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~第四章~
89.サバスside ~調査1~
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「ねぇ、サバス。あの日記さ、やっぱりおかしいよね?」
寮に着いてもなおエヴァンの興奮は冷めないらしい。
いや、むしろ高まっているといったほうが正しいだろう。
「この前死んだ四人と無関係ってわけじゃなさそうだよね。絶対に何か関係してるよ。そう思うでしょう?」
「そうだな。だが判断材料が足りない。もう少し情報があれば判断できるんだが」
「そうだけどさぁ」
エヴァンは不満そうだ。
納得していないんだろう。
「ねぇ」
「駄目だ」
「まだ何も言ってないよ!!」
「どうせ『日記の書かれていたことが本当かどうか確かめたい』とか言うんだろう」
「……ううっ」
エヴァンが何を言いたいかは予想がついた。
というよりも日記を持ち出してから興奮しっぱなしなのだ。
俺も賛同した手前偉そうなことは言えないが。
何を調べたいのか、予想は簡単につく。
「でもさ!二十年前に何があったかを調べるのは重要な手掛かりになると思うよ。あの四人が死んだ理由もそれ関係かもしれないし」
「それはそうだが」
「なら確かめようよ!」
エヴァンはどうしても真相を知りたいらしい。
その気持ちは分からなくもないが……。
同じ家名。
オレフ王国か。
日記では二十年前は加害者側だった。今回は被害者側だ。
もし仮に二十年前に何かしらの事件があったとして、それが今回の事件にどう関わっているんだ? もしかしたら関係ないかもしれない。
しかし、もし関係があったとしたら……。
「……わかった」
「やったーー!!」
俺が了承した途端、エヴァンは飛び跳ねた。
そんなにも嬉しいのか?
好奇心が刺激されたのかもしれない。
そういうことはよくあるので慣れた。本当は慣れたくないが。
「ねぇ、何から調べようか?」
「……そうだな。とりあえず、二十年前に学校で何があったかを調べた方が無難だろう。昔の新聞記事に載っている可能性は高い。まずはそこからだな」
「うん、わかった」
片っ端から古い新聞記事を漁った。
二十年前、学校で起こったであろう何か。
事件か、事故か、自殺か。
その記事は簡単に見つかった。
「あったよ!」
「ああ」
エヴァンが見つけた記事は『旧校舎から転落した少年』という見出しだった。
「これってさ、あの日記と同じだよね?」
「そうだな」
内容はこうだ。
二十年前、魔術師育成学校で転落事故があった。
当時、留学生だった少年が誤って転落してしまったとある。
転落した時に頭を強く打ったことが原因で死亡してしまった。
当時の新聞には転落事故の詳細と留学生の名前も記載されていた。
「この子、日記に書かれてた子と同じだ」
留学生の正体はオレフ王国の王子だった。
転落した少年の名は『リーハイム』。
一国の王子。
しかも王太子だ。
「ねぇ、これってさ……」
「……ああ」
旧校舎から転落した少年も『リーハイム』という名前だった。
記事の亡くなったリーハイム王太子は身分を隠して留学していたらしく、彼の身分を知る者は学校内でも極限られたメンバーだけだった。
これは偶然なのか?
事故死となっているが本当か?
リーハイム王太子の転落事故は事件なんじゃないのか?
日記に書かれていた通り殺されていたのでは?
「ねえ、これってさ」
「ああ、わかってる。ただ証拠がない。日記に書かれていただけではな」
「調べてみる価値はあるよね?」
「危険だ」
「でも、調べてみたい」
エヴァンは決意を固めた顔をしていた。
……そんな顔をされたら断りづらい。
だが深入りするのはまずい。
他国とはいえ、王族が関わっている。
身分を偽っていたとしても王太子が死んだんだ。
新聞にもしっかりと書かれていることを考慮しても問題になったはず。それを再び掘り起こす行為は誰も喜ばない。
「ねえ、お願いだよ」
「……はあ、わかった」
「本当?」
「ああ」
もう何を言っても無駄だろうしな。
俺がどれだけ反対してもエヴァンはきっと調べる。
「ありがとう!サバス!」
「ただし危険だと思ったらすぐに止めるからな」
「うん!」
一応、釘は刺しておく。
無駄かもしれないが。
こうでもしないとこいつは止まらない。
本当に危ない橋を渡るのだけは勘弁願いたい。
寮に着いてもなおエヴァンの興奮は冷めないらしい。
いや、むしろ高まっているといったほうが正しいだろう。
「この前死んだ四人と無関係ってわけじゃなさそうだよね。絶対に何か関係してるよ。そう思うでしょう?」
「そうだな。だが判断材料が足りない。もう少し情報があれば判断できるんだが」
「そうだけどさぁ」
エヴァンは不満そうだ。
納得していないんだろう。
「ねぇ」
「駄目だ」
「まだ何も言ってないよ!!」
「どうせ『日記の書かれていたことが本当かどうか確かめたい』とか言うんだろう」
「……ううっ」
エヴァンが何を言いたいかは予想がついた。
というよりも日記を持ち出してから興奮しっぱなしなのだ。
俺も賛同した手前偉そうなことは言えないが。
何を調べたいのか、予想は簡単につく。
「でもさ!二十年前に何があったかを調べるのは重要な手掛かりになると思うよ。あの四人が死んだ理由もそれ関係かもしれないし」
「それはそうだが」
「なら確かめようよ!」
エヴァンはどうしても真相を知りたいらしい。
その気持ちは分からなくもないが……。
同じ家名。
オレフ王国か。
日記では二十年前は加害者側だった。今回は被害者側だ。
もし仮に二十年前に何かしらの事件があったとして、それが今回の事件にどう関わっているんだ? もしかしたら関係ないかもしれない。
しかし、もし関係があったとしたら……。
「……わかった」
「やったーー!!」
俺が了承した途端、エヴァンは飛び跳ねた。
そんなにも嬉しいのか?
好奇心が刺激されたのかもしれない。
そういうことはよくあるので慣れた。本当は慣れたくないが。
「ねぇ、何から調べようか?」
「……そうだな。とりあえず、二十年前に学校で何があったかを調べた方が無難だろう。昔の新聞記事に載っている可能性は高い。まずはそこからだな」
「うん、わかった」
片っ端から古い新聞記事を漁った。
二十年前、学校で起こったであろう何か。
事件か、事故か、自殺か。
その記事は簡単に見つかった。
「あったよ!」
「ああ」
エヴァンが見つけた記事は『旧校舎から転落した少年』という見出しだった。
「これってさ、あの日記と同じだよね?」
「そうだな」
内容はこうだ。
二十年前、魔術師育成学校で転落事故があった。
当時、留学生だった少年が誤って転落してしまったとある。
転落した時に頭を強く打ったことが原因で死亡してしまった。
当時の新聞には転落事故の詳細と留学生の名前も記載されていた。
「この子、日記に書かれてた子と同じだ」
留学生の正体はオレフ王国の王子だった。
転落した少年の名は『リーハイム』。
一国の王子。
しかも王太子だ。
「ねぇ、これってさ……」
「……ああ」
旧校舎から転落した少年も『リーハイム』という名前だった。
記事の亡くなったリーハイム王太子は身分を隠して留学していたらしく、彼の身分を知る者は学校内でも極限られたメンバーだけだった。
これは偶然なのか?
事故死となっているが本当か?
リーハイム王太子の転落事故は事件なんじゃないのか?
日記に書かれていた通り殺されていたのでは?
「ねえ、これってさ」
「ああ、わかってる。ただ証拠がない。日記に書かれていただけではな」
「調べてみる価値はあるよね?」
「危険だ」
「でも、調べてみたい」
エヴァンは決意を固めた顔をしていた。
……そんな顔をされたら断りづらい。
だが深入りするのはまずい。
他国とはいえ、王族が関わっている。
身分を偽っていたとしても王太子が死んだんだ。
新聞にもしっかりと書かれていることを考慮しても問題になったはず。それを再び掘り起こす行為は誰も喜ばない。
「ねえ、お願いだよ」
「……はあ、わかった」
「本当?」
「ああ」
もう何を言っても無駄だろうしな。
俺がどれだけ反対してもエヴァンはきっと調べる。
「ありがとう!サバス!」
「ただし危険だと思ったらすぐに止めるからな」
「うん!」
一応、釘は刺しておく。
無駄かもしれないが。
こうでもしないとこいつは止まらない。
本当に危ない橋を渡るのだけは勘弁願いたい。
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