召喚探偵の推理回想録

玻璃斗

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緋色の宿命

2-2 授けられた魔法

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「なるほど。そういうことだったのか……」

十分にも及ぶ『どうして俺が異世界の警察に捕まる羽目になったのか』の話を聞いた後、レスレード警部は納得したように深く頷いた。

「信じてくれる……んですか?」

俺が目を瞬かせながらおそるおそる訊ねるとレスレード警部は怪訝顔を浮かべた。

「なんだ? 信じてほしくないのか?」
「も、勿論、信じてほしいですよ! だけど……」

自分で言うのもなんだが俺の話はかなり眉唾ものだった。

異世界召喚やら。
偶然遺体が目の前に落ちてきたやら。

魔法があるこの世界でも、警官達の聴取の時に『異世界から来ました』と答えたら『頭大丈夫か?』と言われたぐらいなのだ。

ぶっちゃけ信じろと言うほうが無理な話。
なのであっさり信じてもらうと逆に心配になってしまう。

するとレスレード警部の隣で俺の話に耳を傾けていたメアリーさんが優しく微笑んだ。

「大丈夫。私達はあなたの話を信じるわ。だって私達がここに来たのは真犯人の手がかりを聞くためなんだし」
「……え?」

俺は眉間にしわを寄せた。

真犯人の手がかりって。

「もしかしてお前ら。元々俺が犯人だと思ってなかったのか……?」

俺が顔を引きつらせながら詰め寄ると二人は気まずそうに視線を逸らした。

こ、こいつら!
俺が犯人じゃないって知ってたのにこんな埃っぽい牢屋にぶちこんだのか!?
救世主だと思ったのに慣れない敬語使って損した!

「ひどい! 警察の横暴だ!」

俺が上げた抗議の声にレスレード警部は眉を寄せ額に手を当てた。

「仕方ないだろ。それに確信を持ったのが報告を受けてからなんだから」
「報告……?」

俺が首を傾げるとレスレード警部はため息を漏らした。

「あのな。俺らだって遺体の目の前に立ちすくんでいた怪しい男を初めから犯人じゃないと思うわけないだろう」
「じゃあなんで俺が犯人じゃないと……」
「捕まった時、凶器所持してなかっただろ」

冷静にそう言うレスレード警部に俺は頬を掻いた。

「……そんだけ?」
「充分だろ」

確かに魔法がない世界であれば凶器を隠す時間がないという考えから容疑者から外される要因になるかもしれないけど……

「ここは魔法がある世界だろ? 捕まる前に凶器を魔法で消したと思わなかったのか?」
「……本当は捕まりたいのか?」

レスレード警部に訝しげな視線を向けられた俺は慌てた。

「ち、違う! 俺はただ純粋に疑問に思ってつい口にしちゃただけで……」

決して捕まりたいわけではない。
……まぁ、後先考えずに言ったのは馬鹿だったと思うが。

冷や汗をかく俺にレスレード警部は呆れ顔で頭を掻いた。

「お前は異世界人で魔法を知らないからそういう考えになったと思うが、この世界の魔法はお前が思うほど万能じゃない」
「そうなのか?」

「ああ。もしお前が瞬間移動系の魔法を使えるとしても重量や距離。それに時間。何かの制限が必ずある。第一、魔法で凶器を消して罪から逃れようとするぐらい気が回る奴なら凶器を消す前に大声で助けを求めたりせずに現場から一目散に逃げるだろ」

そりゃあそうだ。

「他にも目撃証言や現場検証から出てきた証拠がお前が犯人じゃないと示していた。だから詫びも兼ねてここに来たんだ。それに……」

レスレード警部は牢屋の中でぷかぷかと浮かんでいるイレーネを睨み付けた。

「魔女のことも聞きたかったしな」

そのレスレード警部の視線に気づいたイレーネは不敵な笑みを浮かべながら俺らに近づいてきた。

「何々? やっと私の話?」
「そうだ。お前のことだよ。魔女。事件に関わるだけに飽き足らずついに殺人を犯したか?」

レスレード警部から猜疑心に満ちた目を向けられたイレーネはリスのように頬を膨らませた。

「失礼しちゃうわねー。私は人殺しなんてしないわよ。あなた達だってそれは知ってるでしょ?」

「……そうだな。今までお前は事件の当事者になったことはなかった。だが今回は違う。お前がわざわざ異世界から呼び出した人間が事件の第一発見者になったんだ。これが偶然だと?」

「ええ、偶然。本当にたまたまよ。私はこの彼に街を見せてあげようと思って連れて来ただけ。それでその時に彼が思いがけず事件に遭遇しちゃったってわけなの。私達は事件とは無関係よ。ねぇ?」

イレーネは同意を求めるように俺の顔をを覗き込む。

一応嘘は言っていないので俺は頷く。

まぁ、街に連れてくる方法がゴミ箱にぶち込むというのはどうかと思うがな。

しかしレスレード警部は信じられないようで疑いの目を向けた。

「そんな妄言誰が信じる? 目的はなんだ?」

「ちょっとそんな警戒しないでよ。私はね。あなた達の手伝いをしたいだけよ。そのために彼を売り込みに来たの」

「売り込みにだと!? 俺らが身知らずの異世界人を使うとでも思うのか!?」

飄々としたイレーネの態度が神経を逆なでしたらしくますます声を荒げるレスレード警部。

イレーネは肩をすくめた。

「そうね。何の取り柄もない人を雇うことはしないでしょうね。でも彼があなたたちにとって有意義な魔法を使えるとなったら話しは別でしょ?」

「へ?」
「なっ!」
「え?」

イレーネの言葉に一同は目を見開く。

え……?
今こいつなんて言った?
魔法を使えるって?

しかも俺が……?

突然のイレーネの爆弾発言に呆然としているとレスレード警部が俺を指さし声を上げた。

「ちょっと待て! こいつは魔法を使えないと聞いたぞ!」
「彼が知らないだけで魔法は使えるわ。というか私が魔法を授けたって言った方がいいかしら」
「授けた!?」

レスレード警部とメアリーさんは目を丸くし互いの顔を合わせる。

そして視線をイレーネに戻しレスレード警部は顔を歪めた。

「そんなこと出来るわけ……」
「あら、私は様々な魔法を使えるのよ? 魔法を授けるぐらい簡単よ」
「だが……」

レスレード警部は言葉を詰まらせ狼狽えた。

なんだこの驚きよう。
魔法を授けるってそんなに凄いことなのか?

わけがわからず戸惑う俺を一瞥するとレスレード警部は弱々しい声で訊ねた。

「……何の魔法だ」

イレーネは一同を見渡しニヤリと笑った。

「嘘を見抜く魔法よ」
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