純白の抒情詩〈リューリカ〉

黒井ここあ

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第一章 妖精と呼ばれし娘

二、五月雨の心は(7)

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 翌日、太陽の兆しが暗闇を白ませる早朝、アルフレッドは軽い朝食を自室で済ませると、てきぱきと身支度を始めた。
 貴族の大半は着替えを下僕に手伝わせるが、彼はそういったことを好まなかった。
 衣装箪笥を開いて部屋着を脱ぐと、姿見に自身が写り込むのが視界に入った。
 弓を引くための体つきへと鍛えられた彼の体は、よく見ると筋肉の付き方がアンバランスだったが、傍目には十分均整がとれていた。
 見慣れた男の体について、彼は特に感想を持つことはなかった。
 着用し続けて少しくったりとしてきたリネンのシャツの上に、獣臭さの抜けきらない、鹿の革で仕立てたベストを着る。
 草食動物の匂いで自身の人間臭さを覆い隠すのだ。
 仮に肉食獣を獲物に選ぶことがあれば、狼の毛皮をまとっただろう。
 こうした、狙う獲物によって毛皮を選べる裕福さは貴族らしかった。
 その上に胸当てをしっかりと締める。そして寝台に腰掛け乗馬長靴の靴紐をほどけぬよう固く結ぶと、くすんだ金色の髪を、無造作にリボンで一纏めにした。
 彼もまた他の貴族らしく、肩甲骨まで伸びる長い髪を持っていた。
 仕上げに、虹色の羽を刺したお気に入りの帽子をしっかりと被った。
 彼は姿見に映った見慣れた狩人を後目に、弓矢を担ぎ自室を出た。
 ふと思い立ち、彼はもう一度自室に引き返した。
 その辺にあった袋に、着替えを詰め、普段は持たないボウガンを背負った。
 そして、自室に鍵をかけると、その鍵を首にかけ、無造作に懐へと押し込んだ。
 豪奢な伯爵の城において、彼の出で立ちは全くと言っていいほど、異色だった。
 しかし、彼の兄・リチャードが、元ヴィスタ王女・ユスティリアーナと結婚し爵位を継いだ十年前よりももっと前から、彼はそうして狩人の姿をしてあちこちを闊歩していた為、ボーマン家に働く者は誰も、アルフレッドの服装について疑問を持つことはなかった。
 館の主―未亡人が住む階は、未だ静けさに包まれていたが、階下へ降りて行くと日も昇りきらないうちから使用人が働いている様が視界に入ってきた。
 彼らに指示を飛ばすハンナに目が合うと、彼女は臆せず彼に声をかけてきた。
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