気付けよ

凛子

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日曜日の朝、俺は樹音を家まで迎えに行くことにした。
俺が着く前に樹音が家を出てしまわないかと焦り、駅から小走りになっている自分に気付いて笑ってしまう。

玄関ドアから顔を出した樹音に「現地集合でいいって言ったじゃん」と言われてしまったが、適当に言い訳した。

いつもより樹音の化粧が濃いような気がするのは、俺があんなことを言ったからだろうか。
俺は樹音のスッピンも知っている。高校時代の樹音を知っているからだ。化粧なんかしなくても十分可愛いのに。
勿論そんなことは言わねぇが。

スニーカーを履いて玄関から出てきた樹音を見て、俺は驚いた。

「何お前……合わせた? ペアルックみてぇじゃん」
「え? あぁ、じゃあ着替えようか?」
「な、何でだよ。ペアルックみてぇでいいじゃんってことだよ」
「あ、そういうこと」

まるで打ち合わせでもしたかのように、俺と樹音のファッションテイストとカラーが一致していた。
それだけのことなのに、にやけてしまいそうになる。

「じゃあ行こうか」と手を差し出してみると、樹音は今まで見せたことのねぇ顔をした。
「何照れてんだよ」と、それがたいしたことでもねぇかのように言って樹音の手を掴んだが、勿論手を繋ぐのは初めてで、気付かれるんじゃねぇかと思うくらい、俺の心臓はバクバクしていた。

そして、俺が掴んでいた樹音の手は徐々に形を変えて、駅に着いた頃には恋人繋ぎになっていた。

端から見れば、俺と樹音は仲のいいカップルだろう。

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