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死神さんですか?
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「早く終わんないかな~」
早く婚約者を決めてくれ、と願いを込めて空を見上げる。
お皿に手を伸ばしたが掴むものがない。空気をもみもみとした後で、そろそろ帰るかと腹を括って足を崩した時だった。
「死にたいのか?」
聞き慣れない声が耳に届いた。
父よりも低い。それに少しだけかすれている。年齢は四十~五十代といったところだろうか。
「お前は一生を終えたいのか?」
要領を得ない私に、耳元で声の主が少し言い方を変えた問いを繰り返す。たまたま巡回していたら、自殺志願者を見つけてしまったとでも思ったのだろう。
早く終わんないかなから、一生を終えたいって話が飛躍しすぎじゃない?
普通の人ならそんなこと思わないよね?
悪役令嬢であると自覚したのが数日前。
役目から逃げようとしたから、今度は死神でも派遣された?
死亡エンドまでのタイムリミット短すぎない?
もうちょっと心に余裕を持って欲しい所だ。
だけどこんな時、お客様の声を投書する場所など教えられていない。ツイてないと割り切って次に行くか。
よくいえば聞き分けの良い、悪くいえば諦めが早い私は早々に今世への執着を捨てる。
けれど一応質問されたら答えるのがマナーというものだろう。両手を上げて、魂回収に抵抗する意思がないことを示しながら、問いに答える。
「進んで死にたいとは思いません。けれど神のご意志に逆らう気もありません」
この世界に神様が存在するのかは知らないけれど、正直トップの存在が神でなくても構わない。
無駄に敵視されたり、異端分子としてみなされるよりもずっとマシ。無駄な抵抗は止め、長いものには巻かれる。
「ではなぜドラゴンに殺されたいなど世迷い事を口にした」
あ、結構序盤から聞いていたのか。なら自殺志願と勘違いされても不思議ではないか。
心配して声かけてくれたのかな?
死に神だなんて勘違いして申し訳ない。
両手を挙げたまま、言い訳の言葉を紡ぐ。
「人に殺されるよりはマシという話でして。比較の問題です」
「殺されることが前提なのはなぜだ?」
そこを突っ込まれるとなぁ……。
実は私、前世の記憶がありまして~だの未来を知っているだの言っても頭がおかしいと思われるだけだ。
今でも十分ヤバい奴だと思われているのだろうが、わざわざ初対面の人に話すこともないだろう。
「それが私の運命ですので」
声の主が誰かも分からずに、それっぽい言葉を吐く。
もういっそ変な令嬢認定されてもいいからさっさと帰ってくれないかな~なんて遠くを見つめる。けれどその人は一向に立ち去ってはくれない。
「運命、か……。お前はそれに逆らおうとは思わないのか?」
運命だなんて言葉を飲み込んで、さらに踏み込もうとしてくる。
一体どこのお節介さんだ! 放っておいてくれればいいのに……。
父の知り合いとか?
会場を抜け出しただけではなく、死にたがりだなんて余計なこと言われたら面倒臭いな……。
だが背後にいる相手がどんな人であっても、いつか私の元に運命の相手が現れる。
知識のない私ではどうしようもない運命を背負ってくる相手が。
せめてシナリオの大筋だけでも知っていれば、抵抗する気力も沸いたかもしれない。だが何も知らないのだ。
前世だって成人前に死んで、今世だって十年くらいしか生きていない。
常識と非常識の境目が分かるくらいの子どもがどう立ち向かおうというのか。はっきり言って私は頭がよろしくない。
特殊な知識も技能もない。
顔の作りと爵位はそこそこだが、私程度他に何人もいる。
運命に逆らった所で得られるものもない。抵抗したって無駄なのだ。
「とんでもございません。私ごときが逆らえるなど、それこそ世迷い事でございます」
ここで勘違いされるのもまた、私の運命なのではないか。そう思うと一気に気が楽になってくる。
「お前が相手なら私は……」
後ろの誰かさんは何を思ったのか、私の耳元で謎の言葉を小さく呟く。
だが「最後の方聞こえなかったのでもう一回言ってください」という勇気はない。
それに、内容よりも耳元で聞こえる音が気になる。
バッサバッサとまるで鳥が飛んでいるような音。とてもバラ園で聞くような音ではない。
突如として聞こえ始めた異質な音の正体が気になり、我慢出来ずに振り向いた。
早く婚約者を決めてくれ、と願いを込めて空を見上げる。
お皿に手を伸ばしたが掴むものがない。空気をもみもみとした後で、そろそろ帰るかと腹を括って足を崩した時だった。
「死にたいのか?」
聞き慣れない声が耳に届いた。
父よりも低い。それに少しだけかすれている。年齢は四十~五十代といったところだろうか。
「お前は一生を終えたいのか?」
要領を得ない私に、耳元で声の主が少し言い方を変えた問いを繰り返す。たまたま巡回していたら、自殺志願者を見つけてしまったとでも思ったのだろう。
早く終わんないかなから、一生を終えたいって話が飛躍しすぎじゃない?
普通の人ならそんなこと思わないよね?
悪役令嬢であると自覚したのが数日前。
役目から逃げようとしたから、今度は死神でも派遣された?
死亡エンドまでのタイムリミット短すぎない?
もうちょっと心に余裕を持って欲しい所だ。
だけどこんな時、お客様の声を投書する場所など教えられていない。ツイてないと割り切って次に行くか。
よくいえば聞き分けの良い、悪くいえば諦めが早い私は早々に今世への執着を捨てる。
けれど一応質問されたら答えるのがマナーというものだろう。両手を上げて、魂回収に抵抗する意思がないことを示しながら、問いに答える。
「進んで死にたいとは思いません。けれど神のご意志に逆らう気もありません」
この世界に神様が存在するのかは知らないけれど、正直トップの存在が神でなくても構わない。
無駄に敵視されたり、異端分子としてみなされるよりもずっとマシ。無駄な抵抗は止め、長いものには巻かれる。
「ではなぜドラゴンに殺されたいなど世迷い事を口にした」
あ、結構序盤から聞いていたのか。なら自殺志願と勘違いされても不思議ではないか。
心配して声かけてくれたのかな?
死に神だなんて勘違いして申し訳ない。
両手を挙げたまま、言い訳の言葉を紡ぐ。
「人に殺されるよりはマシという話でして。比較の問題です」
「殺されることが前提なのはなぜだ?」
そこを突っ込まれるとなぁ……。
実は私、前世の記憶がありまして~だの未来を知っているだの言っても頭がおかしいと思われるだけだ。
今でも十分ヤバい奴だと思われているのだろうが、わざわざ初対面の人に話すこともないだろう。
「それが私の運命ですので」
声の主が誰かも分からずに、それっぽい言葉を吐く。
もういっそ変な令嬢認定されてもいいからさっさと帰ってくれないかな~なんて遠くを見つめる。けれどその人は一向に立ち去ってはくれない。
「運命、か……。お前はそれに逆らおうとは思わないのか?」
運命だなんて言葉を飲み込んで、さらに踏み込もうとしてくる。
一体どこのお節介さんだ! 放っておいてくれればいいのに……。
父の知り合いとか?
会場を抜け出しただけではなく、死にたがりだなんて余計なこと言われたら面倒臭いな……。
だが背後にいる相手がどんな人であっても、いつか私の元に運命の相手が現れる。
知識のない私ではどうしようもない運命を背負ってくる相手が。
せめてシナリオの大筋だけでも知っていれば、抵抗する気力も沸いたかもしれない。だが何も知らないのだ。
前世だって成人前に死んで、今世だって十年くらいしか生きていない。
常識と非常識の境目が分かるくらいの子どもがどう立ち向かおうというのか。はっきり言って私は頭がよろしくない。
特殊な知識も技能もない。
顔の作りと爵位はそこそこだが、私程度他に何人もいる。
運命に逆らった所で得られるものもない。抵抗したって無駄なのだ。
「とんでもございません。私ごときが逆らえるなど、それこそ世迷い事でございます」
ここで勘違いされるのもまた、私の運命なのではないか。そう思うと一気に気が楽になってくる。
「お前が相手なら私は……」
後ろの誰かさんは何を思ったのか、私の耳元で謎の言葉を小さく呟く。
だが「最後の方聞こえなかったのでもう一回言ってください」という勇気はない。
それに、内容よりも耳元で聞こえる音が気になる。
バッサバッサとまるで鳥が飛んでいるような音。とてもバラ園で聞くような音ではない。
突如として聞こえ始めた異質な音の正体が気になり、我慢出来ずに振り向いた。
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