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本編
10.伯爵令嬢視点1
伯爵家の自室の窓から一台の馬車が去っていくのを溜息交じりに見ていると、専属メイドのパンジーがやってきた。
「宰相閣下の御子息は帰ったの?」
「はい。コリンズ侯爵子息はお帰りになられました」
「随分粘られていたようだけど大丈夫だった?」
「はい、執事長を相手に八つ当たり気味の言い訳を重ねておりましたが最後の方は観念したのか静かに馬車に乗っておられました。正論に弱い方なのですね」
「まったくだわ。あんなに考えなしだったとは思わなかったわ」
「お嬢様との縁が切れてようございました」
「本当だわ。宰相候補が聞いてあきれるわ。裏取りも碌にできないなんて」
「それ以前の問題でございます」
「ふふ。それもそうね。フランソワーズ様の現状を御存知ないなんてバカとしか言いようがないわ。ついでに王家のこともね」
「噂では王太子殿下は何も御存知なかったという話です」
「それこそ馬鹿げているわ。まぁ、本当だとしたらお目出度いわね。今の王家に資産がないのは高位貴族なら誰もが知っている事よ。あの王妃様が王家の援助をしてくれと言って泣きついた相手がモンティーヌ公爵家だというのは有名な話だわ。聞かなくとも分かる位に有名よ」
「はい。王妃様の実家は大変でございましょう」
「ええ、一時期はかなりの羽振りの良さだったというけど……今では破産寸前だわ」
「爵位返上をされるのでしょうか?」
「したくても出来ない状況でしょうね。モンティーヌ公爵家は王家を見限ったわ。王妃と王太子の後ろ盾はいない。名ばかりでも侯爵の位を捨てる事は二人を破滅させる事だと知っている筈だわ」
「難儀なものです」
「本当ね。難儀なのは王妃の実家だけではないわ。王家もこれから大変よ。資金援助をしてくれる貴族を失った状態だもの」
「王家の予算があるので大丈夫なのではありませんか?」
「そうとも言い切れないわね」
「……と言いますと?」
「王家の予算は依然低予算のままだわ。公爵家の援助がなくなったからといって予算が増えるとは考えにくいのよね。たぶん、今まで通りの額が支給されるんじゃないかしら?」
「大丈夫なのでしょうか?」
「何とも言えないわね。最低限の生活は保障されているでしょうけど。夜会の開催は数を減らす事は確実でしょうね」
「それは厳しいですね」
「仕方ないわ。王家自体にお金がないのだもの」
「そのように冷静に分析されていらっしゃるお嬢様に感服いたします」
「そんなことないわよ。私だって自分のことで精一杯よ」
「そうですか?とても余裕があるように見えます」
「そんなことはないわ。ただ、もう諦めたというか開き直ったというかべきか」
「なるほど。それで落ち着いていられるのですね」
「そうかもしれないわね」
「お嬢様、やはりここは新たな出会いを探すべきです!」
「……」
「私めにお任せください!必ずやお嬢様に相応しい殿方を探させて頂きます」
「パンジー、あなたって……」
「はい?」
「いいえ何でもないわ」
「では、早速リストを作成いたします」
「……よろしく頼むわ」
私の専属メイドであるパンジーは有能だ。私が今迄に出会った誰よりも優秀だと思う。だけど、一度こうと思い込むと突っ走る傾向にあるのよね。やる気に満ち溢れているのは良い事なのだけれど。
けどまぁ、確かに気分転換がてらに会うのも良いかもしれないわ。ずっと部屋に籠っているのは身体にも心にも良くないしね。
それと、私は先程見た馬車を思い出していた。
コリンズ侯爵家の馬車はとても質素だった。
家紋を付けていない馬車。それが何を物語っているのか分からない令嬢はいないだろう。
私と元婚約者。
随分と遠い処にいるわ。
物理的にも精神的にも――――
「宰相閣下の御子息は帰ったの?」
「はい。コリンズ侯爵子息はお帰りになられました」
「随分粘られていたようだけど大丈夫だった?」
「はい、執事長を相手に八つ当たり気味の言い訳を重ねておりましたが最後の方は観念したのか静かに馬車に乗っておられました。正論に弱い方なのですね」
「まったくだわ。あんなに考えなしだったとは思わなかったわ」
「お嬢様との縁が切れてようございました」
「本当だわ。宰相候補が聞いてあきれるわ。裏取りも碌にできないなんて」
「それ以前の問題でございます」
「ふふ。それもそうね。フランソワーズ様の現状を御存知ないなんてバカとしか言いようがないわ。ついでに王家のこともね」
「噂では王太子殿下は何も御存知なかったという話です」
「それこそ馬鹿げているわ。まぁ、本当だとしたらお目出度いわね。今の王家に資産がないのは高位貴族なら誰もが知っている事よ。あの王妃様が王家の援助をしてくれと言って泣きついた相手がモンティーヌ公爵家だというのは有名な話だわ。聞かなくとも分かる位に有名よ」
「はい。王妃様の実家は大変でございましょう」
「ええ、一時期はかなりの羽振りの良さだったというけど……今では破産寸前だわ」
「爵位返上をされるのでしょうか?」
「したくても出来ない状況でしょうね。モンティーヌ公爵家は王家を見限ったわ。王妃と王太子の後ろ盾はいない。名ばかりでも侯爵の位を捨てる事は二人を破滅させる事だと知っている筈だわ」
「難儀なものです」
「本当ね。難儀なのは王妃の実家だけではないわ。王家もこれから大変よ。資金援助をしてくれる貴族を失った状態だもの」
「王家の予算があるので大丈夫なのではありませんか?」
「そうとも言い切れないわね」
「……と言いますと?」
「王家の予算は依然低予算のままだわ。公爵家の援助がなくなったからといって予算が増えるとは考えにくいのよね。たぶん、今まで通りの額が支給されるんじゃないかしら?」
「大丈夫なのでしょうか?」
「何とも言えないわね。最低限の生活は保障されているでしょうけど。夜会の開催は数を減らす事は確実でしょうね」
「それは厳しいですね」
「仕方ないわ。王家自体にお金がないのだもの」
「そのように冷静に分析されていらっしゃるお嬢様に感服いたします」
「そんなことないわよ。私だって自分のことで精一杯よ」
「そうですか?とても余裕があるように見えます」
「そんなことはないわ。ただ、もう諦めたというか開き直ったというかべきか」
「なるほど。それで落ち着いていられるのですね」
「そうかもしれないわね」
「お嬢様、やはりここは新たな出会いを探すべきです!」
「……」
「私めにお任せください!必ずやお嬢様に相応しい殿方を探させて頂きます」
「パンジー、あなたって……」
「はい?」
「いいえ何でもないわ」
「では、早速リストを作成いたします」
「……よろしく頼むわ」
私の専属メイドであるパンジーは有能だ。私が今迄に出会った誰よりも優秀だと思う。だけど、一度こうと思い込むと突っ走る傾向にあるのよね。やる気に満ち溢れているのは良い事なのだけれど。
けどまぁ、確かに気分転換がてらに会うのも良いかもしれないわ。ずっと部屋に籠っているのは身体にも心にも良くないしね。
それと、私は先程見た馬車を思い出していた。
コリンズ侯爵家の馬車はとても質素だった。
家紋を付けていない馬車。それが何を物語っているのか分からない令嬢はいないだろう。
私と元婚約者。
随分と遠い処にいるわ。
物理的にも精神的にも――――
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