召喚探偵の推理回想録

玻璃斗

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緋色の宿命

2-3 一千万分の一

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「へー。異世界にもマジックミラーがあるんだな」

出入口しかない何も置かれていない小さな部屋。
俺はその部屋の中央にある向こう側の部屋とを隔てる大きな窓ガラスを興味深々に見回していた。

何故このガラスに俺が興味を引かれているかというとこのガラスはただのガラスではない。
俺の世界でいうマジックミラーだからだ。

メアリーさんに聞いたところ、仕様も俺の世界で使うマジックミラーと同じらしく、このガラスはこちらからはあちらの部屋を覗くことが出来るが、あちらの部屋からはこちらは見えないらしい。
ただマジックミラーと違う点はあちらの部屋から見えるガラスは鏡ではなく壁。
しかも光の具合であちらからこちらが見えることはないとのこと。

流石魔法がある異世界。便利だな。

俺がガラスをベタベタと触っていると隣にいたレスレード警部は顔をしかめた。

「マジックミラーが何なのかは知らんが少しは落ち着けないのか」
「あ、悪い」

俺が慌てて手をガラスから離すとメアリーさんがクスクスと笑った。

「慎司君、多分そろそろ容疑者が来ると思うからちょっと待っててね」

同い年ぐらいの容姿の子に子供をあやすような口調でそう言われた俺は、急にはしゃいでいたことが恥ずかしくなり視線を落とした。

するとイレーネが俺の肩を手を置きにやつき顔を向けた。

「事件に関われると思ってワクワクしちゃった? 遠足前の子供みたいね」
「う、うるさい!」

頬を赤くし俺はイレーネに一喝するとそっぽを向く。

俺らが今いるのは取調室の隣の部屋。

事件の容疑者が来るのを待っているのだ。



「嘘が見抜く魔法だと!?」

レスレード警部とメアリーさんが素っ頓狂な声を上げるとイレーネは不思議そうに首を傾げた。

「信じられない?」
「そりゃあ、魔法を授けたってこと自体信じられないのに精神系の魔法だぞ! 信じられるわけ……いや」

レスレード警部はそこまで言うと唇を噛み締め視線を床に落とす。

そして少し考えこんだのち再びイレーネに疑いの眼差しを向けた。

「……本当にそうなのか? 嘘じゃないんだな?」
「ええ。そんなに疑うなら試してみればいいじゃない。面倒くさいわね。ほんと」
「面倒くさいだと!? こっちが下手に出てればいい気になりやがって……!」
「その態度のどこが下手よ。頭でっかちさん」

互いに睨みあいバチバチ火花を飛び散らせるイレーネとレスレード警部。

どんな確執があるかどうか知らんが、当事者の俺を置いてきぼり。

なんかずっと黙っていると俺の意向を無視して話が進みそうなので割って入ることにした。

「あの、話が見えないんだけどさ。そんなに凄い魔法なのか? その嘘を見抜く魔法って」

確かに便利は便利だと思う。

なんてったって容疑者に『あなたは犯人ですか?』と聞き、『はい』か『いいえ』で答えてもらえれば犯人かどうかわかるのだから。

警察にとってこれほど使い勝手のいい魔法はないだろう。

だがこの世界は一人一つは魔法が持てる世界。

嘘が見抜ける魔法を使える人なんて大量にいそうな気がするけど。

俺の疑問にレスレード警部は髪をかきあげため息を漏らした。

「この世界では希少なんだよ。そういう精神系の魔法は」

「精神系?」

なんじゃそりゃ?
俺がさっき警官から見せてもらった魔法となんか違うのか?

意味が分からず首を捻る俺にメアリーさんが助け船を出してくれた。

「えっとね。簡単に説明するとこの世界の魔法にはいくつか系統があるの。ほら、君……確か慎司君だったよね。慎司君を取り調べした警官が使った魔法って何か覚えてる?」

「もしかして指先から炎を出した警官のことか?」

「そうそう。彼の魔法は炎を操作するもの。系統からすると操作系ね。他にも物理系や変化系とかあるんだけど、その魔法系統の中で嘘を見抜く魔法が分類される精神系の魔法はかなり珍しいの」

「珍しいってどれぐらい?」

「……一千万分の一だ」

「一千万分の一!?」

レスレード警部が呟いた数字に俺は驚きの声を上げた。

なんてったって一千万分の一といえばかなりの確率。

例えるなら宝くじで一等賞、四億が当たる並みなのだ。

天文学的数字に俺が呆然としているとレスレード警部は目頭に手を置き黙り込む。

そして覚悟を決めたのか顔を上げイレーネを睨み付けた。

「……まぁ、いい。お前が何を企んでいるか知らんが乗っかってやる。ただし少しでも変な真似をしてみろ。公務執行妨害でしょっ引くからな」

「だから本当だって。そんなに疑うなんてひどいなー」

レスレード警部の態度にむくれるイレーネ。

……あれ?

今さらっと俺が魔法使う流れになってない?

「ちょっと、俺はまだ協力するとは……」

だが俺が意見を言う前にメアリーさんはレスレード警部に意見した。

「でもアルヴァン。このことが部長にバレたら大事になるわ。勝手に決めるのは……」

「安心しろ。どうせ部長が気にしているのは手柄が立てれるかどうかだけ。事件を解決さえすれば何も言わないはずだ」

「そうだとしても……」

「責任は俺が取るから頼む」

真剣な表情のレスレード警部。

メアリーさんは何か言おうと口を動かすが結局折れ頷いた。

「……しょうがないな。もう」

「ありがとう。それでメアリー。頼みがある。悪いが宝石店の事件の容疑者を取調室に呼ぶように担当者に言ってくれないか? 魔女の話が本当なら今一番使える事件はそれだからな」

「わかったわ」

慌ただしく動き出すレスレード警部とメアリーさん。
そして満足げな笑みを浮かべるイレーネ。

なんだがよくわからないが話は済んだらしい。



……当事者の俺の意向は誰一人として聞いてくれなかったけど。
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