偽物の侯爵子息は平民落ちのうえに国外追放を言い渡されたので自由に生きる。え?帰ってきてくれ?それは無理というもの

つくも茄子

文字の大きさ
71 / 94
~第四章~

70.サバスside ~魔術師育成学校2~

しおりを挟む
「ねぇ!ねぇったら!」

 あの日助けて以降、デイジー・オレフが俺の後を追いかけてくるようになった。

「何か用か?」

「私と一緒にカフェでお茶しよ!」

「悪いがこの後、授業がある」

「待ってる!」

「いいよ」

「遠慮しないで!」

「いや、遠慮してないんだが……」

 デイジー・オレフはかなり強引だ。俺の話を全く聞いていない。
 だがここで俺が根負けしたら最後、これから先もずっと付きまとわれるだろう事は目に見えている。

 それに……。

 ちらりと教室のドアに目を向ける。そこには同級生と思しき少年が数名、こちらをうかがっている。
 彼らはデイジー・オレフに気があるのだろう。
 デイジー・オレフは美少女だ。鮮やかな赤毛に琥珀色の瞳。小柄で可愛らしい少女だ。彼女が俺に付きまとっているんだ。さぞ面白くない事だろう。
 現に今だって俺を射殺さんばかりに睨んでいる奴もいる。

「兎に角、俺は忙しいだ。暇なら彼らに相手にして貰うんだな」

 俺はデイジー・オレフから逃げるようにその場を立ち去った。

 全く……変なのに懐かれたものだ。




「遅かったね。何かあった?」

 次の授業の教室に辿り着くと、友人のエヴァンが心配そうに声をかけてきた。俺は首を横に振ると、エヴァンの隣に座った。

「デイジー・オレフに付きまとわれてる」

「あぁ、あの

 エヴァンは納得顔で頷いた。

「このところずっとだね。よっぽど気に入ったのかな?ま、サバスは美形だからね」

「勘弁してくれ……」

 俺はため息をついた。全く……、迷惑だ。

「ははっ。お疲れ様。でも悪い子じゃないよ?」

「それは分かるが……」

 どうも苦手だ。
 距離感が近過ぎるというか、遠慮がないというか。

「グイグイ来る女の子は苦手?サバス」

「まぁ……な。そんなところだ。もう少し慎みのある子がいい」

「大人しい子が好きなんだ」

「いや……そういうわけでは……」

 逆に大人し過ぎるのも苦手だ。
 昔、大人しめの令嬢と会話して話しが全く続かなかったという苦い経験があるからな。

「そうなると貴族の令嬢?大人し過ぎず、慎みを持つ淑女がタイプ?え!?意外!サバスはそういうの苦手そうだと思ってた!」

「勝手に決めるな!」

「まあ、サバスって結構古風なタイプを好みそうだもんね。そういうタイプって反発するけど、実はタイプってオチ?」

「そんな訳あるか!」

 エヴァンは俺の反応が可笑しかったのか、くつくつと笑う。
 今日は厄日だ。

 デイジー・オレフに付きまとわれるわ、エヴァンにはからかわれるわ。全く……。


しおりを挟む
感想 44

あなたにおすすめの小説

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

戦場の英雄、上官の陰謀により死亡扱いにされ、故郷に帰ると許嫁は結婚していた。絶望の中、偶然助けた許嫁の娘に何故か求婚されることに

千石
ファンタジー
「絶対生きて帰ってくる。その時は結婚しよう」 「はい。あなたの帰りをいつまでも待ってます」 許嫁と涙ながらに約束をした20年後、英雄と呼ばれるまでになったルークだったが生還してみると死亡扱いにされていた。 許嫁は既に結婚しており、ルークは絶望の只中に。 上官の陰謀だと知ったルークは激怒し、殴ってしまう。 言い訳をする気もなかったため、全ての功績を抹消され、貰えるはずだった年金もパー。 絶望の中、偶然助けた子が許嫁の娘で、 「ルーク、あなたに惚れたわ。今すぐあたしと結婚しなさい!」 何故か求婚されることに。 困りながらも巻き込まれる騒動を通じて ルークは失っていた日常を段々と取り戻していく。 こちらは他のウェブ小説にも投稿しております。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

弟に裏切られ、王女に婚約破棄され、父に追放され、親友に殺されかけたけど、大賢者スキルと幼馴染のお陰で幸せ。

克全
ファンタジー
「アルファポリス」「カクヨム」「ノベルバ」に同時投稿しています。

パワハラ騎士団長に追放されたけど、君らが最強だったのは僕が全ステータスを10倍にしてたからだよ。外れスキル《バフ・マスター》で世界最強

こはるんるん
ファンタジー
「アベル、貴様のような軟弱者は、我が栄光の騎士団には不要。追放処分とする!」  騎士団長バランに呼び出された僕――アベルはクビを宣言された。  この世界では8歳になると、女神から特別な能力であるスキルを与えられる。  ボクのスキルは【バフ・マスター】という、他人のステータスを数%アップする力だった。  これを授かった時、外れスキルだと、みんなからバカにされた。  だけど、スキルは使い続けることで、スキルLvが上昇し、強力になっていく。  僕は自分を信じて、8年間、毎日スキルを使い続けた。 「……本当によろしいのですか? 僕のスキルは、バフ(強化)の対象人数3000人に増えただけでなく、効果も全ステータス10倍アップに進化しています。これが無くなってしまえば、大きな戦力ダウンに……」 「アッハッハッハッハッハッハ! 見苦しい言い訳だ! 全ステータス10倍アップだと? バカバカしい。そんな嘘八百を並べ立ててまで、この俺の最強騎士団に残りたいのか!?」  そうして追放された僕であったが――  自分にバフを重ねがけした場合、能力値が100倍にアップすることに気づいた。  その力で、敵国の刺客に襲われた王女様を助けて、新設された魔法騎士団の団長に任命される。    一方で、僕のバフを失ったバラン団長の最強騎士団には暗雲がたれこめていた。 「騎士団が最強だったのは、アベル様のお力があったればこそです!」  これは外れスキル持ちとバカにされ続けた少年が、その力で成り上がって王女に溺愛され、国の英雄となる物語。

【完結】捨てられた双子のセカンドライフ

mazecco
ファンタジー
【第14回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞作】 王家の血を引きながらも、不吉の象徴とされる双子に生まれてしまったアーサーとモニカ。 父王から疎まれ、幼くして森に捨てられた二人だったが、身体能力が高いアーサーと魔法に適性のあるモニカは、力を合わせて厳しい環境を生き延びる。 やがて成長した二人は森を出て街で生活することを決意。 これはしあわせな第二の人生を送りたいと夢見た双子の物語。 冒険あり商売あり。 さまざまなことに挑戦しながら双子が日常生活?を楽しみます。 (話の流れは基本まったりしてますが、内容がハードな時もあります)

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます

まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。 貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。 そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。 ☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。 ☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

処理中です...