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2.夫の浮気2
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どこにでも保守的な人間というのはいる。
それは貴族の中にも当然いるわけで……。
女が当主になる事をよく思わない人間がいる事は承知していた。だから、夫には結婚する際に伝えたし、結婚してからも伝え続けた。自分でも言い過ぎかな?と思うくらいに。それと言うのも『入婿』の意味を理解していない男性というのは割合多い。婚約期間中は理解していても、結婚したらそれを忘れてしまうのか、はたまた自分の都合の良いように解釈してしてしまうのか。本当に謎としか言いようのないけれど『自分が当主』と思い込んでしまう傾向が強いみたいだった。
夫は何度も「大丈夫だよ」「解っているよ」「気にしてない」と言ってくれたけど……どうやらそれは嘘だったみたい。いいえ、嘘と言うのは少し語弊があるわね。彼の中での私は『夫を愛し尽くす妻』になっていたのだから。
ええ、愛していましたとも。
妻として可能な限り尽くしました。
仕事ができなくても叱る事はなかった。
仕事自体しなくなっても怒らなかった。
元々、子爵家の仕事は結婚前から私がしていた事だし、それにド素人が下手に関わっても損害を出すだけだと理解していたから口を出さない事は寧ろ良かった。
でもねぇ、何事も限度ってものがあると思うのよ。
特に今回の件に関してはね。
夫は浮気をしていた。しかも複数人同時に! これには流石に呆れたわ。怒りを通り越して笑ってしまったくらい。だってそうでしょう? 私以外の女を抱いておきながら「君だけだよ」なんて言うんだもの。私が何も知らないから丸め込めると思っているのかしら?それならまだ「その女だけだ」と言われた方がまだマシ。
それにしても、夫がここまで馬鹿だとは思ってなかった。
「僕が浮気なんてする訳ないじゃないか!!」
「まぁ、さようですか。でもね、私の調べた結果はとても残念なものだったわ」
にこやかに微笑んで証拠の品を机の上に並べる。
そこには複数の女性との情事の証拠があった。
「ち、違う!!これは何かの間違だ!!!」
「何かしら?」
「そうだ、きっと誰かが僕を陥れるためにやったに違いない!!」
「そう……。じゃあ、その証拠を掴ませた相手を逆に追い詰めるしかないわね」
にっこりと笑ってそう言えば、夫は顔を青くさせて黙り込んだ。
夫の弱みは分かっている。
この男は自分に甘い。
私が怒ればすぐに謝ってくるし、機嫌を取ろうと必死になってくる。
「まだまだ証拠はあるから安心してね」
「…………」
「あなたがそんな事をするような人だったとは思わなかったわ」
「アザミ……」
「私達の関係もこれまでね」
「そ、そんな……許してくれ。つい、出来心で……」
出来心で複数人と関係を持つ?これなら娼館に通っている方がよっぽどマシだわ。言い訳も出来ない程に爛れているじゃないの。
「愛してるのは君だけだ!」
「そう、ありがとう。だけど、もう無理だわ。さようなら」
泣きつく夫を冷たく突き放せば、夫は「こんなはずではなかった」と言いたげな顔で項垂れていた。
それからはトントン拍子に話は進んだ。
夫とは離婚。
当然だけどね。
それは貴族の中にも当然いるわけで……。
女が当主になる事をよく思わない人間がいる事は承知していた。だから、夫には結婚する際に伝えたし、結婚してからも伝え続けた。自分でも言い過ぎかな?と思うくらいに。それと言うのも『入婿』の意味を理解していない男性というのは割合多い。婚約期間中は理解していても、結婚したらそれを忘れてしまうのか、はたまた自分の都合の良いように解釈してしてしまうのか。本当に謎としか言いようのないけれど『自分が当主』と思い込んでしまう傾向が強いみたいだった。
夫は何度も「大丈夫だよ」「解っているよ」「気にしてない」と言ってくれたけど……どうやらそれは嘘だったみたい。いいえ、嘘と言うのは少し語弊があるわね。彼の中での私は『夫を愛し尽くす妻』になっていたのだから。
ええ、愛していましたとも。
妻として可能な限り尽くしました。
仕事ができなくても叱る事はなかった。
仕事自体しなくなっても怒らなかった。
元々、子爵家の仕事は結婚前から私がしていた事だし、それにド素人が下手に関わっても損害を出すだけだと理解していたから口を出さない事は寧ろ良かった。
でもねぇ、何事も限度ってものがあると思うのよ。
特に今回の件に関してはね。
夫は浮気をしていた。しかも複数人同時に! これには流石に呆れたわ。怒りを通り越して笑ってしまったくらい。だってそうでしょう? 私以外の女を抱いておきながら「君だけだよ」なんて言うんだもの。私が何も知らないから丸め込めると思っているのかしら?それならまだ「その女だけだ」と言われた方がまだマシ。
それにしても、夫がここまで馬鹿だとは思ってなかった。
「僕が浮気なんてする訳ないじゃないか!!」
「まぁ、さようですか。でもね、私の調べた結果はとても残念なものだったわ」
にこやかに微笑んで証拠の品を机の上に並べる。
そこには複数の女性との情事の証拠があった。
「ち、違う!!これは何かの間違だ!!!」
「何かしら?」
「そうだ、きっと誰かが僕を陥れるためにやったに違いない!!」
「そう……。じゃあ、その証拠を掴ませた相手を逆に追い詰めるしかないわね」
にっこりと笑ってそう言えば、夫は顔を青くさせて黙り込んだ。
夫の弱みは分かっている。
この男は自分に甘い。
私が怒ればすぐに謝ってくるし、機嫌を取ろうと必死になってくる。
「まだまだ証拠はあるから安心してね」
「…………」
「あなたがそんな事をするような人だったとは思わなかったわ」
「アザミ……」
「私達の関係もこれまでね」
「そ、そんな……許してくれ。つい、出来心で……」
出来心で複数人と関係を持つ?これなら娼館に通っている方がよっぽどマシだわ。言い訳も出来ない程に爛れているじゃないの。
「愛してるのは君だけだ!」
「そう、ありがとう。だけど、もう無理だわ。さようなら」
泣きつく夫を冷たく突き放せば、夫は「こんなはずではなかった」と言いたげな顔で項垂れていた。
それからはトントン拍子に話は進んだ。
夫とは離婚。
当然だけどね。
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