【完結】平安時代絵巻物語~皇子の挑戦~

つくも茄子

文字の大きさ
70 / 119
~輝く日の宮の章~

第70話男だから女だから

しおりを挟む
本妻としての威信を賭けた『うわなりうち』。
それをするのに一ヶ月かかったのには訳がある。

この時代、女人が夜中に出かける行為を禁じられていた。
別にダメって事は無いけど基本出掛けてはいけない風潮が漂っていたのだ。まあ、電気もない時代は月の灯が頼り。牛車で出かけるにしても松明がいる。はっきり言って物騒なんだよ。夜盗に出くわして身ぐるみ剥がれて殺されておかしくない位にね。それに……。

 
「困りましたわ。女房達は顔を曝すことを嫌がっているわ」

さもありなん。
平安時代の女達は基本顔を隠している。男に姿を見られることを「恥ずかしい行為」と思っている。どうも内裏で暮らしているとそういった事を忘れがちになっちゃうんだよね。

「世の女人たちにとって顔を曝すのは非常識だからしょうがないね」

「光、勘違いしてません?」

「え?」

「別に女房達は『恥ずかしい』と思っている訳じゃありませんよ?」

「違うの?」

「我が家の女房達は才色兼備揃いよ!寧ろどんどん隙間から除いてその良さを世間に広めて欲しい位だわ!けどね、流石に暴力行為をやらかせば評判はがた落ちよ」

暴力行為の自覚はあったんだ。

男が表の外で活躍し、女が裏の家庭で活躍する。
女性は男性と違って家に縛られていて自由がない。平安時代の女性は顔を見せる事も出来ない有り様。男尊女卑も甚だしい……と思っていたし、歴史的にもそうだと思っていた。物語の中とはいえ平安時代に生きていると、どうも少し違ってくる。四の君が言うように、宮中に出仕している女官や公家に仕えている女房達がいい例だ。顔を隠して仕事なんて出来ないもんね。


「なら、女房達じゃなくて男の家人を連れて行けば?」

何も「女」が表立ってやる必要はないもんね。
危ない事は男にやらせとけばいい。

「それはダメよ。こういった場合は『女』がやるから効果があるのよ」

「どっちがやっても結果は一緒じゃない?許可書を貰ってるから『罪』にはならないよ?」

「光、甘いですわ。こういった事をしでかすには『男』よりも『女』の方が効果覿面こうかてきめんなのよ!寧ろ『か弱い女人』がするからこそ効果があるといった方がいいわね。それに万が一『許可』がにされたとしても『女』を罪に問う訳にはいかない。そんなことになったら『男の沽券にかかわる』事態ですもの」

クスクスクス、と目を細めて笑う四の君。
僕には今一理解できない。破壊活動なんだから男だろうが女だろうが同じように「罪人」としてお縄になるのが常識だ。それが「女」だから「無罪」になるって訳でもない。

「分からないという顔ね」

あ、バレてた。

「うん。どう考えても理解できないよ。罪としては同じように重いものだ。検非違使 が『女人だから』といって見逃すとは思えない」

ここら辺は男女平等だ。「罪」は「罪」として裁かれる。

「『力なき女人』が『男の家人』がいる屋敷に押し入るのですよ?検非違使たちに素直に話すと思います?彼らは『男』として決して『女に負けた』などと口が裂けても言いません。そうなると検非違使たちは自然と盗賊に襲われたと勘違いしてくれます。検非違使にしても『男が女に力負けした』など思いつかないでしょうからね。私達、女人にまで手が回ってこない可能性が高いのです。仮に、疑惑を持ったとしても右大臣家の者を『疑わしい』という曖昧な理由で罪人にする事はできません」

なるほど。
男のプライドをつついての「完全犯罪」を四の君は目論んでいる。
女に負けた自分達を「男側」は認めることができない。ならば、どうするか。目を反らして「なかった」ことにするしかない。いやはや、何時の時代も女は強かだ。ああ!だからか!

「負けた側が妙な噂を流す場合を四の君は考えている訳だ」 
 
「そういう事です。卑屈になった者は何を言いだすが分かりませんからね」

「この場合、四の君の女房達がやり玉にあげられるって処かな?」

「格上の私に何か出来る訳ありません。彼らが狙うとしたら女房達の方だわ」

四の君は主人として仕える女房を守ろうとしている。うん、主人の鏡だ。

「なら、顔を隠して闇討ちすればいいよ!」 

 
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

異世界に召喚されたけど、聖女じゃないから用はない? それじゃあ、好き勝手させてもらいます!

明衣令央
ファンタジー
 糸井織絵は、ある日、オブルリヒト王国が行った聖女召喚の儀に巻き込まれ、異世界ルリアルークへと飛ばされてしまう。  一緒に召喚された、若く美しい女が聖女――織絵は召喚の儀に巻き込まれた年増の豚女として不遇な扱いを受けたが、元スマホケースのハリネズミのぬいぐるみであるサーチートと共に、オブルリヒト王女ユリアナに保護され、聖女の力を開花させる。  だが、オブルリヒト王国の王子ジュニアスは、追い出した織絵にも聖女の可能性があるとして、織絵を連れ戻しに来た。  そして、異世界転移状態から正式に異世界転生した織絵は、若く美しい姿へと生まれ変わる。  この物語は、聖女召喚の儀に巻き込まれ、異世界転移後、新たに転生した一人の元おばさんの聖女が、相棒の元スマホケースのハリネズミと楽しく無双していく、恋と冒険の物語。 2022.9.7 話が少し進みましたので、内容紹介を変更しました。その都度変更していきます。

【改稿版】休憩スキルで異世界無双!チートを得た俺は異世界で無双し、王女と魔女を嫁にする。

ゆう
ファンタジー
剣と魔法の異世界に転生したクリス・レガード。 剣聖を輩出したことのあるレガード家において剣術スキルは必要不可欠だが12歳の儀式で手に入れたスキルは【休憩】だった。 しかしこのスキル、想像していた以上にチートだ。 休憩を使いスキルを強化、更に新しいスキルを獲得できてしまう… そして強敵と相対する中、クリスは伝説のスキルである覇王を取得する。 ルミナス初代国王が有したスキルである覇王。 その覇王発現は王国の長い歴史の中で悲願だった。 それ以降、クリスを取り巻く環境は目まぐるしく変化していく…… ※アルファポリスに投稿した作品の改稿版です。 ホットランキング最高位2位でした。 カクヨムにも別シナリオで掲載。

城で侍女をしているマリアンネと申します。お給金の良いお仕事ありませんか?

甘寧
ファンタジー
「武闘家貴族」「脳筋貴族」と呼ばれていた元子爵令嬢のマリアンネ。 友人に騙され多額の借金を作った脳筋父のせいで、屋敷、領土を差し押さえられ事実上の没落となり、その借金を返済する為、城で侍女の仕事をしつつ得意な武力を活かし副業で「便利屋」を掛け持ちしながら借金返済の為、奮闘する毎日。 マリアンネに執着するオネエ王子やマリアンネを取り巻く人達と様々な試練を越えていく。借金返済の為に…… そんなある日、便利屋の上司ゴリさんからの指令で幽霊屋敷を調査する事になり…… 武闘家令嬢と呼ばれいたマリアンネの、借金返済までを綴った物語

私の生前がだいぶ不幸でカミサマにそれを話したら、何故かそれが役に立ったらしい

あとさん♪
ファンタジー
その瞬間を、何故かよく覚えている。 誰かに押されて、誰?と思って振り向いた。私の背を押したのはクラスメイトだった。私の背を押したままの、手を突き出した恰好で嘲笑っていた。 それが私の最後の記憶。 ※わかっている、これはご都合主義! ※設定はゆるんゆるん ※実在しない ※全五話

卒業パーティでようやく分かった? 残念、もう手遅れです。

ファンタジー
貴族の伝統が根づく由緒正しい学園、ヴァルクレスト学院。 そんな中、初の平民かつ特待生の身分で入学したフィナは卒業パーティの片隅で静かにグラスを傾けていた。 すると隣国クロニア帝国の王太子ノアディス・アウレストが会場へとやってきて……。

逆行転生って胎児から!?

章槻雅希
ファンタジー
冤罪によって処刑されたログス公爵令嬢シャンセ。母の命と引き換えに生まれた彼女は冷遇され、その膨大な魔力を国のために有効に利用する目的で王太子の婚約者として王家に縛られていた。家族に冷遇され王家に酷使された彼女は言われるままに動くマリオネットと化していた。 そんな彼女を疎んだ王太子による冤罪で彼女は処刑されたのだが、気づけば時を遡っていた。 そう、胎児にまで。 別の連載ものを書いてる最中にふと思いついて書いた1時間クオリティ。 長編予定にしていたけど、プロローグ的な部分を書いているつもりで、これだけでも短編として成り立つかなと、一先ずショートショートで投稿。長編化するなら、後半の国王・王妃とのあれこれは無くなる予定。

リリゼットの学園生活 〜 聖魔法?我が家では誰でも使えますよ?

あくの
ファンタジー
 15になって領地の修道院から王立ディアーヌ学園、通称『学園』に通うことになったリリゼット。 加護細工の家系のドルバック伯爵家の娘として他家の令嬢達と交流開始するも世間知らずのリリゼットは令嬢との会話についていけない。 また姉と婚約者の破天荒な行動からリリゼットも同じなのかと学園の男子生徒が近寄ってくる。 長女気質のダンテス公爵家の長女リーゼはそんなリリゼットの危うさを危惧しており…。 リリゼットは楽しい学園生活を全うできるのか?!

【完結】物置小屋の魔法使いの娘~父の再婚相手と義妹に家を追い出され、婚約者には捨てられた。でも、私は……

buchi
恋愛
大公爵家の父が再婚して新しくやって来たのは、義母と義妹。当たり前のようにダーナの部屋を取り上げ、義妹のマチルダのものに。そして社交界への出入りを禁止し、館の隣の物置小屋に移動するよう命じた。ダーナは亡くなった母の血を受け継いで魔法が使えた。これまでは使う必要がなかった。だけど、汚い小屋に閉じ込められた時は、使用人がいるので自粛していた魔法力を存分に使った。魔法力のことは、母と母と同じ国から嫁いできた王妃様だけが知る秘密だった。 みすぼらしい物置小屋はパラダイスに。だけど、ある晩、王太子殿下のフィルがダーナを心配になってやって来て……

処理中です...