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~桐壺の章~
第15話桐壺の更衣
しおりを挟む実母である桐壺の更衣は、桐壺帝の寵愛を一身に受けている。
当然、美人だ。
いつまでたっても少女のようなあどけない美貌の持ち主。
美女というより美少女といったほうがいいかな。
二十歳になるけど、どう頑張っても十五歳にしか見えない見た目年齢。
零れ落ちそうな大きな瞳、透き通るような白い肌、壊れそうなほどの華奢な肢体の儚げな美少女だ。
その上、幸薄そうな雰囲気を漂わせている。薄幸の美少女ってやつだった。
ただ、問題が……。
「桐壺の更衣様、あまり端近くに御出でになってはいけません」
「……」
「まぁまぁまぁ。そのような事はございません」
「……」
「内裏といえども、殿方が多く出入りしております」
「……」
「主上の命でございます。他の殿方に桐壺の更衣様の美しいお姿を見せたくはないのでございます」
「……」
「大丈夫でございますよ。主上のいう事をお聞きになっていれば万時問題ございません」
「……」
「はい、その通りでございます」
……いやいやいや。
意味が分からん。
実母の桐壺の更衣は、よくわからない不思議ちゃんだ。
あどけない美貌で周囲を魅了しているけど、僕は彼女と会話をしたことがない。
そういうと親子関係が破綻しているように聞こえるだろうけど、それは違う。
母親の声が聞こえないというか、口パクにしか見えないいうか…兎に角、会話にならない。
最初、声が出ないのか、それとも耳が聞こえないのかと思ったけど、どうやら違うっぽい。
父帝とは普通に会話してる(ただし口パク)。桐壺の更衣付きの女房とも会話している(ただし口パク)。桐壺帝に絶対服従の女房とは辛うじて会話できるレベル(ただし口パク)。
できないのは僕だけ。
え?
言いたいことを察しろってこと?
いや~~~~無理。
表情を読んで、と思っても桐壺の更衣は表情に変化がない。
常に微笑んでいるような表情だから、顔色を伺って…なんて無理。
これぞ和風モナリザか?って思う程だからね。
桐壺帝や女房達はテレパシーでも使ってるかのように母更衣との会話が成立している。
なぜ!?
そもそも桐壺の更衣は桐壺帝と自分の女房としかお話しない。
まあ、後宮一の嫌われ者だから他の妃達と会話どころか交流さえないんだけどね。
これは大弐の乳母からの情報だから確かだ。
彼女が話すのはいつも自分の熱烈な信者達のみ。
つまり、彼女の声が聞こえるのも熱烈な信者達!
宗教か!?
母更衣は神の声か?
だから信者にしか聞こえないのか?
狂信者か!?
カルト的な関係かも……。
でも納得。僕は実母の信者ではない。
僕は仏教徒だ!
あれ?皇族だから神道か?
どっちでもいいか!
カルト信者じゃないから、母更衣の声も聞けなかったという訳だ。
まあ、あまり害のない人ではある(母親本人は)。
でも、これで第一フラグは折れたと思ったら桐壺帝が仕事しなくなった。
何言っているのか分からないよね。僕も分かんない。「桐壺の更衣の側を離れたくない」と盛大に駄々をコネて内裏から出てこなくなったんだよ。死にたいのかな??
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