悪役令嬢の私は死にました

つくも茄子

文字の大きさ
41 / 85
100年後

39.怒り1

しおりを挟む

「オーホホホホホホッ!!!」

「……フラン」

「ホーホホホホホッ!!!」

「怖いよ……その笑い方」

「これが笑わずにはいられません!」

 何ですか!
 あの王太子は!!

「気持ちは分かるけどね。ちょっと落ち着きなよ」

「私は落ち着いていますわ!」

「…………いや……メチャクチャ怒ってる。怒り狂ってるのがよく分かるよ」

「当たり前です!イリスが侮辱されたんですよ?私の可愛い姪が!これで怒らない人間なんてこの世にはいません!」

「………………うん」

 引き気味に肯定されました。
 え?
 何故です?
 これは怒る場面でしょう!

 人を馬鹿にするのも大概にしろと王宮に怒鳴り込まないだけマシだと思って貰いたいくらいです!!

 イリスの状況。
 これは以前にもありました。
 ええ!私の時に!!
 まあ、私の場合は「死んだこと」にして逃げきりましたけどね!ええ!逃げの一択でした!そしてそれは全く間違っていなかった!!
 
 私の場合は婚約者とその浮気相手の接触がなかったので事なきを得たようなものです。そもそも「死人」に罪を擦り付ける事はできませんし、イリスよりも酷い状況だったので全く同じとは言えないでしょう。
 ですが!アホな婚約者に「僕ちゃん、真実の愛に目覚めちゃったんだ!だから婚約破棄する!これも愛のため」をされた被害者という点は同じです!!
 
 それも大勢の前で晒し者にされたのですよ!!?

 どんな嫌がらせですか?
 それとも新手の虐め?

 しかも浮気相手を連れて「許して欲しい」「認めて欲しい」とは何ですか?意味が解りません!
 
 自分達の立場を理解していないのでしょうか?
 それとも対等だとでも思っているのですか?

 御冗談を!!

 こちらが妥協しているんです!
 そこのところを解っているんでしょうね!?
 断腸の思いで、イリスをこの国に連れて来たんですよ?
 可愛い姪を嫁にやらなければならない悲しみを解っていない!!

 お兄様達が言うから仕方なく見送ったというのに。

 やはり極秘で訪れて正解でしたわ。
 イリスは優しいですからね。アホな男のアホな言い分を聞かなかった事にして婚約継続をしていたかもしれませんもの。
 
 一度ならず、二度までも……この国どうしてくれよう。



「まさか、あの国王の息子がアレだとはね。流石の僕もびっくりだよ」

「御両親に似なかったのですね」

「祖父母も立派な人達なんだけどね。彼だけ何でアレなのかな?」

「そんなこと知りません!」

 私の方が教えて欲しいくらいですわ。
 アホの血は時代を超えて受け継がれているとしか思えません。呪いのようなものですわね。

「枢機卿団はカンカンだよ。まぁ、当然だ。メンツを潰されたんだから」

「それはモンティーヌ聖王国も同じです!何故、二度も婚約破棄を宣言されなくてはならないのですか!?」

「イリスの場合はだよ」

「大して変わりません!」

 恥をかかされたのは同じですもの!
 ああ!だから反対したんです。こんな婚約なんて始めから無視すれば良かったのに。仏心を出した結果がコレです!!
 
 優しいイリスは「シャルル王太子は残念な方ですから」と苦笑しましたが、あんな連中を心配する必要などありません!

 あの王太子、恩を仇で返すとは許すまじ……。

 
 
しおりを挟む
感想 126

あなたにおすすめの小説

【12話完結】私はイジメられた側ですが。国のため、貴方のために王妃修行に努めていたら、婚約破棄を告げられ、友人に裏切られました。

西東友一
恋愛
国のため、貴方のため。 私は厳しい王妃修行に努めてまいりました。 それなのに第一王子である貴方が開いた舞踏会で、「この俺、次期国王である第一王子エドワード・ヴィクトールは伯爵令嬢のメリー・アナラシアと婚約破棄する」 と宣言されるなんて・・・

強制力がなくなった世界に残されたものは

りりん
ファンタジー
一人の令嬢が処刑によってこの世を去った 令嬢を虐げていた者達、処刑に狂喜乱舞した者達、そして最愛の娘であったはずの令嬢を冷たく切り捨てた家族達 世界の強制力が解けたその瞬間、その世界はどうなるのか その世界を狂わせたものは

存在感のない聖女が姿を消した後 [完]

風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは 永く仕えた国を捨てた。 何故って? それは新たに現れた聖女が ヒロインだったから。 ディアターナは いつの日からか新聖女と比べられ 人々の心が離れていった事を悟った。 もう私の役目は終わったわ… 神託を受けたディアターナは 手紙を残して消えた。 残された国は天災に見舞われ てしまった。 しかし聖女は戻る事はなかった。 ディアターナは西帝国にて 初代聖女のコリーアンナに出会い 運命を切り開いて 自分自身の幸せをみつけるのだった。

お嬢様はお亡くなりになりました。

豆狸
恋愛
「お嬢様は……十日前にお亡くなりになりました」 「な……なにを言っている?」

【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?

アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。 泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。 16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。 マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。 あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に… もう…我慢しなくても良いですよね? この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。 前作の登場人物達も多数登場する予定です。 マーテルリアのイラストを変更致しました。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

【完結】仲の良かったはずの婚約者に一年無視され続け、婚約解消を決意しましたが

ゆらゆらぎ
恋愛
エルヴィラ・ランヴァルドは第二王子アランの幼い頃からの婚約者である。仲睦まじいと評判だったふたりは、今では社交界でも有名な冷えきった仲となっていた。 定例であるはずの茶会もなく、婚約者の義務であるはずのファーストダンスも踊らない そんな日々が一年と続いたエルヴィラは遂に解消を決意するが──

【完結】そんなに好きなら、そっちへ行けば?

雨雲レーダー
恋愛
侯爵令嬢クラリスは、王太子ユリウスから一方的に婚約破棄を告げられる。 理由は、平民の美少女リナリアに心を奪われたから。 クラリスはただ微笑み、こう返す。 「そんなに好きなら、そっちへ行けば?」 そうして物語は終わる……はずだった。 けれど、ここからすべてが狂い始める。 *完結まで予約投稿済みです。 *1日3回更新(7時・12時・18時)

処理中です...