62 / 94
~第三章~
61.王女(元婚約者)side
しおりを挟む「王女殿下は解っていらっしゃらないようですが、王族の言葉には力があります。その行動一つで他者の人生を狂わせ、最悪殺してしまうことも可能なほどに。それをご理解頂きたい」
「え!?」
「普通、未成年の子供を身一つで放り出して生きていける訳がない。それも侯爵家の子息をです。常識的に考えられない。御存知ですか?サビオ殿を隣国に追放した場面を隣国の国境警備隊に見られていた事を」
「は!!?」
「王国騎士団が明らかに貴族の子弟を縄で縛りあげて放り出す姿は常軌を逸しております。それを隣国で見られていたんですよ?当然、事実確認として隣国から問い合わせがありました。しかもそれに対応したのが同じ王国騎士団。まぁ、我が国は国境の守りを騎士団で担っていますからそれも仕方のない事なのでしょうな。神官の言葉を鵜呑みにして自分達で事実確認すらしていない事も知っていましたよ。『長年の婚約者をいとも簡単に切り捨てる外道』、『容姿の良い新しい男に尻尾をふる王女』。他にもありますが、その二つが隣国の王女殿下の評価です。ブランデン王国も同様の評価でしょう。否定したくとも事実であるため何も言い返せません。隣国などは『あんな王女を持って大変だ』と侮蔑を通り過ぎて憐れまれる始末ですよ。本当に嘆かわしい……」
「「なっ!!?」」
絶句ですわ!!!!何をおっしゃっているのでしょうか!!!この男!!
お父様と声が重なってしまいましたわ。ですがそれも仕方がありませんよね?だって、それほどに宰相の言葉は酷い言葉でした。
お父様も同じ気持ちだったようですわ。だって、顔を青を通り越して真っ白にされておいででしたから。それに小刻みに震えているのがよく解りましたもの。
「殿下は、ご自分の立場をもう少し考えなさい」
あまつさえ、そんな言葉を吐き捨てるように言うなんて!失礼にもほどがありましてよ!!無礼が過ぎますわ!!!
私は怒り心頭の状態でしたが、それは隣にいらっしゃるお父様も一緒のようでしたわ。私と一緒に「無礼だ」と抗議していたのですが……。
「では、お二人に聞きます。あなた方は自分達の行動に責任を持って行っていますか?我々の目にはそうは見えません。寧ろ、自分達の欲望の赴くままに行動しているように見えます。それも自分達の行動に一切の責任を果たすことなく無責任に。違いますか?」
ああ、宰相は何を言っているんですの!? 彼の言っている事は全く理解できませんわ!!
「私は王女としての責任を果たしてますわ!!」
「何をですか?公務は最低限。いいえ、今は何一つこなしていらっしゃいません。もっとも、公の場に出られても国の恥を晒すだけなので辞めて頂きたいのですがね」
「な、なんですって!!」
「子供のように喚くのはおやめください。既に成人した淑女のする事ではない。はしたないですよ」
「~~~~っ……」
「政略結婚をする価値のない王女殿下を王宮で飼っておくことなど出来ません。なので、そこそこの爵位と領地を与えて夫婦で王宮を去る日まで大人しくしておいて欲しいのです。まぁ、王女殿下には難しい事かもしれませんので、陛下、この『魔法契約書』にサインをしてください。拒否権はありません」
抑揚のない宰相の声は不気味なほど響いていました。
214
あなたにおすすめの小説
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
パワハラ騎士団長に追放されたけど、君らが最強だったのは僕が全ステータスを10倍にしてたからだよ。外れスキル《バフ・マスター》で世界最強
こはるんるん
ファンタジー
「アベル、貴様のような軟弱者は、我が栄光の騎士団には不要。追放処分とする!」
騎士団長バランに呼び出された僕――アベルはクビを宣言された。
この世界では8歳になると、女神から特別な能力であるスキルを与えられる。
ボクのスキルは【バフ・マスター】という、他人のステータスを数%アップする力だった。
これを授かった時、外れスキルだと、みんなからバカにされた。
だけど、スキルは使い続けることで、スキルLvが上昇し、強力になっていく。
僕は自分を信じて、8年間、毎日スキルを使い続けた。
「……本当によろしいのですか? 僕のスキルは、バフ(強化)の対象人数3000人に増えただけでなく、効果も全ステータス10倍アップに進化しています。これが無くなってしまえば、大きな戦力ダウンに……」
「アッハッハッハッハッハッハ! 見苦しい言い訳だ! 全ステータス10倍アップだと? バカバカしい。そんな嘘八百を並べ立ててまで、この俺の最強騎士団に残りたいのか!?」
そうして追放された僕であったが――
自分にバフを重ねがけした場合、能力値が100倍にアップすることに気づいた。
その力で、敵国の刺客に襲われた王女様を助けて、新設された魔法騎士団の団長に任命される。
一方で、僕のバフを失ったバラン団長の最強騎士団には暗雲がたれこめていた。
「騎士団が最強だったのは、アベル様のお力があったればこそです!」
これは外れスキル持ちとバカにされ続けた少年が、その力で成り上がって王女に溺愛され、国の英雄となる物語。
戦場の英雄、上官の陰謀により死亡扱いにされ、故郷に帰ると許嫁は結婚していた。絶望の中、偶然助けた許嫁の娘に何故か求婚されることに
千石
ファンタジー
「絶対生きて帰ってくる。その時は結婚しよう」
「はい。あなたの帰りをいつまでも待ってます」
許嫁と涙ながらに約束をした20年後、英雄と呼ばれるまでになったルークだったが生還してみると死亡扱いにされていた。
許嫁は既に結婚しており、ルークは絶望の只中に。
上官の陰謀だと知ったルークは激怒し、殴ってしまう。
言い訳をする気もなかったため、全ての功績を抹消され、貰えるはずだった年金もパー。
絶望の中、偶然助けた子が許嫁の娘で、
「ルーク、あなたに惚れたわ。今すぐあたしと結婚しなさい!」
何故か求婚されることに。
困りながらも巻き込まれる騒動を通じて
ルークは失っていた日常を段々と取り戻していく。
こちらは他のウェブ小説にも投稿しております。
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
夫から『お前を愛することはない』と言われたので、お返しついでに彼のお友達をお招きした結果。
古森真朝
ファンタジー
「クラリッサ・ベル・グレイヴィア伯爵令嬢、あらかじめ言っておく。
俺がお前を愛することは、この先決してない。期待など一切するな!」
新婚初日、花嫁に真っ向から言い放った新郎アドルフ。それに対して、クラリッサが返したのは――
※ぬるいですがホラー要素があります。苦手な方はご注意ください。
卒業パーティでようやく分かった? 残念、もう手遅れです。
柊
ファンタジー
貴族の伝統が根づく由緒正しい学園、ヴァルクレスト学院。
そんな中、初の平民かつ特待生の身分で入学したフィナは卒業パーティの片隅で静かにグラスを傾けていた。
すると隣国クロニア帝国の王太子ノアディス・アウレストが会場へとやってきて……。
処刑された勇者は二度目の人生で復讐を選ぶ
シロタカズキ
ファンタジー
──勇者は、すべてを裏切られ、処刑された。
だが、彼の魂は復讐の炎と共に蘇る──。
かつて魔王を討ち、人類を救った勇者 レオン・アルヴァレス。
だが、彼を待っていたのは称賛ではなく、 王族・貴族・元仲間たちによる裏切りと処刑だった。
「力が強すぎる」という理由で異端者として断罪され、広場で公開処刑されるレオン。
国民は歓喜し、王は満足げに笑い、かつての仲間たちは目を背ける。
そして、勇者は 死んだ。
──はずだった。
十年後。
王国は繁栄の影で腐敗し、裏切り者たちは安穏とした日々を送っていた。
しかし、そんな彼らの前に死んだはずの勇者が現れる。
「よくもまあ、のうのうと生きていられたものだな」
これは、英雄ではなくなった男の復讐譚。
彼を裏切った王族、貴族、そしてかつての仲間たちを絶望の淵に叩き落とすための第二の人生が、いま始まる──。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる