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第4章 この手の届くところ
11.隠者は山を彷徨う
しおりを挟むパチパチと薪が爆ぜ、小さく火の粉が舞う。空は満点の星空。落ちてきそうなほどたくさんの星が煌めいている。どうやらレイヴァーンにも星座やそれにまつわる物語があるとカルラに聞いたのでアイテムボックスを探したところ、風の車輪座という星座の話が書いてある絵本を見つけたので精霊達に読んであげたところ、何故か大好評だった。できれば今後も読み聞かせてほしいと頼まれ、こんなことで良ければと承諾した。
という訳で、今日は山中を彷徨うこと、二晩目。結局ガルダでは欲しい情報は見つからず、こうやって精霊達と山歩きとキャンプをすることになった。昼間は精霊達の示すまま歩き、休みたい時に休み、精霊達に促されるままご飯を食べては歩く。薄暗くなったらこうしてあたりに結界を張りつつ、アイテムボックスの荷物で適当にキャンプをする。転移で家に帰っても良かったのだが、もしかしたらこういう工程が必要なのかもしれないと思ってあえて野宿を選んだのだが…。
(色々とごめん。なんだか楽しい…)
本来のキャンプと違い、大きな荷物を持つ必要もないし、浄化と洗浄の魔法のおかげで衛生的な面でも快適だ。加えて、疲労は自分で治癒術で回復できる。私は、今まで見たことのない植物を鑑定したり採取したり、見たことのない動物や魔獣をある程度避けたり…要は移動しているだけで、普段の生活とあまり変わりないのだ。
(むしろ、自分と精霊たちだけだから、快適だったりして…)
快適すぎて、苦しんでいるだろう精霊王に申し訳なく思えてくるほどだった。特に最近は平均して10日に一度くらいのペースでガルダに行っていたので、ある意味人熱に疲れていたのかもしれない。
土の形成術で作った小さな竈門には、湯沸用のやかんがかけられていて、今まさにシュンシュンと湯気が立ち始めた。少しだけ火を落として、地面に敷いた断熱マットと毛布の上で重い思いに過ごしている精霊たちを眺めたり、ゆらゆらと揺れる炎を眺めて過ごす。
「主様」
肩に飛び乗って来たのは、カルラだった。
「どうしたのですか?」
「…なんでもないよ。なんだか快適だと思っちゃって」
思わず苦笑が漏れてしまった。
「こんなに山歩きさせられて、快適なんて主様くらいだと思いますよ?」
「出る前に読んだ『山歩きの書』が役に立ったのかもね?」
「それでも…こちらをどうぞ」
カルラは精霊草を一枚、私に差し出して来た。
「さっき泉のそばで見つけました!」
「ありがとう。でも、みんなで食べて良いよ?」
「みんなの分もありますよ」
「じゃあもらうね。ありがとう」
満足そうに笑うカルラを撫でると、カルラもふと炎を見て、幸せそうに呟いた。
「焚き火、踊ってるみたいですね」
「うん。綺麗ね」
赤く、暖かく、力強く燃える炎。落ちて来そうな星空。澄んだ空気。時折感じる、肥沃な土の香り。
「本当に、レイヴァーンは綺麗な世界だわ」
結局その晩はなんの変化もなく、火を灰で覆って、そのまま眠る事にした。眠る前に、ふと何かの物音がしたような気がしたのだが、稼働したままの探索術には何も反応しなかったので気にしないことにした。
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