのだろう。それか、扱き使わされていたか……。両方かも知れない。
真実を知った彼らがどう出るのか楽しみだ。
サビオが許しても、私は許さない。
絶対に……!
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