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第二章―魔法国家フォルトゥナ 『魔導師に潜む闇』
26-3.情報共有
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「貴方が構わないというのであればこちらも一々詳細に語るつもりもないわ」
クリスティーナはエリアスが倒れてからの出来事を大まかに説明する。
自分が皇太子の婚約者である姉への暗殺未遂で王都を追放されていること。表向きはボーマン伯爵領にて監視付きの生活を送っていることになっていることなど。
「一先ず、クリスティーナ・レディングがこのように国を離れて旅に出ているという事実は本来存在しないものだということを肝に銘じておいて頂戴」
「……はい」
エリアスがこれらの説明に対し驚いたように目を丸くした様を見たところ、やはり本人が話していた通り殆ど何も知らされていないのだろう。しかし彼は自身が抱いただろう疑問を吐き出すことはなくただ一言、短く返事をしただけであった。
これも先程本人が告げた通り。彼は本当に自身から主人に対して何かを言及するつもりはないらしい。
本人が事の顛末を詳細に知りたがっているわけでないのなら説明の手間も省けるというもの。口下手なクリスティーナにとってもそちらの方がありがたかった。
それに加え、現在の職務を引き受けた理由に対し変に主人へ諂うのではなく自身の立場の為であるという旨の彼の発言。これは見方によれば忠義がないものとして捉えられる一方で、一定の信頼を寄せるに値するものであるとクリスティーナは認識した。
上辺だけの言葉よりも自身の利益の為だという言葉の方が何倍も信用できる。クリスティーナは彼をそのように評価した。
「聖女の能力を私が持っているという点についても勿論他言無用よ。……それから」
一先ずクリスティーナが置かれている立場について、最低限の説明はした。
他に共有しておくべきことがあるとすれば、と彼女はリオへ視線を移す。
ここ一週間の内に魔物からも人からも襲撃を受けたということを考えれば、今後も武力を行使して対抗せざる得ない状況に陥ることは想像に難くない。
その際、リオの不死身という特殊な体質について理解しているか否かによってエリアスの対応の仕方が変わる可能性についてクリスティーナは吟味していた。
(少なくとも精神的負担が軽減されるのは間違いないわ……)
リオが死ぬ度に半泣きになる騎士の姿をクリスティーナは思い出していた。
今後リオが倒れる度に驚かれ、後れを取られる訳にもいかない。早い内に打ち明けておくべきだろう。
しかし同時に、彼女の胸の内には気が進まない理由も存在していた。
「いいえ、何でもないわ」
(……先に本人に話を通しておくのが筋というものね)
クリスティーナはエリアスが倒れてからの出来事を大まかに説明する。
自分が皇太子の婚約者である姉への暗殺未遂で王都を追放されていること。表向きはボーマン伯爵領にて監視付きの生活を送っていることになっていることなど。
「一先ず、クリスティーナ・レディングがこのように国を離れて旅に出ているという事実は本来存在しないものだということを肝に銘じておいて頂戴」
「……はい」
エリアスがこれらの説明に対し驚いたように目を丸くした様を見たところ、やはり本人が話していた通り殆ど何も知らされていないのだろう。しかし彼は自身が抱いただろう疑問を吐き出すことはなくただ一言、短く返事をしただけであった。
これも先程本人が告げた通り。彼は本当に自身から主人に対して何かを言及するつもりはないらしい。
本人が事の顛末を詳細に知りたがっているわけでないのなら説明の手間も省けるというもの。口下手なクリスティーナにとってもそちらの方がありがたかった。
それに加え、現在の職務を引き受けた理由に対し変に主人へ諂うのではなく自身の立場の為であるという旨の彼の発言。これは見方によれば忠義がないものとして捉えられる一方で、一定の信頼を寄せるに値するものであるとクリスティーナは認識した。
上辺だけの言葉よりも自身の利益の為だという言葉の方が何倍も信用できる。クリスティーナは彼をそのように評価した。
「聖女の能力を私が持っているという点についても勿論他言無用よ。……それから」
一先ずクリスティーナが置かれている立場について、最低限の説明はした。
他に共有しておくべきことがあるとすれば、と彼女はリオへ視線を移す。
ここ一週間の内に魔物からも人からも襲撃を受けたということを考えれば、今後も武力を行使して対抗せざる得ない状況に陥ることは想像に難くない。
その際、リオの不死身という特殊な体質について理解しているか否かによってエリアスの対応の仕方が変わる可能性についてクリスティーナは吟味していた。
(少なくとも精神的負担が軽減されるのは間違いないわ……)
リオが死ぬ度に半泣きになる騎士の姿をクリスティーナは思い出していた。
今後リオが倒れる度に驚かれ、後れを取られる訳にもいかない。早い内に打ち明けておくべきだろう。
しかし同時に、彼女の胸の内には気が進まない理由も存在していた。
「いいえ、何でもないわ」
(……先に本人に話を通しておくのが筋というものね)
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