気付けよ

凛子

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行き先は誰が決めたのかと、電車の中で樹音が聞いてきた。
消去法で樹音が苦手とする場所を除外して決めたつもりだったのだが、勝手に決めたことが気に入らなかったのだろうか。

樹音とは同じクラスになった高三からの付き合いだから二年ちょっとになるが、仲が良すぎるせいか、友達以上の関係には進展しねぇ……というより、この関係が壊れてしまうのを恐れて、俺が気持ちを伝えられねぇだけだ。

チャンスはあった。
高校の卒業式を間近に控えていたある日、彼氏と別れたことを樹音から聞かされた俺は、ベソをかいている樹音をカラオケに誘った。まさに絶好のチャンスだった。
二人きりの個室で甘いラブソングでも歌えば、弱っている樹音が寄りかかってきたかもしれねぇが、それは俺のプライドが許さなかった。

「俺が毎日遊んでやるから安心しろ」と樹音の肩を叩いて笑い飛ばし、バラードではなく、ぶち上げソングで盛り上げた。
歌いながらかなり後悔していたが、別れ際に見せた樹音の笑顔でチャラになった。

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