【R18】白い結婚なんて絶対に認めません! ~政略で嫁いだ姫君は甘い夜を過ごしたい~

瀬月 ゆな

文字の大きさ
9 / 10

甘い疼き ☆

しおりを挟む
「遅くまでお疲れ様でした、アルバート様」
「ただいま戻りました、リジィ」

 夜、遅めの時間に戻って湯浴みを済ませたアルバートをベッドの上で出迎えると、唇にそっと彼のそれが押し当てられる。

 あの後、お互いに気持ちはとても盛り上がって・・・・・・いた。
 けれどアルバートは職務を抜け出して来ており、まだ今日の分は山ほど残っているという。それに明日から一週間の公休を取る為に頑張って来る、という話になった。
 エリザベスに声をかけられた後にやって来たのは偶然で、プリムローズと話がしたくて確実に会えるであろう王妃のお茶会帰りに捕まえようとしただけらしい。

「今夜は寝かせてあげられないと思います。心配ならお昼寝をしておいて下さい」

 見送る時、耳元で囁かれて真っ赤になった。

 本で見たことがある言葉だ。
 初めての夜、もしかしたら言われるかもしれないと一人で期待していた。結果は一年だけの白い結婚と言われてしまったわけだけれど、あの時のことを思うと夢みたいだ。そうするとアルバートもやっぱり獣になってしまうのだろうか。

 ドキドキしていると、さっと掃くように唇に柔らかなものが触れた。

「いってきます、リジィ。いい子で待っていて下さい」
「い、いってらっしゃいませ、アルバート様」

 すごい。
 今のも本で見た。
 額や頬じゃなくて唇にする"いってきますの口づけ"だ。仲睦まじい夫婦なら毎回すると書いてあった。本当に、するのだ。
 プリムローズは感動を逃さないように、目を閉じて余韻に浸る。

 そんな彼女の様子を、後ろに控えるイレーヌが微笑ましそうに見守っていた。


 本でしか知らなかったことを二つも経験したプリムローズは、夕食を一人で摂って湯浴みも済ませるとデイジーに贈られた下着もどきを再び身に着けている。
 本当は新しく用意したかったけれど急な話だったし、何よりも相変わらずどこで用意したら良いのか分かっていない。
 いつ見ても可愛くて煽情的なデザインだから、アルバートだって気に入ってくれると思う。でもプリムローズに似合っていないかもしれないし、自信がなかった。

「リジィ、やっぱり怖かったら言って下さい」

 プリムローズをベッドに横たえてアルバートが心配そうに声をかける。
 乱暴に押し倒したあの夜のことを言っているのだろう。
 でもあれは、プリムローズが悪いのだ。今は壊れ物のように優しく触れられていて、ドキドキするけれど全然いやじゃない。

「大丈夫、です。だから……アルバート様のお嫁さんにして下さい」
「必ず、大切にします」

 温かな両手が頬を包み込んで唇が重なった。
 何度も重ねては離し、ついばむ。熱い舌先に唇をなぞられ、肩がびくりと強張ってしまった。
 驚いただけなのだけれど、怯えたと思われてしまったかもしれない。勇気を出して薄く唇を開く。この反応で合っているだろうか。本には深い口づけだと舌同士を絡めると書いてあった気がする。

「ふ……っ」

 吐息がこぼれた。
 舌が絡まると初めての感覚が身体中に広がる。
 これも本に書いてあった。
 控え目に甘く優しい、情熱的な激しい口づけ。とても難しいことだと思っていた。でも好きな相手とだと自然にできるのだと知った。

 ぎこちなくアルバートの舌を探し、おずおずと自ら絡める。
 奥底から強い想いが湧き上がって溢れてしまいそうになった。
 それはとてもシンプルで、真っすぐな想いだ。

 アルバートが、欲しい。

 長い、長い口づけの後、唇が離れて行く。
 頭がぼうっとする。でも、こんなの・・・・で終わりじゃない。本でも口づけの後のことの方がたくさんページを割かれていた。

「あの、変じゃ、ないですか……?」

 とうとう不安が募りすぎて尋ねてしまう。
 変ならいっそのこと、もう脱いだ方が良いと思ったのだ。

「変、とは?」
「あの、下着が……。肌が透けていたりして大人っぽいので、わたくしには、あの」
「とてもよく似合っていて可愛いと思います。今度は私からプレゼントさせて下さい」
「は……、あ、んっ!」

 はい、と返事をしかけて全く別の言葉に塗り替えられた。
 自分でも聞いたことのない、甘えるような高い声があがった。
 下着ごとふくらみをやんわりと揉みしだかれ、頂上の飾りを探るように指先が優しく円を描く。生まれて初めて愛撫を受けて身体の奥に炎が灯ったような気がした。

 簡単に見つけられた小さな突起は、ふるりと震えながら存在を主張しはじめる。柔らかな布地に擦れると背中にぞくぞくとしたものが通り抜けた。

「アルバート、様……切ない、とても、切ないの」
「リジィ。アル、と。そう呼んで下さい」
「アル、様」

 触れられているのは胸だけなのに身体中が、下腹部が切ない。
 甘えた声があがってしまうのがとても恥ずかしくて、声を振り絞った。

「あの……アル様は、大きい方が……お好き、ですか?」
「大きさではなく、あなたの胸が好きです」

 肝心の主語はなかったけれど、状況的に何について聞いたのか伝わったようだ。
 初めての夜にも、同じことを聞いた。あの時は答えなんて返してもらえなくて、でも――プリムローズの胸が好きだと言ってくれるのは嘘でも嬉しい。

「敏感で可愛らしいと思います。ちょっと触れたただけで、こんなに固く尖らせたりして」
「言わないで、下さい……」

 柔らかな布地越しに見える先端はアルバートの言うように固く尖って、熱を帯びてじんと甘く痺れていた。
 指先でつままれながら転がされると、あんなにこらえようとした高い啼き声が簡単にあがり、身体が跳ねてしまう。するとアルバートはもう片方の乳首のつけ根に埋め込むよう指を押しつけ、ぴんと弾いた。

「あんっ!」
「直接触れる前からこんなに感じてくれて、ずっと可愛がっていたいくらいです」
「アル様……ずっと、怒っていらっしゃるのですか?」

 胸への愛撫もさることながら、言葉でも責められているようで熱の高まりが抑えられずにいる。
 恥ずかしい。
 でも触れられている場所から蕩けてしまいそうで、自分の身体なのに自分のものではないみたいだ。

「どうしてそう思われるのです?」
「だって、あの……恥ずかしい言葉を、たくさんおっしゃるので……、っん」

 ずっと可愛がっていたいと言ったからか、アルバートの指はプリムローズの感じやすい桃色の突起をなおも弄んでいる。
 下腹部の甘い疼きはどんどん強まって行って、どうしたらいいのか分からない。声も抑えられなくなって来ていた。それどころか、甘えた色がさらに増している。

「リジィ。もっと感じて、その可愛い啼き声をたくさん聞かせて下さい」
「そ、そういうのが」
「ああ、逆にとても浮かれているせいです。ずっと触れたいと思っていたので」

 言いながら、布地ごと乳首を口に含んだ。軽く吸われ、奥歯で甘噛みをされると指での愛撫とはまるで違う感覚がプリムローズに襲いかかる。
 まるで知らなかった二つの鋭い感覚はどちらも同じくらい気持ち良い。それが身体の中に蓄積されて行っていて、プリムローズの奥底にある何かを表に出すように押し上げている気がした。

「触れて……ん、あ……っ、下さったら、良かったの、に」
「そうですね。せっかく、おいしそうなごちそうが食べて欲しいって誘惑してくれていたのに、とてももったいないことをしたと思っています」
「ひん……っ! いや、やあぁ……っ!」

 腰が、勝手に揺れてしまう。
 破られたページにきっと書いてある、もっと強くて深いものが欲しくてたまらなくなった。

「もう遠慮はしません。だからあなたの全てを独り占めさせて下さい」

 アルバートの声も普段より掠れていて、だけど今はそれすらも切なさを煽る。
 プリムローズの下着を脱がせ、彼もまた自らのローブを脱いだ。
 その身体の中心にはプリムローズがキノコだと思い込んだあの物体がやっぱりあって、前に見た時と変わらない色形と大きさで天を向いている。

 勢いで彼の肌を曝させたことがあるのに、何が違うのだろう。
 アルバートは男性で女性の自分とは全く違うのだと、胸の鼓動が激しさを増した。

「先に、その可愛いお口で召し上がってみますか?」
「――アル様の意地悪」

 本当に、食べられるのだろうか。

 今さら疑問に思ってしまった。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

顔も知らない旦那様に間違えて手紙を送ったら、溺愛が返ってきました

ラム猫
恋愛
 セシリアは、政略結婚でアシュレイ・ハンベルク侯爵に嫁いで三年になる。しかし夫であるアシュレイは稀代の軍略家として戦争で前線に立ち続けており、二人は一度も顔を合わせたことがなかった。セシリアは孤独な日々を送り、周囲からは「忘れられた花嫁」として扱われていた。  ある日、セシリアは親友宛てに夫への不満と愚痴を書き連ねた手紙を、誤ってアシュレイ侯爵本人宛てで送ってしまう。とんでもない過ちを犯したと震えるセシリアの元へ、数週間後、夫から返信が届いた。 ※この作品は、『小説家になろう』様『カクヨム』様にも投稿しています。 ※全部で四話になります。

地味な私では退屈だったのでしょう? 最強聖騎士団長の溺愛妃になったので、元婚約者はどうぞお好きに

有賀冬馬
恋愛
「君と一緒にいると退屈だ」――そう言って、婚約者の伯爵令息カイル様は、私を捨てた。 選んだのは、華やかで社交的な公爵令嬢。 地味で無口な私には、誰も見向きもしない……そう思っていたのに。 失意のまま辺境へ向かった私が出会ったのは、偶然にも国中の騎士の頂点に立つ、最強の聖騎士団長でした。 「君は、僕にとってかけがえのない存在だ」 彼の優しさに触れ、私の世界は色づき始める。 そして、私は彼の正妃として王都へ……

〖完結〗その子は私の子ではありません。どうぞ、平民の愛人とお幸せに。

藍川みいな
恋愛
愛する人と結婚した…はずだった…… 結婚式を終えて帰る途中、見知らぬ男達に襲われた。 ジュラン様を庇い、顔に傷痕が残ってしまった私を、彼は醜いと言い放った。それだけではなく、彼の子を身篭った愛人を連れて来て、彼女が産む子を私達の子として育てると言い出した。 愛していた彼の本性を知った私は、復讐する決意をする。決してあなたの思い通りになんてさせない。 *設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。 *全16話で完結になります。 *番外編、追加しました。

一年後に離婚すると言われてから三年が経ちましたが、まだその気配はありません。

木山楽斗
恋愛
「君とは一年後に離婚するつもりだ」 結婚して早々、私は夫であるマグナスからそんなことを告げられた。 彼曰く、これは親に言われて仕方なくした結婚であり、義理を果たした後は自由な独り身に戻りたいらしい。 身勝手な要求ではあったが、その気持ちが理解できない訳ではなかった。私もまた、親に言われて結婚したからだ。 こうして私は、一年間の期限付きで夫婦生活を送ることになった。 マグナスは紳士的な人物であり、最初に言ってきた要求以外は良き夫であった。故に私は、それなりに楽しい生活を送ることができた。 「もう少し様子を見たいと思っている。流石に一年では両親も納得しそうにない」 一年が経った後、マグナスはそんなことを言ってきた。 それに関しては、私も納得した。彼の言う通り、流石に離婚までが早すぎると思ったからだ。 それから一年後も、マグナスは離婚の話をしなかった。まだ様子を見たいということなのだろう。 夫がいつ離婚を切り出してくるのか、そんなことを思いながら私は日々を過ごしている。今の所、その気配はまったくないのだが。

【完結】初めて嫁ぎ先に行ってみたら、私と同名の妻と嫡男がいました。さて、どうしましょうか?

との
恋愛
「なんかさぁ、おかしな噂聞いたんだけど」 結婚式の時から一度もあった事のない私の夫には、最近子供が産まれたらしい。 夫のストマック辺境伯から領地には来るなと言われていたアナベルだが、流石に放っておくわけにもいかず訪ねてみると、 えっ? アナベルって奥様がここに住んでる。 どう言う事? しかも私が毎月支援していたお金はどこに? ーーーーーー 完結、予約投稿済みです。 R15は、今回も念の為

悪役令嬢、記憶をなくして辺境でカフェを開きます〜お忍びで通ってくる元婚約者の王子様、私はあなたのことなど知りません〜

咲月ねむと
恋愛
王子の婚約者だった公爵令嬢セレスティーナは、断罪イベントの最中、興奮のあまり階段から転げ落ち、頭を打ってしまう。目覚めた彼女は、なんと「悪役令嬢として生きてきた数年間」の記憶をすっぽりと失い、動物を愛する心優しくおっとりした本来の性格に戻っていた。 もはや王宮に居場所はないと、自ら婚約破棄を申し出て辺境の領地へ。そこで動物たちに異常に好かれる体質を活かし、もふもふの聖獣たちが集まるカフェを開店し、穏やかな日々を送り始める。 一方、セレスティーナの豹変ぶりが気になって仕方ない元婚約者の王子・アルフレッドは、身分を隠してお忍びでカフェを訪れる。別人になったかのような彼女に戸惑いながらも、次第に本当の彼女に惹かれていくが、セレスティーナは彼のことを全く覚えておらず…? ※これはかなり人を選ぶ作品です。 感想欄にもある通り、私自身も再度読み返してみて、皆様のおっしゃる通りもう少しプロットをしっかりしてればと。 それでも大丈夫って方は、ぜひ。

王子を身籠りました

青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。 王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。 再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

勘違い妻は騎士隊長に愛される。

更紗
恋愛
政略結婚後、退屈な毎日を送っていたレオノーラの前に現れた、旦那様の元カノ。 ああ なるほど、身分違いの恋で引き裂かれたから別れてくれと。よっしゃそんなら離婚して人生軌道修正いたしましょう!とばかりに勢い込んで旦那様に離縁を勧めてみたところ―― あれ?何か怒ってる? 私が一体何をした…っ!?なお話。 有り難い事に書籍化の運びとなりました。これもひとえに読んで下さった方々のお蔭です。本当に有難うございます。 ※本編完結後、脇役キャラの外伝を連載しています。本編自体は終わっているので、その都度完結表示になっております。ご了承下さい。

処理中です...