悪役令嬢の私は死にました

つくも茄子

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本編

16.眠り姫1

 私が長い眠りから覚めた先には両親と兄がいました。

「「「おはよう、私たちの可愛いお姫様」」」

 三人の喜ぶ姿、それはいいのですが顔…近いです。
 



「うーんー……、体が痛い。お兄様、私が死んで何日くらい経ったの?」

「そうだな。ほぼ一ヶ月くらいだな」

「そんなに……」

「仕方ない。それくらいでなければ怪しむ者も出てくる」

「私の埋葬は終わったのですよね?」

「それでも用心に越したことは無い」

「あらあら。お手間を取らせて申し訳ありませんわ」

「かまわん。元々のそういう予定だったろう?」

「それでは王家とは縁が切れたのですね」

「もちろんだ」

 兄の肯定に心の底からホッとしました。
 王太子殿下が廃嫡され男爵令嬢と婚姻した話を聞き、少し意外に思いながらも納得する事ができました。

「キュリー男爵領から生涯出る事は叶わない。安心するといい」

「はい」 

「生き返ったばかりだ。無理はするな」

 そう言ってお兄様は部屋を出て行きました。
 仮死状態とはいえ一度死んだのだと言われても実感がわかず、私はベッドの上で窓の外を眺めていました。
 外には一面の花畑が広がります。
 その景色に見覚えがあるような気がして記憶を探ると、そこはお母様とお父様に連れて来られた事のある場所でした。まだ幼かった頃、お母様に手を引かれてこの花畑を見たことがありました。私達を見て微笑んでいたのは誰だったのか思い出せませんが。

 ただこの場所が王国ではなく、母の祖母の国だということが重要でした。

 これでやっと、私は本当の意味で自由になれたのです!

 苦節十年。
 物語は無事に終了したようですし、私はやっと自分の人生を歩み始められるというもの。

 そう、実を言うと私には前世の記憶があるのです。
 

 気が付いたのは、父方の祖母が死んだ時のこと。私はこの祖母が大好きでずっと棺に縋り付いて泣いていました。

「あれ?私、悪役令嬢だ」

 思わず口にだしてしまいました。

「フランソワーズ様、おばあ様とのお別れがそんなに……」

「あれほど懐いていらっしゃったのだ無理もない」

 周囲は私のおかしな言葉をスルーしてました。恐らく、大好きな祖母が亡くなって錯乱状態なのだろうとでも思われていたんでしょうね。気が付けば愛する祖母の葬儀は終わっていました。ただ、いきなり記憶が蘇った事と祖母の死のショックで涙が暫く止まらなかったせいか熱を出して寝込んでしまいましたけど。

 そして目が覚めると全てを思い出していました。

 私は『乙女ゲーム』という恋愛シミュレーションゲームの世界にいる事に。
 しかもヒロインである男爵令嬢エバ・キュリーの邪魔をするライバルキャラとして。
 ちなみに攻略対象の一人でもある王太子の婚約者でもありました。
 もっとも婚約破棄後に殺される運命のライバルキャラです。
 最悪です。
 ヒロインがどの攻略対象を選んでも、私は殺される運命みたいです。
 何故なら悪役令嬢役だから。

 こんな理不尽あります!?

 ヒロインが選ぶ相手によって殺されるパターンが違うなんて!!
 ある意味親切設計と言えなくもないかもしれませんが、余計なお世話ですよ!! 私は死ぬつもりなど毛頭ございません。
 そもそも私が生きる為にはどうすればいいのか考えた結果、結論は一つ。
 王太子殿下との婚約を破棄してしまえばよいのです!


 

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