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第三章―魔法国家フォルトゥナ 『遊翼の怪盗』

187-2.合流待ちの傍ら

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 彼はクリスティーナと共に歩き出しながら静かな笑みを湛えたまま目を伏せる。

「それに……誰かの為を思って動く貴女様を俺はお慕いしていますから」
「……そう」
「他所のお嬢様の頭にワインをひっくり返したり等しない限りは俺も何も言いません」
「その話はやめて頂戴」

 ここぞとばかりに掘り返される過去の行いにクリスティーナは顔を顰める。
 折角真面目な話をしていてもすぐに茶化す従者のせいでその空気が続かない事も最早見慣れた展開だ。

 二人のやり取りにエリアスだけが実話なのかと驚愕し、その場面を想起しては青ざめていたが、クリスティーナはそれに気付かないふりをした。

 そしてクリスティーナ、リオ、エリアス、ヘマの四人も他の三人を追う様に移動を始めた。


***


「今からホールへ向かうのは今夜行われるオークションの聴取の目的も兼ねているからだ」

 移動中、ブランシュに聞こえない様配慮した声音でヘマが囁く。
 今夜行われる民間オークション。ヘマが話しているのは二日前、ディオンと正式に協力関係を結んだ時にクリスティーナ達が聞かされた物だろう。

「ジョゼフ・ド・オリオールが出品するというオークションね」
「ああ。調査の結果、出品される物は古代魔導具の類で間違いないという結論が出た。よって今晩にでも回収することになるだろう」
「その事前調査が主な目的という事ですね」
「ああ。オークションの運営側に内通者と、スタッフに紛れている仲間がいる。彼らがスケジュールや当日の警備の動き等詳細な情報を事前に集めているはずだ。それの共有を行いたい」

 そこでヘマは口を閉ざす。目的地まで辿り着いた為だ。
 前方で足を止めた三人に続いて四人も歩みを止める。

「じゃ、こっからは外の聞き込みと中の聞き込みに別れよっか」
「中にも入ることが出来るんですか……!?」
「今日はオークションがあるみたいだし、開場前から準備してる人はいるだろうからね。突撃してみて駄目だったら追い出されるだけだよー」
「あ、伝手があるとかではないんですね……」

 話に食いついたブランシュの問いにヴィートが計画性のない思惑を披露する。
 彼の発言の中に、先程ヘマが話していたような事情は一切含まれていない。あまりにも自然と吐き出された言葉は、事前に話を聞かされていなければクリスティーナ達も簡単に信じてしまっていたかもしれない程巧妙だ。

 強かな一面にクリスティーナが舌を巻いていると、ヴィートと目が合う。
 彼はクリスティーナの視線に気が付くと、ブランシュに気付かない様片目を閉じて見せた。
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