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7.交換アイテムが増えたYO
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数日したら狙われなくなるかな、なんてショートケーキのように甘い考えはすぐさまぺしゃんこに潰された。
あれから町へ降りるかギルドに行けば後を付けられ、仕事を受ければいつでも頭下げに来てくれて構わないとばかりに視線を送ってくる良い先輩気取りの冒険者。
これじゃあろくに仕事もできやしないと私のストレス発散&ポイント稼ぎのために切りすてられるゴブリンを筆頭とした魔物達。
アイテム倉庫に溜まっていく魔石だが、周りの視線がつきまとうせいで初回以降、換金出来ていない。
ポイント生活には困らないけど、現地の生活もしてみたい。かといって邪魔な人達を力を以て制するのも罪悪感がある。今のところまだ実害は何も受けてない。それに人間を魔物と同じ感覚でバッサリするのは私の倫理観が全力でブレーキを踏んでいる。ストレスは少しずつアクセルに力を入れ始めているから根比べ中だ。
「なんか良い方法ないかな~」
指をくるくるさせながら数日前に取得した魔法を発動させる。
名称はストーム。名前の通り、竜巻を起こす魔法だ。解錠スキルのおかげで初日からレベルは10まで上げ終えており、指をくるくるしているだけでも周りの魔物は一掃されていく。
その間にドロップしたアイテムは風の力で足下に集まるのだから考え事中にもってこいのスキルだ。
難点をあげるならいつの間にか周りの木々まで伐採してしまうことくらいだろうか。
それも途中でドロップ品『木材』に変換されるので、有り難く回収させてもらっている。誰かが所有している山とかだったら問題なのだろうが、ガイドブックによると勝手にいろいろと採取していい地点のようだ。間違っていたら無知な少女を装うことにしよう。
怖い大人数人に追いかけられて、怖くて……とか言っておけばどうとでもなるだろう。
ならなかったら気絶させて逃げるか、偽装スキルで脳内をいじらせてもらうか。
偽装スキルが記憶偽装も出来るのかは分からないけど、出来なかったらその時はその時だ。
さすがに自分で試そうとは思えないからぶっつけ本番になる。一種の賭けのようなものだ。もちろんどちらに転んだところで私に損はないのだが。
「私がDIYとか出来れば木材使って机とか作るんだけどな~」
あまり感覚を空けずに町に降りてもいつも以上の人がついてくるだけだし、暇つぶしになりそうなもの何かないかなと呟いた時だった。ピコーンと脳内に聞き慣れた音が響く。
『交換可能一覧に〈書物〉が加わりました」
書物って何?
読書でもして時間を潰せってこと?
漫画あるかな、漫画。
早速交換画面を開き〈NEW 書物〉と書かれたボタンをタップする。表示された画面に並べられたタイトルから前世でお気に入りだったバトル漫画を探してスクロールしていったのだが……。
「家事系の雑誌縛り?」
表示されるのはどれも『ワンランク上の暮らしをあなたに』だの『スパイスは食の肥やし』だの『初心者向け 裁縫指南』だのばかりだ。かと思えば下に行くにつれて異世界っぽい本のタイトルも出てくる。
「『錬金術で家具作っちゃいましょうYO』ってどことなくノリが古い……」
タイトルセンスと、なぜわざわざ錬金術で家具を作らなければいけないのかという突っ込みはさておき、錬金術の使い方が書かれたものだろう。
攻略ガイドと別枠で用意されている上にポイントが4桁と高めに設定されていることに若干の不満はあるが、ポイントには余裕がある。駄作だったらその時は速攻でリサイクル行き。厚さによってはタオルを追加で交換して枕にでもすることにしよう。
4桁越えのものを安易に交換するなんて私もとんだギャンブラーだ。
これを浪費として終わらせないでよね! と念じてボタンを押した。
手の中に現れたのはタイトルだけでなく、表紙イラストもどことなく昔を感じさせる。
頭にバンダナ巻いてサングラスかけた無精ひげのラッパーっていつの人だろう……。
この世界、このスタイルが流行ってたりするのだろうか。
せめて髭はどうにかして欲しいんだけど、少女を追い回す趣味? がある人も多いみたいだし、この世界の感覚を私の定規で計るのはもう諦めた方がよさそうだ。
でも女性の流行もこんなじゃないといいな~と願わざるを得ない。
だってどっからどう見てもダサいし。
中身でもこのノリ続くのかな?
あまり期待せずにぺらりぺらりと斜め読みをしながら視線を進めていく。
製作過程にYOだのHEYだのよく分からないテンションが混ざるが、それ以外はまともでとわかりやすい。ラッパー気取っておいて全く韻を踏んでいないため、ラップ教養がある人からすると許しがたいものかもしれないが、幸いにも私にその手の教養はない。
「これ当たりじゃない?」
実際作ってみないと分からないが、これはなかなかいい買い物をしたのではないだろうか。
初めのページへと戻り、早速一番簡単らしい椅子を作ってみる。
作り方は簡単だ。
初めに材料である木材と魔物の魔石を5:1の割合で用意する。
次に錬金術を発動させながら合成させるイメージで両手で材料を圧縮していく――以上!
錬金するための釜や釜の代わりのアイテムが必要な場合もあるらしいが、今回のように簡単な錬金には不要だそうだ。椅子出来ろ~と念じながら左右の手を近づけて中身を圧縮していく。ぴったりと両手がくっつくと『チャンチャッチャーン』と新種の音が響く。
おそらくこれが完成の合図なのだろう。
説明に従って手のひらが地面に向くように開くと――木製の椅子が目の前に登場した。書かれているイラストとは形が違うが、こちらはしっかりと背もたれがある。
「初めての錬金にして上位互換アイテムを手に入れるとか、チート最高! YEAH!」
ほんのちょっぴり書物の影響を受けながらも、続けて机も作成した。
これでテントの中で地べたにご飯置きながら食べる生活とはおさらばだ!
あれから町へ降りるかギルドに行けば後を付けられ、仕事を受ければいつでも頭下げに来てくれて構わないとばかりに視線を送ってくる良い先輩気取りの冒険者。
これじゃあろくに仕事もできやしないと私のストレス発散&ポイント稼ぎのために切りすてられるゴブリンを筆頭とした魔物達。
アイテム倉庫に溜まっていく魔石だが、周りの視線がつきまとうせいで初回以降、換金出来ていない。
ポイント生活には困らないけど、現地の生活もしてみたい。かといって邪魔な人達を力を以て制するのも罪悪感がある。今のところまだ実害は何も受けてない。それに人間を魔物と同じ感覚でバッサリするのは私の倫理観が全力でブレーキを踏んでいる。ストレスは少しずつアクセルに力を入れ始めているから根比べ中だ。
「なんか良い方法ないかな~」
指をくるくるさせながら数日前に取得した魔法を発動させる。
名称はストーム。名前の通り、竜巻を起こす魔法だ。解錠スキルのおかげで初日からレベルは10まで上げ終えており、指をくるくるしているだけでも周りの魔物は一掃されていく。
その間にドロップしたアイテムは風の力で足下に集まるのだから考え事中にもってこいのスキルだ。
難点をあげるならいつの間にか周りの木々まで伐採してしまうことくらいだろうか。
それも途中でドロップ品『木材』に変換されるので、有り難く回収させてもらっている。誰かが所有している山とかだったら問題なのだろうが、ガイドブックによると勝手にいろいろと採取していい地点のようだ。間違っていたら無知な少女を装うことにしよう。
怖い大人数人に追いかけられて、怖くて……とか言っておけばどうとでもなるだろう。
ならなかったら気絶させて逃げるか、偽装スキルで脳内をいじらせてもらうか。
偽装スキルが記憶偽装も出来るのかは分からないけど、出来なかったらその時はその時だ。
さすがに自分で試そうとは思えないからぶっつけ本番になる。一種の賭けのようなものだ。もちろんどちらに転んだところで私に損はないのだが。
「私がDIYとか出来れば木材使って机とか作るんだけどな~」
あまり感覚を空けずに町に降りてもいつも以上の人がついてくるだけだし、暇つぶしになりそうなもの何かないかなと呟いた時だった。ピコーンと脳内に聞き慣れた音が響く。
『交換可能一覧に〈書物〉が加わりました」
書物って何?
読書でもして時間を潰せってこと?
漫画あるかな、漫画。
早速交換画面を開き〈NEW 書物〉と書かれたボタンをタップする。表示された画面に並べられたタイトルから前世でお気に入りだったバトル漫画を探してスクロールしていったのだが……。
「家事系の雑誌縛り?」
表示されるのはどれも『ワンランク上の暮らしをあなたに』だの『スパイスは食の肥やし』だの『初心者向け 裁縫指南』だのばかりだ。かと思えば下に行くにつれて異世界っぽい本のタイトルも出てくる。
「『錬金術で家具作っちゃいましょうYO』ってどことなくノリが古い……」
タイトルセンスと、なぜわざわざ錬金術で家具を作らなければいけないのかという突っ込みはさておき、錬金術の使い方が書かれたものだろう。
攻略ガイドと別枠で用意されている上にポイントが4桁と高めに設定されていることに若干の不満はあるが、ポイントには余裕がある。駄作だったらその時は速攻でリサイクル行き。厚さによってはタオルを追加で交換して枕にでもすることにしよう。
4桁越えのものを安易に交換するなんて私もとんだギャンブラーだ。
これを浪費として終わらせないでよね! と念じてボタンを押した。
手の中に現れたのはタイトルだけでなく、表紙イラストもどことなく昔を感じさせる。
頭にバンダナ巻いてサングラスかけた無精ひげのラッパーっていつの人だろう……。
この世界、このスタイルが流行ってたりするのだろうか。
せめて髭はどうにかして欲しいんだけど、少女を追い回す趣味? がある人も多いみたいだし、この世界の感覚を私の定規で計るのはもう諦めた方がよさそうだ。
でも女性の流行もこんなじゃないといいな~と願わざるを得ない。
だってどっからどう見てもダサいし。
中身でもこのノリ続くのかな?
あまり期待せずにぺらりぺらりと斜め読みをしながら視線を進めていく。
製作過程にYOだのHEYだのよく分からないテンションが混ざるが、それ以外はまともでとわかりやすい。ラッパー気取っておいて全く韻を踏んでいないため、ラップ教養がある人からすると許しがたいものかもしれないが、幸いにも私にその手の教養はない。
「これ当たりじゃない?」
実際作ってみないと分からないが、これはなかなかいい買い物をしたのではないだろうか。
初めのページへと戻り、早速一番簡単らしい椅子を作ってみる。
作り方は簡単だ。
初めに材料である木材と魔物の魔石を5:1の割合で用意する。
次に錬金術を発動させながら合成させるイメージで両手で材料を圧縮していく――以上!
錬金するための釜や釜の代わりのアイテムが必要な場合もあるらしいが、今回のように簡単な錬金には不要だそうだ。椅子出来ろ~と念じながら左右の手を近づけて中身を圧縮していく。ぴったりと両手がくっつくと『チャンチャッチャーン』と新種の音が響く。
おそらくこれが完成の合図なのだろう。
説明に従って手のひらが地面に向くように開くと――木製の椅子が目の前に登場した。書かれているイラストとは形が違うが、こちらはしっかりと背もたれがある。
「初めての錬金にして上位互換アイテムを手に入れるとか、チート最高! YEAH!」
ほんのちょっぴり書物の影響を受けながらも、続けて机も作成した。
これでテントの中で地べたにご飯置きながら食べる生活とはおさらばだ!
応援ありがとうございます!
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