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本章 八
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夢を、見ていた。小さな頃の、勇者さんに出会えた頃の自分を見ている夢を。
「魔王が居なくなったら、何をしてみたい?」
どういう場所でそれを尋ねられたのかは覚えていない。
けれど、その問い掛けだけは覚えている。
勇者さんがどんな姿をしていて、どんな声で言ってくれたのか、それすら覚えてはいないけれど。
「したい、こと?」
最初は、何を答えれば良いのかが分からなかった。
物心ついた頃には魔王なんてモノが居て、それは絶対で、それが居るせいで起こった争いに巻き込まれて自分の両親が死んでもそれは当たり前のものなんだって、そう思わなければならなかったあの頃、魔王が居なくなるなんて想像することすら出来なかったからだ。
それにその時のオレにとっては、そんなことよりももっともっと大事だと思えることがあった。
勇者さんとずっと一緒に居たい、それがその時のオレの一番の願いだったんだ。
両親が死んで、村の中で厄介者だったオレがその時一番に願っていたことはそれだった。
でも、それを口にしちゃダメだって、その時のオレは思っていた。ううん、思わされていた。
誰もがみんな願っていた。勇者さんが魔王を倒すことを。
どれだけその為に勇者さんが傷つき苦しむとしても、誰もがそれを望んでいた。
だから、それは口にしちゃいけない事なんだって、思っていた。
最後の最後、勇者さんが魔王を倒しに行く為に旅立ってしまう、その時は結局は我慢が出来なかったけれど。
だからその時、勇者さんにしたいことを尋ねられてもすぐには答えられなかった。
一番の願いはもう決まっている。
けれどそれを口にすることは出来なくて、何を望めば良いのか分からなかった。
だから、自分が知っている一番楽しかったことを口にした。
「お祭がしたい」
それは両親が生きていた頃、たった一度だけあったお祭りを思い出して言った言葉だった。
それはささやかで小さな小さなお祭だったけれど、子供だったオレには両親と一緒に楽しめた一番の思い出だった。
「お祭?」
不思議そうに、勇者さんは聞き返した。
それは、お祭りという言葉自体がよく分からない、そんな響きが滲んでいた。
「知らないの? お祭」
オレは不安になって聞き返す。自分が一番楽しかったと思えたこと、それを勇者さんが知らないことが、何故だかとても怖かった。
今ならそれが何故だったか分かる。
理解して貰えないんじゃないかっていう怯えと、勇者さんが望んだ答えを口にする事ができなかったかもしれないっていう恐ろしさ。
それは、勇者さんに嫌われるんじゃないかっていう思い込みだった。
でも、そんなものは勘違いだった。
勇者さんはどこか恥ずかしそうに、けれどワクワクと期待するような響きを滲ませて、
「教えてくれるか? お祭りというものがどんモノなのか。知ってみたいんだ、お祭ってものを」
オレの言葉を望んでくれた。だから、オレは笑顔を一杯に浮かべ、
「うんっ。あのね、お祭ってね――」
自分が知る限りの精一杯を、自分が楽しんだお祭だけでなく両親からも聞かせて貰った、魔王なんてモノが居なかった、両親が子供の頃のお祭のお話、そしてそれがどれだけ楽しかったかっていうその全てを、勇者さんに話し続けた。
その時だけでなく、二人きりになれた時はいつもいつも。
夢見るように、そして遊ぶように、勇者さんと一緒に話し続けた。
それが、オレが持っている一番の思い出。
楽しくて嬉しかった、思い出すといつも苦しくてそれでいてあたたかくなれるような、そんな思い出だった。
オレはそんな、今では届かない思い出がくれる想いに包まれながら、意識を浮かび上がらせていった。
「魔王が居なくなったら、何をしてみたい?」
どういう場所でそれを尋ねられたのかは覚えていない。
けれど、その問い掛けだけは覚えている。
勇者さんがどんな姿をしていて、どんな声で言ってくれたのか、それすら覚えてはいないけれど。
「したい、こと?」
最初は、何を答えれば良いのかが分からなかった。
物心ついた頃には魔王なんてモノが居て、それは絶対で、それが居るせいで起こった争いに巻き込まれて自分の両親が死んでもそれは当たり前のものなんだって、そう思わなければならなかったあの頃、魔王が居なくなるなんて想像することすら出来なかったからだ。
それにその時のオレにとっては、そんなことよりももっともっと大事だと思えることがあった。
勇者さんとずっと一緒に居たい、それがその時のオレの一番の願いだったんだ。
両親が死んで、村の中で厄介者だったオレがその時一番に願っていたことはそれだった。
でも、それを口にしちゃダメだって、その時のオレは思っていた。ううん、思わされていた。
誰もがみんな願っていた。勇者さんが魔王を倒すことを。
どれだけその為に勇者さんが傷つき苦しむとしても、誰もがそれを望んでいた。
だから、それは口にしちゃいけない事なんだって、思っていた。
最後の最後、勇者さんが魔王を倒しに行く為に旅立ってしまう、その時は結局は我慢が出来なかったけれど。
だからその時、勇者さんにしたいことを尋ねられてもすぐには答えられなかった。
一番の願いはもう決まっている。
けれどそれを口にすることは出来なくて、何を望めば良いのか分からなかった。
だから、自分が知っている一番楽しかったことを口にした。
「お祭がしたい」
それは両親が生きていた頃、たった一度だけあったお祭りを思い出して言った言葉だった。
それはささやかで小さな小さなお祭だったけれど、子供だったオレには両親と一緒に楽しめた一番の思い出だった。
「お祭?」
不思議そうに、勇者さんは聞き返した。
それは、お祭りという言葉自体がよく分からない、そんな響きが滲んでいた。
「知らないの? お祭」
オレは不安になって聞き返す。自分が一番楽しかったと思えたこと、それを勇者さんが知らないことが、何故だかとても怖かった。
今ならそれが何故だったか分かる。
理解して貰えないんじゃないかっていう怯えと、勇者さんが望んだ答えを口にする事ができなかったかもしれないっていう恐ろしさ。
それは、勇者さんに嫌われるんじゃないかっていう思い込みだった。
でも、そんなものは勘違いだった。
勇者さんはどこか恥ずかしそうに、けれどワクワクと期待するような響きを滲ませて、
「教えてくれるか? お祭りというものがどんモノなのか。知ってみたいんだ、お祭ってものを」
オレの言葉を望んでくれた。だから、オレは笑顔を一杯に浮かべ、
「うんっ。あのね、お祭ってね――」
自分が知る限りの精一杯を、自分が楽しんだお祭だけでなく両親からも聞かせて貰った、魔王なんてモノが居なかった、両親が子供の頃のお祭のお話、そしてそれがどれだけ楽しかったかっていうその全てを、勇者さんに話し続けた。
その時だけでなく、二人きりになれた時はいつもいつも。
夢見るように、そして遊ぶように、勇者さんと一緒に話し続けた。
それが、オレが持っている一番の思い出。
楽しくて嬉しかった、思い出すといつも苦しくてそれでいてあたたかくなれるような、そんな思い出だった。
オレはそんな、今では届かない思い出がくれる想いに包まれながら、意識を浮かび上がらせていった。
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