【完結】元妃は多くを望まない

つくも茄子

文字の大きさ
20 / 24

20.グーシャ国王陛下side

しおりを挟む
 カぺル公爵家は十二年前、領地で未曾有の災害が起き、多くの民が飢えや疫病に苦しんだ。
 復興の遅れも重なったのだろう。公爵家は困窮した。
 その為に公爵家は嫡男ウツケット・カぺルの婚約者にシャーロット・カールストン侯爵令嬢を打診した。

 カールストン侯爵家は領地持ちの貴族ではないが、高官を多数輩出している。そのうえ、貴族では珍しく商売を生業としている家系だ。昔から資産家としても有名だった。
 おまけにカールストン侯爵の嫡男は優秀だ。
 容姿も美しいし、国王である私の側近にあがってもおかしくないほどの逸材。

 カールストン侯爵家の援助で持ち直したカぺル公爵家。
 このままいけば、ローズは間違いなく私の正妃になっていた。
 元々、実家の困窮が問題だったのだ。

 ウツケットが駆け落ちなどせねば、公爵家は今も援助を続けられたはずだ。
 いいや、ウツケットが浮気などせず誠実だったならシャーロットは側妃にならなかった。そのままウツケットと結婚していた。そうなっていれば全てが丸く収まっていた。

 …………言い訳だ。

 そうなっていたとしてもローズの罪はいずれ明らかにされていただろう。
 ローズに嫌がらせを受けた妃はなにもシャーロットだけではない。
 ラヴリーへの嫌がらせの数々もローズの指示だったのだ。

 父上から聞かされた内容に衝撃を受けずにはいられなかった。

 私は、ローズの言葉を信じて、裏を調べもせずにシャーロットを糾弾したのだ。

 父上のあの怒りは当然だ。


 信じていた。
 ローズのことを信じていたんだ。

 元々、ローズはワガママな性格だった。長い付き合いだ。そんなところも妹のように可愛いとすら思っていた。
 愚かとしかいいようがない。
 実際は、可愛いワガママどころの話じゃなかったのだ。

 ローズは、自分の目的の為ならどんな悪辣なことでもする女だった。
 気に入らない人間を排除することくらい、ローズにとっては簡単だった。

 遠回しな指示をだして誰かが自ら邪魔者を排除するように仕向けていた。

 そうやって、自分の手を汚すことなく邪魔者を排除し、自分が欲しいものは他人から奪っていたらしい。
 私の前ではそんな素振りは見せなかった。

 父上から、「お前の前では常に猫を被っていた。わからなかったのか?」と言われ、愕然とした。

 一部ではローズの非道な振る舞いは有名だったらしい。
 それでも被害者が声に出さなかったのはローズが「公爵令嬢」であり「上級妃」だったからだ。
 彼女は国でも頂点に近い高貴な女性なのだ。
 ローズを敵に回せば、国王である私の逆鱗に触れるとわかっていて、誰が声をあげる? しかも相手は正妃候補筆頭だ。
 そんなローズに「イジメられた」「貶められた」と訴えたところで信じてもらえないだろう。むしろ訴えた方が「悪」になる状況だ。しかもこれといった証拠がない。ただの言いがかりにしかならない。
 誰だってそんな火中の栗は拾いたくない。
 ローズの悪辣な行為を知っていた者は、見て見ぬふりをしていた。
 公爵家にいた頃はうっぷん晴らしとして侍女を折檻していた時期もあったそうだ。「一時期は侍女の入れ替わりが激しかったそうです」と先ほど侍従に教えられた。

 気付かなかった。
 ローズを信じていた。
 可愛い妹分だと思っていた。
 大切な幼馴染だった。

 なのに何故……。いや、理由などとうにわかっている。
 私が愚かだっただけだ。

 シャーロットの名誉を回復させなければならない。

 彼女を貶めた妃達は全員後宮から追放させる。
 彼女たちの実家にも相応の罰を与える。
 罪を償わなければならない……私も含めて。


 せめて、子供たちだけは罪の対象にならないようにしなければ……。
 父と母の罪を子供が背負う必要はない。


しおりを挟む
感想 19

あなたにおすすめの小説

【完結】この運命を受け入れましょうか

なか
恋愛
「君のようは妃は必要ない。ここで廃妃を宣言する」  自らの夫であるルーク陛下の言葉。  それに対して、ヴィオラ・カトレアは余裕に満ちた微笑みで答える。   「承知しました。受け入れましょう」  ヴィオラにはもう、ルークへの愛など残ってすらいない。  彼女が王妃として支えてきた献身の中で、平民生まれのリアという女性に入れ込んだルーク。  みっともなく、情けない彼に対して恋情など抱く事すら不快だ。  だが聖女の素養を持つリアを、ルークは寵愛する。  そして貴族達も、莫大な益を生み出す聖女を妃に仕立てるため……ヴィオラへと無実の罪を被せた。  あっけなく信じるルークに呆れつつも、ヴィオラに不安はなかった。  これからの顛末も、打開策も全て知っているからだ。  前世の記憶を持ち、ここが物語の世界だと知るヴィオラは……悲運な運命を受け入れて彼らに意趣返す。  ふりかかる不幸を全て覆して、幸せな人生を歩むため。     ◇◇◇◇◇  設定は甘め。  不安のない、さっくり読める物語を目指してます。  良ければ読んでくだされば、嬉しいです。

結婚初夜、「何故彼女が死んでお前が生きているんだ」と夫に言われました

ましゅぺちーの
恋愛
侯爵令嬢のアリサは婚約者だった王太子テオドールと結婚した。 ちょうどその半年前、アリサの腹違いの妹のシアは不慮の事故で帰らぬ人となっていた。 王太子が婚約者の妹のシアを愛していたのは周知の事実だった。 そんな彼は、結婚初夜、アリサに冷たく言い放った。 「何故彼女が死んでお前が生きているんだ」と。

【完結】白い結婚を終えて自由に生きてまいります

なか
恋愛
––アロルド、私は貴方が結婚初日に告げた言葉を今でも覚えている。  忘れもしない、あの時貴方は確かにこう言った。  「初めに言っておく、俺達の婚姻関係は白い結婚として……この関係は三年間のみとする」 「白い結婚ですか?」 「実は俺には……他に愛する女性がいる」   それは「公爵家の令嬢との問題」を理由に、三年間だけの白い結婚を強いるもの。 私の意思を無視して三家が取り決めたものであったが、私は冷静に合意を決めた ――それは自由を得るため、そして『私自身の秘密を隠すため』の計算でもあった。 ところが、三年の終わりが近づいたとき、アロルドは突然告白する。「この三年間で君しか見えなくなった。白い結婚の約束をなかったことにしてくれ」と。 「セシーリア、頼む……どうか、どうか白い結婚の合意を無かった事にしてくれ」 アロルド、貴方は何を言い出すの? なにを言っているか、分かっているの? 「俺には君しかいないと、この三年間で分かったんだ」 私の答えは決まっていた。 受け入れられるはずがない。  自由のため、私の秘密を守るため、貴方の戯言に付き合う気はなかった。    ◇◇◇ 設定はゆるめです。 とても強い主人公が自由に暮らすお話となります。 もしよろしければ、読んでくださると嬉しいです!

【完結】キズモノになった私と婚約破棄ですか?別に構いませんがあなたが大丈夫ですか?

なか
恋愛
「キズモノのお前とは婚約破棄する」 顔にできた顔の傷も治らぬうちに第二王子のアルベルト様にそう宣告される 大きな傷跡は残るだろう キズモノのとなった私はもう要らないようだ そして彼が持ち出した条件は婚約破棄しても身体を寄越せと下卑た笑いで告げるのだ そんな彼を殴りつけたのはとある人物だった このキズの謎を知ったとき アルベルト王子は永遠に後悔する事となる 永遠の後悔と 永遠の愛が生まれた日の物語

次代の希望 愛されなかった王太子妃の愛

Rj
恋愛
王子様と出会い結婚したグレイス侯爵令嬢はおとぎ話のように「幸せにくらしましたとさ」という結末を迎えられなかった。愛し合っていると思っていたアーサー王太子から結婚式の二日前に愛していないといわれ、表向きは仲睦まじい王太子夫妻だったがアーサーにはグレイス以外に愛する人がいた。次代の希望とよばれた王太子妃の物語。 全十二話。(全十一話で投稿したものに一話加えました。2/6変更)

危ない愛人を持つあなたが王太子でいられるのは、私のおかげです。裏切るのなら容赦しません。

Hibah
恋愛
エリザベスは王妃教育を経て、正式に王太子妃となった。夫である第一王子クリフォードと初めて対面したとき「僕には好きな人がいる。君を王太子妃として迎えるが、僕の生活には極力関わらないでくれ」と告げられる。しかしクリフォードが好きな人というのは、平民だった。もしこの事実が公になれば、クリフォードは廃太子となり、エリザベスは王太子妃でいられなくなってしまう。エリザベスは自分の立場を守るため、平民の愛人を持つ夫の密会を見守るようになる……。

【完結】側妃は愛されるのをやめました

なか
恋愛
「君ではなく、彼女を正妃とする」  私は、貴方のためにこの国へと貢献してきた自負がある。  なのに……彼は。 「だが僕は、ラテシアを見捨てはしない。これから君には側妃になってもらうよ」  私のため。  そんな建前で……側妃へと下げる宣言をするのだ。    このような侮辱、恥を受けてなお……正妃を求めて抗議するか?  否。  そのような恥を晒す気は無い。 「承知いたしました。セリム陛下……私は側妃を受け入れます」  側妃を受けいれた私は、呼吸を挟まずに言葉を続ける。  今しがた決めた、たった一つの決意を込めて。 「ですが陛下。私はもう貴方を支える気はありません」  これから私は、『捨てられた妃』という汚名でなく、彼を『捨てた妃』となるために。  華々しく、私の人生を謳歌しよう。  全ては、廃妃となるために。    ◇◇◇  設定はゆるめです。  読んでくださると嬉しいです!

「君は完璧だから、放っておいても大丈夫」と笑った夫。~王宮から私が去ったあと「愛していた」と泣きついても、もう手遅れです~

水上
恋愛
「君は完璧だから、放っておいても大丈夫だ」 夫である王太子はそう笑い、泣き真似が得意な見習い令嬢ばかりを優先した。 王太子妃セシリアは、怒り狂うこともなく、静かに心を閉ざす。 「左様でございますか」 彼女は夫への期待というノイズを遮断し、離縁の準備を始めた。

処理中です...