71 / 82
第二章
70.包青side
しおりを挟む
「淑妃の宮で起こった火事の発生場所は妃の寝室近くでした。すでに炎は消し止められましたが出火原因は現在も不明とのこと。なお火災に巻き込まれた女官及び侍女はいない模様です。ただ、淑妃付の下女の証言によりますと、昨日の昼過ぎに突然、下女の1人が倒れ昏倒したため慌てて他の下女と共に医局へと運ばれ間もなく亡くなったそうです」
えらいことになった。
どう考えても狙いは淑妃だ。
正確には淑妃の胎の子だろうが……。
「はぁ~……次から次へと……放火犯も分からん、被害者側の下女が亡くなる……どうなっているんだ、まったく」
「犯人の目撃情報も上がってきていませんが、面白い事が分かりました」
「なんだ?」
「亡くなった下女は数日前に貴妃様からの紹介状を持って配属されたばかりの下女でした」
なんとなく嫌な予感しかしない。
オレの眉間にしわが寄っているのをみて高力は楽しげに笑った。こいつの本性は間違いなく性悪だ!間違いない!!
「それでその紹介状を書いた貴妃は何て言っているんだ? お前なら知っているんだろう」
高力の言葉を待つことなく、オレは次の書類に目を通す。今度はなんだ……また放火事件かよ。……いや待て。これは……。
「……マジか……」
この書類には『賢妃の関与が疑わしい』と書かれている。
すぐに別の報告書を見るがそちらには『賢妃、書の達人なり。他者の文字を真似るのも容易く、特に文字の書き方は秀逸』とあった。
「まさかとは思うが……賢妃が……?」
俄かには信じられねぇ。
鄧賢妃は四夫人とはいえ、他の妃と比べると影が薄い。薄すぎる。……こう言っちゃあなんだが、賢妃は存在自体が気薄だ。大人しいとは聞いているし、実際、人見知りが激しい質だと言う事は実証済みだ。オレや高力だけじゃねぇ、知らない女官との会話が成り立たない程だ。いや、あれは場が持たないと言うべきだろうな……。とにかく、大人し過ぎるほど大人しい妃だ。その分、実家から連れてきた侍女が囲い込んでいる。
「あの賢妃が御大層な事はできないと思うが……う~~ん……まぁ、女は分からんからな……」
どんなに清らかな女子でも夜叉に変えちまうのが後宮だ。賢妃の腹の内なんか誰にも分からない。オレの言葉に高力は複雑な表情で首を振ると静かに口を開いた。
「いいえ。恐らくそれは無いでしょう。そもそも『書』の達人だからと言って犯人と決めつけることはできません。なにしろ、随分とあからさまですからね。疑ってくれと言っているようなものです」
「ムチャクチャ怪しいが……白ってことか?」
「どちらかと言うと灰色です。本人が手を出していなくとも周りが勝手に暴走する場合もありますからね」
「……ああ」
高力に言われてなんだか納得した。
通常、実家からの侍女は少数だ。それを賢妃は倍以上連れてきている。「極度のあがり症」と言う名目でな。
「罠でも仕掛けて見るか……」
ポツリと零した一言に高力は目を細めていた。
えらいことになった。
どう考えても狙いは淑妃だ。
正確には淑妃の胎の子だろうが……。
「はぁ~……次から次へと……放火犯も分からん、被害者側の下女が亡くなる……どうなっているんだ、まったく」
「犯人の目撃情報も上がってきていませんが、面白い事が分かりました」
「なんだ?」
「亡くなった下女は数日前に貴妃様からの紹介状を持って配属されたばかりの下女でした」
なんとなく嫌な予感しかしない。
オレの眉間にしわが寄っているのをみて高力は楽しげに笑った。こいつの本性は間違いなく性悪だ!間違いない!!
「それでその紹介状を書いた貴妃は何て言っているんだ? お前なら知っているんだろう」
高力の言葉を待つことなく、オレは次の書類に目を通す。今度はなんだ……また放火事件かよ。……いや待て。これは……。
「……マジか……」
この書類には『賢妃の関与が疑わしい』と書かれている。
すぐに別の報告書を見るがそちらには『賢妃、書の達人なり。他者の文字を真似るのも容易く、特に文字の書き方は秀逸』とあった。
「まさかとは思うが……賢妃が……?」
俄かには信じられねぇ。
鄧賢妃は四夫人とはいえ、他の妃と比べると影が薄い。薄すぎる。……こう言っちゃあなんだが、賢妃は存在自体が気薄だ。大人しいとは聞いているし、実際、人見知りが激しい質だと言う事は実証済みだ。オレや高力だけじゃねぇ、知らない女官との会話が成り立たない程だ。いや、あれは場が持たないと言うべきだろうな……。とにかく、大人し過ぎるほど大人しい妃だ。その分、実家から連れてきた侍女が囲い込んでいる。
「あの賢妃が御大層な事はできないと思うが……う~~ん……まぁ、女は分からんからな……」
どんなに清らかな女子でも夜叉に変えちまうのが後宮だ。賢妃の腹の内なんか誰にも分からない。オレの言葉に高力は複雑な表情で首を振ると静かに口を開いた。
「いいえ。恐らくそれは無いでしょう。そもそも『書』の達人だからと言って犯人と決めつけることはできません。なにしろ、随分とあからさまですからね。疑ってくれと言っているようなものです」
「ムチャクチャ怪しいが……白ってことか?」
「どちらかと言うと灰色です。本人が手を出していなくとも周りが勝手に暴走する場合もありますからね」
「……ああ」
高力に言われてなんだか納得した。
通常、実家からの侍女は少数だ。それを賢妃は倍以上連れてきている。「極度のあがり症」と言う名目でな。
「罠でも仕掛けて見るか……」
ポツリと零した一言に高力は目を細めていた。
1
あなたにおすすめの小説
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
裏切りの代償
中岡 始
キャラ文芸
かつて夫と共に立ち上げたベンチャー企業「ネクサスラボ」。奏は結婚を機に経営の第一線を退き、専業主婦として家庭を支えてきた。しかし、平穏だった生活は夫・尚紀の裏切りによって一変する。彼の部下であり不倫相手の優美が、会社を混乱に陥れつつあったのだ。
尚紀の冷たい態度と優美の挑発に苦しむ中、奏は再び経営者としての力を取り戻す決意をする。裏切りの証拠を集め、かつての仲間や信頼できる協力者たちと連携しながら、会社を立て直すための計画を進める奏。だが、それは尚紀と優美の野望を徹底的に打ち砕く覚悟でもあった。
取締役会での対決、揺れる社内外の信頼、そして壊れた夫婦の絆の果てに待つのは――。
自分の誇りと未来を取り戻すため、すべてを賭けて挑む奏の闘い。復讐の果てに見える新たな希望と、繊細な人間ドラマが交錯する物語がここに。
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
【完結】留学先から戻って来た婚約者に存在を忘れられていました
山葵
恋愛
国王陛下の命により帝国に留学していた王太子に付いて行っていた婚約者のレイモンド様が帰国された。
王家主催で王太子達の帰国パーティーが執り行われる事が決まる。
レイモンド様の婚約者の私も勿論、従兄にエスコートされ出席させて頂きますわ。
3年ぶりに見るレイモンド様は、幼さもすっかり消え、美丈夫になっておりました。
将来の宰相の座も約束されており、婚約者の私も鼻高々ですわ!
「レイモンド様、お帰りなさいませ。留学中は、1度もお戻りにならず、便りも来ずで心配しておりましたのよ。元気そうで何よりで御座います」
ん?誰だっけ?みたいな顔をレイモンド様がされている?
婚約し顔を合わせでしか会っていませんけれど、まさか私を忘れているとかでは無いですよね!?
夫が妹を第二夫人に迎えたので、英雄の妻の座を捨てます。
Nao*
恋愛
夫が英雄の称号を授かり、私は英雄の妻となった。
そして英雄は、何でも一つ願いを叶える事が出来る。
そんな夫が願ったのは、私の妹を第二夫人に迎えると言う信じられないものだった。
これまで夫の為に祈りを捧げて来たと言うのに、私は彼に手酷く裏切られたのだ──。
(1万字以上と少し長いので、短編集とは別にしてあります。)
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
冷遇妃マリアベルの監視報告書
Mag_Mel
ファンタジー
シルフィード王国に敗戦国ソラリから献上されたのは、"太陽の姫"と讃えられた妹ではなく、悪女と噂される姉、マリアベル。
第一王子の四番目の妃として迎えられた彼女は、王宮の片隅に追いやられ、嘲笑と陰湿な仕打ちに晒され続けていた。
そんな折、「王家の影」は第三王子セドリックよりマリアベルの監視業務を命じられる。年若い影が記す報告書には、ただ静かに耐え続け、死を待つかのように振舞うひとりの女の姿があった。
王位継承争いと策謀が渦巻く王宮で、冷遇妃の運命は思わぬ方向へと狂い始める――。
(小説家になろう様にも投稿しています)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる