純白の抒情詩〈リューリカ〉

黒井ここあ

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第一章 妖精と呼ばれし娘

三、カラスとの約束(3)

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 リュリは戸棚から麻布で出来た小さい袋を幾つも取り出し瓶に詰めながらにこやかに答えた。

「寝る前にはちみつと一緒に飲めば、ぐっすり眠れるでしょ」

 わたし、はちみつは大好き、と言いながらリュリは忙しなく小袋が詰まった瓶を次々に用意していく。
 そして瓶に小さな麻布をかぶせ、その縁には、葡萄の蔦を干して作ったリボンを巻きつけ、籠の中にどんどん隙間なく詰めていった。

「おいしくなあれの魔法をかけたから、効果はもう、ばっちりなんだよ! ほら、こうやって、両手に持って、おいしくなあれー、おいしくなあれー」

 ぎゅっと目を閉じ、両手で包んだ瓶に、リュリは何やら念じた。
 白カラスは窓辺から木の机の上に不格好に飛び乗り、もっと不格好にリュリの近くへと飛び跳ねてやってきて、その様子を興味深そうに小首を何度も傾げながら見ていた。
 リュリは荷作りが終えると、髪を結わえたり前掛けを着けたり、身支度をするのに部屋中をせわしなく歩き回った。

「これも自分で織ったのか?」

「ううん、これは貰い物。ちびちゃんたちがくれたんだよ」

 リュリは寝台の柱に掛けてあったその貰ったケープを手にとり、無造作に纏った。
 フードが付いている毛織物で、縫いつけられた毛皮のおかげで、冬にも温かく過ごせるような代物だと白カラスは見て取った。

「良いものだな、だがしかし、今の季節にはそぐわんのではないか?」

 彼の提言をよそに、彼女はしっかりとケープの紐を結わえ、フードを目深に被った。
 僅かに見える口元が笑みを湛えている。

「……カラスさん、忘れたの? わたしって、人に顔を見せちゃいけないんでしょ?」

 彼女はそう、悪戯っぽく言うと籠を手に取り、素早く扉へと駆けだす。

「約束の時間に間に合わないかも、カラスさん、またね!」

 白カラスはリュリが梯子を下りる音を聴きながら、その音に合わせて不格好に机の上を跳び、窓の縁へと飛び乗り、彼女が北の方へ行くのを見守った。
 彼女の白く眩しい髪色がフードから溢れて朝日にきらきらと輝くのが見えなくなると、白カラスはいずこかへと去っていった。
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