【本編完結】転生隠者の転生記録———怠惰?冒険?魔法?全ては、その心の赴くままに……

ひらえす

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第6章 転生隠者の望む暮らし

19.流れる時の中で

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※すみません、一度これを削除して完結させましたが……やっぱり追加しますm(_ _)m※


 久しぶりにバルガの神殿にやって来た。
 朝の祈りの時間は思っていたよりも賑やかだった。
(今日は暖かいから……かもしれないわね)
 人の流れに乗って中に入ると、空いた席に座った。椅子の座面は、なんとなく湾曲している。おそらく、たくさんの人が座ってきたからだろう。

 壇上の神官が祈りの一説を終え、こちらを向いた。
「命の旅路を続ける我等と魂と……」
 決まり文句から始まり、季節の話などを交えてしばらく話が続く。
(旅路……そうね、ずっと旅をしているようなものなのかもね)
 ふと、目の前の机を眺める。机は磨き込まれて薄っすらと光り、自分の顔がぼんやりわかる程度には写っている。
(魔力の量が、寿命と関係している……と言うのは、間違いないみたい)
 相変わらずほぼ外見の変わらない、すっかり見慣れた自分の顔が、そこにある。
(もしかしたら、身体の年齢を重ねるのが遅くなるのかもしれないけど……)
 そうだ、データが私1人では証明できない。

「火は太陽のかけら、火の神、太陽の神カルコンは……」

 神官の話を聞きながら、ふと、いつも傍にいたカルラの事を思う。
(カルラ……元気かな。ううん、元気よね。わかるもの……感じるもの、ね……)

 新しい火の精霊王となった、カルラと名も知らない幾人かの精霊達のことを思うと、寂しさと共に胸の中に熱が灯る。

「主様、私は私です!いつでも魂は一緒ですから。でも、聖地にも沢山会いに来てくださいね!もちろん、私も行きますから」

 新しい火の精霊王は、女性寄りの姿だった。どことなくカルラに似ている。

「……主人様」

 祈りの姿勢をとりつつも考え込んでいた私に、ブラドが声をかけてくる。
(……どうしたの?)
「カルラのことを考えていたのですか?」
(……うん)
 念話で答えた私に、気遣うような視線が向けられているのがわかる。
(大丈夫。後で聖地に行こうかな)
「はーい!」
 他の精霊達の元気な声を聞きながら、私はそっと天井を見上げた。
 採光を考えた天井からは、ガラス越しにキラキラと朝陽が差し込んでくる。

 ———セカイさん

 話しかけるごとに、今までの時間が、思い出が溢れるように心の中を駆け巡る。

 前世の自分。
 ボンヤリと薄れてはいるけれど、多分自分なりに頑張って……多分言葉足らずのまま終わっただろう人生。

 転生する前の、どこかふわふわした実感のない場所。
 嘆きも涙も、欲望も諦観も、ゆるゆると包んでくれていた場所。
(結局長く過ごし過ぎてたみたいだけど……)
 多分その一見無駄に思える時間こそが、私が自分で気づくために大切な時間だったのだろうと、今は思える。

 それじゃあ、どうします?
 そんな言葉で始まった、転生を決めた場所。
 あなたの苦労の8割くらいが、本来は負わなくていいもので……なんて言われて、私はあの時怒っていた。
(それを、八つ当たりしたのよね)

 しばらくはアイテムボックスの中身だけでダラダラ生きて……バルガのギルドに行って。

 そこからだ。
(誰かに心配されたり、心配したり)
 ———人間によって疲弊した貴女の魂の傷は、誰か他人によってしか、癒されないと思うのです。
 かつてこの神殿にいた神官に、そう言われたのを思い出す。

(1人でいいと思っていたのだけど……)
 ギルドでアーバンさんと話すようになって、光虫を捕獲して、精霊に進化して……1人ではなくなっていた。
(精霊達との暮らしは、心地よくて……)
 精霊草をもぐもぐ食べる姿が可愛くて。
 心地よい距離をとってくれる彼らとの暮らしが楽しくて。

 たくさんの本を読み漁り、レイヴァーンという世界のことを、心ゆくまで読み込む日々。
 そして、気遣ってくれる人との日々。
(少しは……恩返しができたかしら)
 いや、ちがう。
(少しは、私と出会って良かったと思ってもらえたかしら……感謝は、伝わっていたかしら?)

 出会い、別れて来た人々のことを思った。

 
 ———セカイさん

 
 長い時間がかかったけれど、
 その分沢山の物を見て、経験して、わかった。
 私は、生きて来て良かった。


(だから……この謎を解くよ)
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