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100年後
33.閑話2
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そのブレない枢機卿こと、ゴールド枢機卿は今、目の前にいる面々を見て梅干しを含んだようなしょっぱい顔をして眺めていた。
「顔が凄い事になってますよ、猊下」
「猊下と呼ぶな」
「では、なんと?」
「バンコ君でいいじゃないか」
「……それは銀行家の名前です」
「本人だ」
「……その名前はカモフラージュの一種なのです。外で間違って呼ばれたらどうなさるのです?」
「それもそうか」
「はい。少なくとも、猊下の正体をしる処では『ゴールド枢機卿猊下』でいてくださいませ」
「わかった」
変な処で素直だ。
金が絡んでいなければゴールド枢機卿は素直な良い子。恐らく、こういった一面があるため神殿は枢機卿を誤解している要因なんだろう。まぁ、正そうとは思わないが。
「ところで、フラン。何故、奴がココに居るんだ?」
「ビンチ枢機卿の事ですか?」
「そう!」
「レオと師弟関係を結んでいるからです」
「…………え?」
意外な答えが返ってきた。
大聖女の親友がビンチ枢機卿と師弟関係とは。何があった!?
「師弟関係と言いましても絵の方ですから」
合点がいきました。
ビンチ枢機卿も画家。
レオ殿に目を付けない筈がありません。何処からか、レオ殿の絵を見つけてここに辿りついたのでしょう。そういえば、数年前に彼女の嫁ぎ先の国が破門されたと聞きました。なるほど。ビンチ枢機卿が一枚嚙んでいましたか。納得です。
馬の合わない同僚がいつの間にか知人の師匠になっていた事に、ゴールド枢機卿は気に食わないのか面白く無さそうな表情を浮かべた。
「それよりも、今日は何か御用があってこちらへ来たのでは?」
「そうだ! すっかり忘れていた!フラン、イリスを貸してくれ!!」
「……はい?」
ゴールド枢機卿の言葉に大聖女は目を点にしていた。
枢機卿、説明をなさってください。
イリス様を貸せ、と言って大聖女が快く貸すはずがありません。
彼女は大聖女の姪。
しかも『聖女候補』にあたる方でもあります。
いえ、その前に彼女は聖王国の王女。
国の許可が必要になります。
「顔が凄い事になってますよ、猊下」
「猊下と呼ぶな」
「では、なんと?」
「バンコ君でいいじゃないか」
「……それは銀行家の名前です」
「本人だ」
「……その名前はカモフラージュの一種なのです。外で間違って呼ばれたらどうなさるのです?」
「それもそうか」
「はい。少なくとも、猊下の正体をしる処では『ゴールド枢機卿猊下』でいてくださいませ」
「わかった」
変な処で素直だ。
金が絡んでいなければゴールド枢機卿は素直な良い子。恐らく、こういった一面があるため神殿は枢機卿を誤解している要因なんだろう。まぁ、正そうとは思わないが。
「ところで、フラン。何故、奴がココに居るんだ?」
「ビンチ枢機卿の事ですか?」
「そう!」
「レオと師弟関係を結んでいるからです」
「…………え?」
意外な答えが返ってきた。
大聖女の親友がビンチ枢機卿と師弟関係とは。何があった!?
「師弟関係と言いましても絵の方ですから」
合点がいきました。
ビンチ枢機卿も画家。
レオ殿に目を付けない筈がありません。何処からか、レオ殿の絵を見つけてここに辿りついたのでしょう。そういえば、数年前に彼女の嫁ぎ先の国が破門されたと聞きました。なるほど。ビンチ枢機卿が一枚嚙んでいましたか。納得です。
馬の合わない同僚がいつの間にか知人の師匠になっていた事に、ゴールド枢機卿は気に食わないのか面白く無さそうな表情を浮かべた。
「それよりも、今日は何か御用があってこちらへ来たのでは?」
「そうだ! すっかり忘れていた!フラン、イリスを貸してくれ!!」
「……はい?」
ゴールド枢機卿の言葉に大聖女は目を点にしていた。
枢機卿、説明をなさってください。
イリス様を貸せ、と言って大聖女が快く貸すはずがありません。
彼女は大聖女の姪。
しかも『聖女候補』にあたる方でもあります。
いえ、その前に彼女は聖王国の王女。
国の許可が必要になります。
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