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第一章 妖精と呼ばれし娘
三、カラスとの約束(2)
しおりを挟む白カラスは不機嫌そうに首を動かし佇まいを直した。
「わしの顔に何かついていたかの」
「カラスさんたら、ふた言目には『森を出るな』っていうんだもん」
「お前は特別だからじゃ、リュリ。人間は、自分と違うものを恐れ排除する。お前もその対象になりかねん。わしはな、お前を……」
「心配して言っているのじゃ、ね。大丈夫ったら大丈夫だよ」
「よもや、忘れたとは言わせないぞ。誰がお前を狙っているかはわからない。誰も信用するでない。そしてその珍しい真っ白な髪と翠の瞳はしっかり隠しておくのじゃ。わしはお前を心配して言っているのじゃ」
「そんなこと言ったら、カラスさんだって真っ白じゃない。それでいて、いつでもふらっといなくなっちゃったり、自由に空を飛んでいっちゃったりして。ずるい、ずるい! カラスさんが大丈夫だったら、わたしだって大丈夫だよ? 大丈夫ったら大丈夫!」
大丈夫ったら大丈夫、と節を付けながら軽快にステップを踏み、リュリは小さな戸口から大樹の中へ入った。
それが彼女の家なのだった。
白カラスは彼女を追って開け放たれた窓の縁へと滑り下りた。
「そうそう、昨日、すっごい怖い目にあったんだよ! やっぱり《盾》が出てきてくれたおかげで、全然怪我しなかったんだけどね」
リュリは思い出したように、白カラスに報告した。彼の皮膚が露わだったなら、蒼くなったのが見えただろう。彼はそれくらい慌てた。
「何! なぜそれを早く言わん! 相手は誰だったんじゃ? 顔を見なかったのか?」
しかし、対する少女の方は、危機感など全くなく呑気に答えていた。
「ええ。だって、人間は最初に挨拶をしあうものだ、ってカラスさん言ってたじゃない。あと、とっても遠くから矢が飛んできたんだよ! すぐ逃げてきたから、誰だったかなんて、わかんないよ」
彼は小さな首で辺りを見回し、いらだち紛れに部屋の香りを吸い込んだ。
カラス特有の鼻を守る剛毛は、匂いを発する対象に近づかなければ機能を果たさない。
だが、この小さな部屋には様々な種類の香草がその香りを競っており、部屋そのものが香り袋のようになっていた。
それもこれも、壁中の至る所に干された薬草、香草の類のためであった。
「お前ときたら、注意力に欠けている! それにしても、この薬草の量……また、増やしたようじゃな? 子供の傷薬を作るにしては本格的すぎないかね?」
白カラスは足で窓の縁を掴み直した。
「傷薬なんて作れないよ。おいしいハーブティーを作って、それをおすそ分けをしてるだけ」
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