73 / 85
五十年前の「とある事件」
70.聖女候補1
カタリナとの出会いは五十年前にさかのぼる。
当時、小国同士の小競り合いが頻発していた。
それは国境付近の小競り合いから、やがては国を跨いだ戦争へと発展する。
その戦火の炎は二国の小国のみならず、近隣諸国にも飛び火した。
戦争の仲介役としてイリスを遣わした。
数少ない大聖女の一人で王女のイリスが、モンティーヌ聖教国の代表となれば、そうそう無闇に手出しはできない。
そう踏んでのことだった。
実際、それは成功した。
二国間の戦争は速やかに終結する。
これは私の読み通りだったのだけれど……。
「まさか聖女候補が虐げられていたなんて……。それも大聖女になれる逸材を……」
「単なる妬み嫉みの類じゃないことだけは確かだよ」
ゴールド枢機卿は苦い表情で言う。
私も頷いた。
戦争が終結したのは喜ばしい事だ。けれど、戦争が長引いたことによって、周辺国にも少なからず被害が出たのも事実だ。
その結果を私たちは重く受け止めていた。
「聖女候補の名前はカタリナ・グランテ。年齢は十八歳。旧姓はレニンストン。実家はレニンストン伯爵家で、一年前にグランテ辺境伯に嫁いでいる」
「グランテ辺境伯は確か、国境での戦闘に関わっていたわね」
「うん。グランテ辺境伯領は最前線で、カタリナ嬢はそこでの治癒者として派遣されていたと記録にあるよ」
「派遣?辺境伯夫人が?」
「そう。しかもタダ働き。僕の一番嫌いな言葉だ」
ゴールド枢機卿は、吐き捨てるように言った。
分かる。
しかも辺境伯夫人だから無償で働かされたらしい……。
あり得ない話しがココではまかり通っていたというのだから、開いた口が塞がらない。
「実家の伯爵家での扱いも酷いものだ。嫡出の彼女を使用人扱いなんだから」
「この報告書ではカタリナ嬢が跡取りでは?」
「そう。伯爵家の正当な後継者だよ。今、レニンストン伯爵を名乗っている父親は『伯爵代理』に過ぎない。いわゆる入婿だからね。カタリナ嬢の母親は彼女が十三歳の時に病死している。妻が死んで直ぐに再婚しているよ。連れ子同士の再婚ってことになっているけど怪しいよね。相手の女は結婚歴ないんだからさ。囲っていた愛人と再婚したってとこだろう。連れ子の女の子もその女との間に出来た子供とみて間違いない」
「……お家乗っ取りね」
「そういうこと。酷い話しだ」
淡々と語っているけれど、ゴールド枢機卿の怒りが滲み出ている。
私も同じ。
怒ってる。
だってこれだけじゃないんだもの。
よくもまぁここまで酷くできるものだと、怒りを通り越して呆れたわ。
当時、小国同士の小競り合いが頻発していた。
それは国境付近の小競り合いから、やがては国を跨いだ戦争へと発展する。
その戦火の炎は二国の小国のみならず、近隣諸国にも飛び火した。
戦争の仲介役としてイリスを遣わした。
数少ない大聖女の一人で王女のイリスが、モンティーヌ聖教国の代表となれば、そうそう無闇に手出しはできない。
そう踏んでのことだった。
実際、それは成功した。
二国間の戦争は速やかに終結する。
これは私の読み通りだったのだけれど……。
「まさか聖女候補が虐げられていたなんて……。それも大聖女になれる逸材を……」
「単なる妬み嫉みの類じゃないことだけは確かだよ」
ゴールド枢機卿は苦い表情で言う。
私も頷いた。
戦争が終結したのは喜ばしい事だ。けれど、戦争が長引いたことによって、周辺国にも少なからず被害が出たのも事実だ。
その結果を私たちは重く受け止めていた。
「聖女候補の名前はカタリナ・グランテ。年齢は十八歳。旧姓はレニンストン。実家はレニンストン伯爵家で、一年前にグランテ辺境伯に嫁いでいる」
「グランテ辺境伯は確か、国境での戦闘に関わっていたわね」
「うん。グランテ辺境伯領は最前線で、カタリナ嬢はそこでの治癒者として派遣されていたと記録にあるよ」
「派遣?辺境伯夫人が?」
「そう。しかもタダ働き。僕の一番嫌いな言葉だ」
ゴールド枢機卿は、吐き捨てるように言った。
分かる。
しかも辺境伯夫人だから無償で働かされたらしい……。
あり得ない話しがココではまかり通っていたというのだから、開いた口が塞がらない。
「実家の伯爵家での扱いも酷いものだ。嫡出の彼女を使用人扱いなんだから」
「この報告書ではカタリナ嬢が跡取りでは?」
「そう。伯爵家の正当な後継者だよ。今、レニンストン伯爵を名乗っている父親は『伯爵代理』に過ぎない。いわゆる入婿だからね。カタリナ嬢の母親は彼女が十三歳の時に病死している。妻が死んで直ぐに再婚しているよ。連れ子同士の再婚ってことになっているけど怪しいよね。相手の女は結婚歴ないんだからさ。囲っていた愛人と再婚したってとこだろう。連れ子の女の子もその女との間に出来た子供とみて間違いない」
「……お家乗っ取りね」
「そういうこと。酷い話しだ」
淡々と語っているけれど、ゴールド枢機卿の怒りが滲み出ている。
私も同じ。
怒ってる。
だってこれだけじゃないんだもの。
よくもまぁここまで酷くできるものだと、怒りを通り越して呆れたわ。
あなたにおすすめの小説
文句を言わない婚約者は、俺の愛する幼馴染みを許していなかった【完結保証】
星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
幼馴染を優先しても、婚約者アウローラは何も言わない。だから、これからも幼馴染みとイチャイチャできる──
侯爵令息トリスタンは、そんな甘い幻想を信じていた。
だが婿入りした瞬間、彼の“軽んじた態度”はすべて清算される。
アウローラは冷徹に、トリスタンの傲慢と欲望を1つずつ暴き、労働と屈辱を与える。
そして最後に残ったのは、誰にも必要とされない現実だけ。
「どうして……俺は、こんなにも愚かだったんだ」
これは愛を勘違いし、身分を過信し、自分の価値を見誤った男の終焉を描くダークドラマ。
⚠️ 本作は AI の生成した文章を一部に使っています。
4/1「エステルに対する殺意」の内容を一部変更しました。
【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?
アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。
泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。
16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。
マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。
あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に…
もう…我慢しなくても良いですよね?
この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。
前作の登場人物達も多数登場する予定です。
マーテルリアのイラストを変更致しました。
私は善意に殺された・完結
まほりろ
恋愛
筆頭公爵家の娘である私が、母親は身分が低い王太子殿下の後ろ盾になるため、彼の婚約者になるのは自然な流れだった。
誰もが私が王太子妃になると信じて疑わなかった。
私も殿下と婚約してから一度も、彼との結婚を疑ったことはない。
だが殿下が病に倒れ、その治療のため異世界から聖女が召喚され二人が愛し合ったことで……全ての運命が狂い出す。
どなたにも悪意はなかった……私が不運な星の下に生まれた……ただそれだけ。
※無断転載を禁止します。
※朗読動画の無断配信も禁止します。
※他サイトにも投稿中。
※表紙素材はあぐりりんこ様よりお借りしております。
「Copyright(C)2022-九頭竜坂まほろん」
※小説家になろうにて2022年11月19日昼、日間異世界恋愛ランキング38位、総合59位まで上がった作品です!
強制力がなくなった世界に残されたものは
りりん
ファンタジー
一人の令嬢が処刑によってこの世を去った
令嬢を虐げていた者達、処刑に狂喜乱舞した者達、そして最愛の娘であったはずの令嬢を冷たく切り捨てた家族達
世界の強制力が解けたその瞬間、その世界はどうなるのか
その世界を狂わせたものは
悪役令嬢は手加減無しに復讐する
田舎の沼
恋愛
公爵令嬢イザベラ・フォックストーンは、王太子アレクサンドルの婚約者として完璧な人生を送っていたはずだった。しかし、華やかな誕生日パーティーで突然の婚約破棄を宣告される。
理由は、聖女の力を持つ男爵令嬢エマ・リンドンへの愛。イザベラは「嫉妬深く陰険な悪役令嬢」として糾弾され、名誉を失う。
婚約破棄をされたことで彼女の心の中で何かが弾けた。彼女の心に燃え上がるのは、容赦のない復讐の炎。フォックストーン家の膨大なネットワークと経済力を武器に、裏切り者たちを次々と追い詰めていく。アレクサンドルとエマの秘密を暴き、貴族社会を揺るがす陰謀を巡らせ、手加減なしの報復を繰り広げる。
お望み通り、消えてさしあげますわ
梨丸
恋愛
一国の次期王妃と言われていた子爵令嬢アマリリス。
王太子との結婚前夜、彼女は自ら火を放ち、死んだ。
国民達は彼女の死を特に気にもしなかった。それどころか、彼女の死を喜ぶ者もいた。彼女の有していた聖女の力は大したものではなかったし、優れているのは外見だけの“役立たずの聖女”だと噂されるほどだったから。
彼女の死後、すぐさま後釜として皆に好かれていた聖女が次期王妃に召し上げられた。
この国はより豊かになる、皆はそう確信した。
だが、“役立たずの聖女”アマリリスの死後──着実に崩壊は始まっていた。
※投稿してから、誤字脱字などの修正やわかりにくい部分の補足をすることがあります。(話の筋は変わらないのでご安心ください。)
※この調子だと短編になりそうです。
あなたの破滅のはじまり
nanahi
恋愛
家同士の契約で結婚した私。夫は男爵令嬢を愛人にし、私の事は放ったらかし。でも我慢も今日まで。あなたとの婚姻契約は今日で終わるのですから。
え?離縁をやめる?今更何を慌てているのです?契約条件に目を通していなかったんですか?
あなたを待っているのは破滅ですよ。
※Ep.2 追加しました。
マルグリッタの魔女の血を色濃く受け継ぐ娘ヴィヴィアン。そんなヴィヴィアンの元に隣の大陸の王ジェハスより婚姻の話が舞い込む。
子爵の五男アレクに淡い恋心を抱くも、行き違いから失恋したと思い込んでいるヴィヴィアン。アレクのことが忘れられずにいたヴィヴィアンは婚姻話を断るつもりだったが、王命により強制的に婚姻させられてしまう。
だが、ジェハス王はゴールダー家の巨万の富が目的だった。王妃として迎えられたヴィヴィアンだったが、お飾りの王妃として扱われて冷遇される。しかも、ジェハスには側妃がすでに5人もいた。
【完結】私を捨てた皆様、どうぞその選択を後悔なさってください 〜婚約破棄された令嬢の、遅すぎる謝罪はお断りです〜
くろねこ
恋愛
王太子の婚約者として尽くしてきた公爵令嬢エリシアは、ある日突然、身に覚えのない罪で断罪され婚約破棄を言い渡される。
味方だと思っていた家族も友人も、誰一人として彼女を庇わなかった。
――けれど、彼らは知らなかった。
彼女こそが国を支えていた“本当の功労者”だったことを。
すべてを失ったはずの令嬢が選んだのは、
復讐ではなく「関わらない」という選択。
だがその選択こそが、彼らにとって最も残酷な“ざまぁ”の始まりだった。