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第二章―魔法国家フォルトゥナ 『魔導師に潜む闇』
59-2.周章狼狽
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(あれね)
「何とかなりそう?」
「いや、足を止めてから動くまでの時間を考えると止まるのは無理かなって感じです」
「そう」
自分を抱えているエリアスに問いかけると、首が横に振られる。
クリスティーナはそれに小さく頷くと迫る鎧を一瞥した。
「なら、私が何とかするわ。貴方はそのまま走って頂戴」
「了解です」
道の脇に飾られた鎧。それが視界から外れることのないようしっかりと注視しながらクリスティーナは機会を見計らう。
一方でノアはオリヴィエにも何やら指示を出しているようだった。
エリアスは指示通り一切足を緩めることなく突き進み、二人は鎧の横を通過する。
それが自分達の真横へとやってきた瞬間。クリスティーナは左隣の照明を睨みつけた。
(――今)
「アイス・スピア」
短い詠唱が彼女の薄い唇から紡がれる。
それを合図に照明周辺を取り囲んだのは五つの氷の槍だ。それは件の照明へ降り注いだ。
次々と容赦なく体当たりしては砕けて消える氷槍。
直後、クリスティーナが感じたのは浮遊感だ。
数秒程時が停まったのかと錯覚する。しかしすぐさま始まった自由落下によってその誤認は正された。
エリアスの足場が突如として消え、二人は穴の奥底へと落ちていく。
「おあああああっ!?」
予想外の事態に頭が真っ白になり、声一つ出せないクリスティーナ。一方でエリアスは二人分の声量で悲鳴を上げた。
情けなく悲鳴を上げながらも騎士としての役目を放棄するつもりはないようで、彼の腕はしっかりとクリスティーナを抱き留めていた。
幸いにも底が見えないほど深いわけではなさそうで、下からは明かりが迫ってきている。
しかしこのまま落下を許せば無事で済まない高さであることは変わらない。
「……ぁああああああっ!?」
焦るクリスティーナの思考を阻害したのはエリアスとは別の情けない悲鳴。頭上から降り注ぐそれはクリスティーナ達の脇を凄まじい勢いで通過する。
自由落下とは別の力を伴ってやってきたオリヴィエは二人の横をすり抜ける瞬間に手を伸ばし、何とか接触を果たしてから誰よりも早く地下へと吸い込まれていった。
それを見送って間もなく、エリアスとクリスティーナの体は落下速度を落としてふわふわと宙を漂うようになる。
ゆっくりと足場へ降りていくのを確認してから頭上を見れば清々しい程に笑顔のリオと顔を引き攣らせているノアが同じく宙に浮いている姿が確認できた。
「――人を投げる奴があるかぁ!!」
足元から聞こえるのは悲痛さの滲んだ叫び。
どうやらオリヴィエも無事のようだと、クリスティーナは冷静に彼の生存を把握する。
良く通る彼の声は誰にも拾われることはなかった。
「何とかなりそう?」
「いや、足を止めてから動くまでの時間を考えると止まるのは無理かなって感じです」
「そう」
自分を抱えているエリアスに問いかけると、首が横に振られる。
クリスティーナはそれに小さく頷くと迫る鎧を一瞥した。
「なら、私が何とかするわ。貴方はそのまま走って頂戴」
「了解です」
道の脇に飾られた鎧。それが視界から外れることのないようしっかりと注視しながらクリスティーナは機会を見計らう。
一方でノアはオリヴィエにも何やら指示を出しているようだった。
エリアスは指示通り一切足を緩めることなく突き進み、二人は鎧の横を通過する。
それが自分達の真横へとやってきた瞬間。クリスティーナは左隣の照明を睨みつけた。
(――今)
「アイス・スピア」
短い詠唱が彼女の薄い唇から紡がれる。
それを合図に照明周辺を取り囲んだのは五つの氷の槍だ。それは件の照明へ降り注いだ。
次々と容赦なく体当たりしては砕けて消える氷槍。
直後、クリスティーナが感じたのは浮遊感だ。
数秒程時が停まったのかと錯覚する。しかしすぐさま始まった自由落下によってその誤認は正された。
エリアスの足場が突如として消え、二人は穴の奥底へと落ちていく。
「おあああああっ!?」
予想外の事態に頭が真っ白になり、声一つ出せないクリスティーナ。一方でエリアスは二人分の声量で悲鳴を上げた。
情けなく悲鳴を上げながらも騎士としての役目を放棄するつもりはないようで、彼の腕はしっかりとクリスティーナを抱き留めていた。
幸いにも底が見えないほど深いわけではなさそうで、下からは明かりが迫ってきている。
しかしこのまま落下を許せば無事で済まない高さであることは変わらない。
「……ぁああああああっ!?」
焦るクリスティーナの思考を阻害したのはエリアスとは別の情けない悲鳴。頭上から降り注ぐそれはクリスティーナ達の脇を凄まじい勢いで通過する。
自由落下とは別の力を伴ってやってきたオリヴィエは二人の横をすり抜ける瞬間に手を伸ばし、何とか接触を果たしてから誰よりも早く地下へと吸い込まれていった。
それを見送って間もなく、エリアスとクリスティーナの体は落下速度を落としてふわふわと宙を漂うようになる。
ゆっくりと足場へ降りていくのを確認してから頭上を見れば清々しい程に笑顔のリオと顔を引き攣らせているノアが同じく宙に浮いている姿が確認できた。
「――人を投げる奴があるかぁ!!」
足元から聞こえるのは悲痛さの滲んだ叫び。
どうやらオリヴィエも無事のようだと、クリスティーナは冷静に彼の生存を把握する。
良く通る彼の声は誰にも拾われることはなかった。
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