悪役令嬢の私は死にました

つくも茄子

文字の大きさ
81 / 85
五十年前の「とある事件」

78.辺境伯視点2

しおりを挟む
「陛下はお前を含めた罪人全員の公開処刑を検討していた」

「……え?」

「安心しろ。カタリナ嬢を虐げていた者が多過ぎて現実的ではないと聖教国から待ったがかかった。そんなことされても迷惑なだけだとな。自分達の罪悪感を誤魔化す為に処刑したいのかとも言われたよ。カタリナ嬢も処罰を望んでいないと聞いて取りやめになった」

「……」

「聖教国はカタリナ嬢を我が国に戻すことはないと言ってきた。聖女を貶めて使い捨ての駒にされてはたまらないとな。分かるか?あの聖教国が宣言したんだ。周辺国だけじゃない。全ての国に我が国が何をしたのかを知らしめたんだ。この国は信用できないと。国際社会から居場所を失った。それがどういう意味を持つか分かるか?外交に支障がきたすだろう。貿易だって足元を見られる。我が国は一気に窮地に陥った。ああ、だが一つだけ良いことがあるぞ。この国を欲しがる輩がいなくなった点だ。戦争して分捕るには価値のない国だ。地政学的にも手に入れた方が良い国だってあるだろうが、その国からさえ『価値がないどころかマイナスにしかならない国』のレッテルを貼られた。身売り同然の属国にすらなれない。友好国からも疎まれ始めている。そんな国に誰が投資する?誰が味方する?」

「あ、ああ……あああ」

「グランテ辺境伯、喜べ。この国は未来永劫、『愚者の国』として各国の嘲笑の的になるだろう。その一端を担った我々を人々は忘れないだろう。だが、それでも私はお前を処刑しない。民を守るのが王族の使命だ。お前もこの国の貴族なら共に手を携えようではないか」

 王太子殿下は私の肩を叩くと去っていった。
 後に残された私は……。

「うわああああああああ!」

 頭を抱えて絶叫したのだった。
 閉ざされた未来の中を彷徨い続ける。
 死ぬことすら許されない。

 生きて償え――と。

 それがどれだけ過酷で辛いことか。
 私は想像し恐怖に怯え、やがて絶望した。

 誰か……私を……私達を助けてくれ…………。

しおりを挟む
感想 126

あなたにおすすめの小説

【12話完結】私はイジメられた側ですが。国のため、貴方のために王妃修行に努めていたら、婚約破棄を告げられ、友人に裏切られました。

西東友一
恋愛
国のため、貴方のため。 私は厳しい王妃修行に努めてまいりました。 それなのに第一王子である貴方が開いた舞踏会で、「この俺、次期国王である第一王子エドワード・ヴィクトールは伯爵令嬢のメリー・アナラシアと婚約破棄する」 と宣言されるなんて・・・

存在感のない聖女が姿を消した後 [完]

風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは 永く仕えた国を捨てた。 何故って? それは新たに現れた聖女が ヒロインだったから。 ディアターナは いつの日からか新聖女と比べられ 人々の心が離れていった事を悟った。 もう私の役目は終わったわ… 神託を受けたディアターナは 手紙を残して消えた。 残された国は天災に見舞われ てしまった。 しかし聖女は戻る事はなかった。 ディアターナは西帝国にて 初代聖女のコリーアンナに出会い 運命を切り開いて 自分自身の幸せをみつけるのだった。

強制力がなくなった世界に残されたものは

りりん
ファンタジー
一人の令嬢が処刑によってこの世を去った 令嬢を虐げていた者達、処刑に狂喜乱舞した者達、そして最愛の娘であったはずの令嬢を冷たく切り捨てた家族達 世界の強制力が解けたその瞬間、その世界はどうなるのか その世界を狂わせたものは

お嬢様はお亡くなりになりました。

豆狸
恋愛
「お嬢様は……十日前にお亡くなりになりました」 「な……なにを言っている?」

【完結】仲の良かったはずの婚約者に一年無視され続け、婚約解消を決意しましたが

ゆらゆらぎ
恋愛
エルヴィラ・ランヴァルドは第二王子アランの幼い頃からの婚約者である。仲睦まじいと評判だったふたりは、今では社交界でも有名な冷えきった仲となっていた。 定例であるはずの茶会もなく、婚約者の義務であるはずのファーストダンスも踊らない そんな日々が一年と続いたエルヴィラは遂に解消を決意するが──

【完結】そんなに好きなら、そっちへ行けば?

雨雲レーダー
恋愛
侯爵令嬢クラリスは、王太子ユリウスから一方的に婚約破棄を告げられる。 理由は、平民の美少女リナリアに心を奪われたから。 クラリスはただ微笑み、こう返す。 「そんなに好きなら、そっちへ行けば?」 そうして物語は終わる……はずだった。 けれど、ここからすべてが狂い始める。 *完結まで予約投稿済みです。 *1日3回更新(7時・12時・18時)

【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?

アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。 泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。 16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。 マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。 あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に… もう…我慢しなくても良いですよね? この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。 前作の登場人物達も多数登場する予定です。 マーテルリアのイラストを変更致しました。

いまさら謝罪など

あかね
ファンタジー
殿下。謝罪したところでもう遅いのです。

処理中です...