72 / 94
~第四章~
71.サバスside ~魔術師育成学校3~
しおりを挟む
期末試験の結果が掲示板に張り出された。
「あ!サバス!君、またトップだよ!いや~~凄いよね。入学してから一度だってその順位を下げたことがないもんな~~~」
「俺からしたらお前が十位以内っていうのが不思議だ」
「え!酷い!これでも地頭はいいんです~~~」
遅刻はするし、授業はサボる。
なのに成績は良い。
こいつの事だ。地道にコツコツやるタイプじゃない。予習や復習だってしないだろう。
「お前が本気を出して勉強すれば俺なんて直ぐに追い抜くさ」
「いやいや。ムリムリ」
「無理じゃないだろう?」
「……すげぇムチャぶりを言うねぇ……」
「そうか?」
「僕の魔力量知ってるでしょう?」
「ああ」
「知ってて言う?」
「ちょっと少ないだけだ。問題ない」
「問題、大有りだよ」
「……?」
「魔術師って何だかんだ言ったところで結局は魔力の多さがモノを言うんだ。人より少ない魔力量の僕じゃあ、頑張ったところでトップなんて取れっこないよ。精々五位くらいが関の山じゃない?」
世の中、『天才』という者は存在する。
俺の知る限り、その枠に居るのは『弟』だ。
だが、今まさにもう一人『天才』の枠に入る男がいる。
それがエヴァンだ。
生まれ持った『天賦の才』。
持たざる者の気持ちは彼等には永遠に分からないだろう。努力して努力して努力を積み重ねてもなお追いつけない距離。高すぎる壁。
ここに来る前。
俺は自由奔放だった。やりたい事だけやって。やりたくない事はやらない。母上との衝突は絶えなかった。弟は俺の反対で、『良い子ちゃん』だった。だから余計に反発したのかもしれない。今思うと、俺はそう振る舞っていたに過ぎなかった。
本当の意味で「自由奔放」だったのは弟の方だった。
皆から頼られてた。
嫌な言い方をすると接取されていた。
仕事を押し付けられていた。
傍目からは利用されているようにしか見えなかった。
だが本当は違う。
弟は、サビオは、苦に思ってなかった。
出来ない奴らに任せるよりも、自分がやった方が数倍早いことを知っていた。
出来ない奴らが仕事をするよりも、自分で全てやった方が遥かに効率がいい。
忙しいが、大したことじゃない。
逆に出来ない奴らは邪魔でしかない。二度手間させられるのはゴメンだと。
はっきりと聞いた訳じゃない。
それでもそんなニュアンス的な事を言っていた。
考え方が違うのか。
それとも能力の違いなのか。
俺は無意識に実力を発揮していく弟に虚勢を張っていただけだった。
最初から負けていた。
そして俺は無意識にそれが分っていたんだ。ただ認めたくなかっただけで。弟に対する劣等感を。
これが才能の違いって事だ。
良くも悪くもそれが今までの俺の人生の集大成で、ここに来て身に沁みて理解した。教師も生徒も俺を「天才だ」と持て囃す。本物を知らないからこそ言えるだけだ。知っていればそんな言葉は出てこない。
本当の『天才』は良くも悪くも他と一線を画す事を――――
「あ!サバス!君、またトップだよ!いや~~凄いよね。入学してから一度だってその順位を下げたことがないもんな~~~」
「俺からしたらお前が十位以内っていうのが不思議だ」
「え!酷い!これでも地頭はいいんです~~~」
遅刻はするし、授業はサボる。
なのに成績は良い。
こいつの事だ。地道にコツコツやるタイプじゃない。予習や復習だってしないだろう。
「お前が本気を出して勉強すれば俺なんて直ぐに追い抜くさ」
「いやいや。ムリムリ」
「無理じゃないだろう?」
「……すげぇムチャぶりを言うねぇ……」
「そうか?」
「僕の魔力量知ってるでしょう?」
「ああ」
「知ってて言う?」
「ちょっと少ないだけだ。問題ない」
「問題、大有りだよ」
「……?」
「魔術師って何だかんだ言ったところで結局は魔力の多さがモノを言うんだ。人より少ない魔力量の僕じゃあ、頑張ったところでトップなんて取れっこないよ。精々五位くらいが関の山じゃない?」
世の中、『天才』という者は存在する。
俺の知る限り、その枠に居るのは『弟』だ。
だが、今まさにもう一人『天才』の枠に入る男がいる。
それがエヴァンだ。
生まれ持った『天賦の才』。
持たざる者の気持ちは彼等には永遠に分からないだろう。努力して努力して努力を積み重ねてもなお追いつけない距離。高すぎる壁。
ここに来る前。
俺は自由奔放だった。やりたい事だけやって。やりたくない事はやらない。母上との衝突は絶えなかった。弟は俺の反対で、『良い子ちゃん』だった。だから余計に反発したのかもしれない。今思うと、俺はそう振る舞っていたに過ぎなかった。
本当の意味で「自由奔放」だったのは弟の方だった。
皆から頼られてた。
嫌な言い方をすると接取されていた。
仕事を押し付けられていた。
傍目からは利用されているようにしか見えなかった。
だが本当は違う。
弟は、サビオは、苦に思ってなかった。
出来ない奴らに任せるよりも、自分がやった方が数倍早いことを知っていた。
出来ない奴らが仕事をするよりも、自分で全てやった方が遥かに効率がいい。
忙しいが、大したことじゃない。
逆に出来ない奴らは邪魔でしかない。二度手間させられるのはゴメンだと。
はっきりと聞いた訳じゃない。
それでもそんなニュアンス的な事を言っていた。
考え方が違うのか。
それとも能力の違いなのか。
俺は無意識に実力を発揮していく弟に虚勢を張っていただけだった。
最初から負けていた。
そして俺は無意識にそれが分っていたんだ。ただ認めたくなかっただけで。弟に対する劣等感を。
これが才能の違いって事だ。
良くも悪くもそれが今までの俺の人生の集大成で、ここに来て身に沁みて理解した。教師も生徒も俺を「天才だ」と持て囃す。本物を知らないからこそ言えるだけだ。知っていればそんな言葉は出てこない。
本当の『天才』は良くも悪くも他と一線を画す事を――――
135
あなたにおすすめの小説
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
戦場の英雄、上官の陰謀により死亡扱いにされ、故郷に帰ると許嫁は結婚していた。絶望の中、偶然助けた許嫁の娘に何故か求婚されることに
千石
ファンタジー
「絶対生きて帰ってくる。その時は結婚しよう」
「はい。あなたの帰りをいつまでも待ってます」
許嫁と涙ながらに約束をした20年後、英雄と呼ばれるまでになったルークだったが生還してみると死亡扱いにされていた。
許嫁は既に結婚しており、ルークは絶望の只中に。
上官の陰謀だと知ったルークは激怒し、殴ってしまう。
言い訳をする気もなかったため、全ての功績を抹消され、貰えるはずだった年金もパー。
絶望の中、偶然助けた子が許嫁の娘で、
「ルーク、あなたに惚れたわ。今すぐあたしと結婚しなさい!」
何故か求婚されることに。
困りながらも巻き込まれる騒動を通じて
ルークは失っていた日常を段々と取り戻していく。
こちらは他のウェブ小説にも投稿しております。
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
パワハラ騎士団長に追放されたけど、君らが最強だったのは僕が全ステータスを10倍にしてたからだよ。外れスキル《バフ・マスター》で世界最強
こはるんるん
ファンタジー
「アベル、貴様のような軟弱者は、我が栄光の騎士団には不要。追放処分とする!」
騎士団長バランに呼び出された僕――アベルはクビを宣言された。
この世界では8歳になると、女神から特別な能力であるスキルを与えられる。
ボクのスキルは【バフ・マスター】という、他人のステータスを数%アップする力だった。
これを授かった時、外れスキルだと、みんなからバカにされた。
だけど、スキルは使い続けることで、スキルLvが上昇し、強力になっていく。
僕は自分を信じて、8年間、毎日スキルを使い続けた。
「……本当によろしいのですか? 僕のスキルは、バフ(強化)の対象人数3000人に増えただけでなく、効果も全ステータス10倍アップに進化しています。これが無くなってしまえば、大きな戦力ダウンに……」
「アッハッハッハッハッハッハ! 見苦しい言い訳だ! 全ステータス10倍アップだと? バカバカしい。そんな嘘八百を並べ立ててまで、この俺の最強騎士団に残りたいのか!?」
そうして追放された僕であったが――
自分にバフを重ねがけした場合、能力値が100倍にアップすることに気づいた。
その力で、敵国の刺客に襲われた王女様を助けて、新設された魔法騎士団の団長に任命される。
一方で、僕のバフを失ったバラン団長の最強騎士団には暗雲がたれこめていた。
「騎士団が最強だったのは、アベル様のお力があったればこそです!」
これは外れスキル持ちとバカにされ続けた少年が、その力で成り上がって王女に溺愛され、国の英雄となる物語。
【完結】捨てられた双子のセカンドライフ
mazecco
ファンタジー
【第14回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞作】
王家の血を引きながらも、不吉の象徴とされる双子に生まれてしまったアーサーとモニカ。
父王から疎まれ、幼くして森に捨てられた二人だったが、身体能力が高いアーサーと魔法に適性のあるモニカは、力を合わせて厳しい環境を生き延びる。
やがて成長した二人は森を出て街で生活することを決意。
これはしあわせな第二の人生を送りたいと夢見た双子の物語。
冒険あり商売あり。
さまざまなことに挑戦しながら双子が日常生活?を楽しみます。
(話の流れは基本まったりしてますが、内容がハードな時もあります)
【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます
まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。
貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。
そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。
☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。
☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる