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第2章 沿岸地帯ジェイドの海産物勝負
3 海辺の街を散策して料理のアイデア探し その④
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「美味い物? だったら、港の周りに市が立ってるから、そこに行ってみるといいぜ」
網焼き屋台のオヤジが、五郎達に上機嫌で応える。
盛況なお客の賑わいに、あっという間に用意していたとうもろこしを全部売り切って、更に集めた食材も全部売れたのだ。
ほくほく気分で上機嫌なのも当たり前。その上、醤油も幾らか分けたので、懇切丁寧に教えてくれる。
「あそこで美味いのは、最近だとジャイロって料理だな。小麦粉を水で溶かしたヤツをうすーく焼いてな、それに焼いた魚やら貝やらエビやらイカやら入れて巻いて、そこに香辛料を入れたヤツなんだけど、これがピリ辛で美味くてな。
あとな、コプラの根っ子から取った汁を乾燥させた粉から作った甘いヤツがあるんだけど、こいつも食ってみな、美味いから。
それと、手間は掛かってないけど、俺ん所みたいな網焼きで、貝を焼いた所にオレアノの実から取った油をちょいと垂らしてな、そこに塩を振りかけたヤツも美味いぜ。今の季節だと、酸っぱい果物を掛けて食うのも良いかもな。それに――」
楽しそうに教えてくれる屋台のオヤジの言葉を聞いて、どんなものかと興味を持った五郎たちは、早速港近くの市場に訪れていた。
「賑やかっすねぇ」
有希の言葉通り、そこは活気に満ちていた。
雑多な魚介類が所狭しと屋台に並び、果物や野菜も溢れている。
中継都市であるジェイドなだけあって、香辛料やお茶の種類も数多い。
「聞いた話だと、ジャイロっての売ってるのはこの先みたいだけど、あそこで売ってる網焼きも気にならねぇか?」
五郎の視線の先には、熱でパカっと蓋を開けた手の平サイズの貝が、旨味たっぷりの汁をふつふつさせている。
「うわっ、美味しそー。食べたいな~」
ねだるように言うレティシアに、五郎は楽しそうに返す。
「おう。一緒にみんなで食べようぜ。奢るから、じゃんじゃん行こうぜ」
「わーい! ありがとー、ごろーさん! ふとっぱらー!」
五郎ら財布を受け取って、早速買いに行くレティシア。
「ちょ、レティ! もう!」
レティシアの遠慮の無さに、顔を赤らめるカリーナ。それに五郎は苦笑ながら、
「気にすんなって。こっちが奢りたいだけなんだから。一緒に食べる方が、俺は好きだからよ」
そう言って、カリーナの手を取って引っ張っていく。
「えっ! あっ、ううっ……」
顔を更に赤らめ、うつむかせながら引っ張られるカリーナ。
五郎はそれには全く気付いた様子もなく、レティシアから出来立ての焼き貝を貰って、カリーナに渡していたりした。
「アレは、わざとやってるのですかな?」
五郎の様子に肩をすくめるように言うアルベルトに、
「残念ながら、素っすよ」
同じく肩をすくめるようにして有希は返し、出来立ての焼き貝を食べに行く。
「うわっ、まだふつふつ言ってるっすねぇ」
出来立てで熱々の貝を、渡された木串で取り出す。
ぽたぽたと、旨味の汁を滴らせるそれを、ぱくりと一口に。
「はふふっ……熱いっすけど、美味いっすねぇ」
淡泊だが旨味たっぷりの貝は、噛み締める毎に美味しさが溢れてくる。
ほど良く振られた塩と、植物油のオレアノ油が、貝だけでは足らない塩味とコクを加えてくれていた。
残った汁も、少し冷めた所で飲んでみれば、これがまた美味い。
「こっちの、果物を絞ったヤツも、さっぱりしてて良いですな」
酸味のある果物を絞った物を振りかけられた貝を食べながら、アルベルトは言う。
他にも、香辛料の振り掛けられた、ピリッと刺激的な味わいの物も美味しい。
素朴だが、素材の味が楽しめる一品だった。
五郎たちの食べ歩きは、そこでは終わらず、進んでいく先々で食べていく。
「これ美味しい! つるんってしてて、食感も良いよね!」
「うん。美味しいね。コプラの実の根っ子で、こんな料理が出来るんだ」
レティシアとカリーナは、屋台のオヤジが勧めていた、コプラの実の根っ子から作った甘味に喜びの声を上げる。
一口サイズに切り分けられた半透明なそれは、コプラの果汁の入ったお碗に入っている。
ぷるぷるのそれは、ほんのりとした甘味を持っており、コプラの実の果汁と合わさって、さっぱりとした清涼感のある美味しさを味わえる。
噛めば、くにくにとして、つるりとした喉越しが心地良い。
(タピオカとか、葛の根みたいだな、これ)
元の世界の食べ物と比較しながら、五郎は利用法を考えていく。
(根っ子をすり潰して、水でこした物を干した粉から作ってるらしいけど、水に溶く割合やら、火に通す時の熱で食感も変わるみたいだし、これは色々と試してみたいな)
料理人として、五郎は食べながら考える。
それはアルベルトとカリーナも同じだ。
なので、途中から考え込むあまり無言になった3人を、レティシアと有希は引っ張っていきながら、屋台のオヤジ一押しを食べに行く。
「ジャイロ、5人前くださーい!」
元気よくレティシアが頼み、目の前で屋台のオヤジは作ってくれる。
よく熱せられた鉄板に、溶いた小麦粉が流されて、あっという間にクレープ状の生地が。
それに、塩と香辛料で炒めた白身魚とエビを入れ、しゃきしゃきした食感の青物野菜を刻んだ物を乗せる。
くるっとクレープ生地で具材を包み込んで出来上がり。
一口食べれば、ピリ辛で刺激的な味わいが。
「辛ーいっ! でも美味しーいっ!」
レティシアは美味しさに笑顔を浮かべる。
旨味があるが淡泊な白身魚やエビに香辛料が加わって、具材の物足りない部分を十二分に補っている。
ピリ辛ではあるが、そこを刻まれた野菜がまろやかにしてくれて、どんどん食べ続けたくなる味わいだ。
「ホントに、美味しいね、レティ」
味が気に入ったのか、料理人ではなく、年頃の少女の笑顔を見せるカリーナ。
そんな彼女の笑顔に心地好さを感じながら、一行は食べ歩きを続ける。
そうしてある程度食べ終わった後で、今度は料理勝負に使う食材を見て回ることに。
けれどそこで、五郎たちは望まぬ相手に絡まれた。
網焼き屋台のオヤジが、五郎達に上機嫌で応える。
盛況なお客の賑わいに、あっという間に用意していたとうもろこしを全部売り切って、更に集めた食材も全部売れたのだ。
ほくほく気分で上機嫌なのも当たり前。その上、醤油も幾らか分けたので、懇切丁寧に教えてくれる。
「あそこで美味いのは、最近だとジャイロって料理だな。小麦粉を水で溶かしたヤツをうすーく焼いてな、それに焼いた魚やら貝やらエビやらイカやら入れて巻いて、そこに香辛料を入れたヤツなんだけど、これがピリ辛で美味くてな。
あとな、コプラの根っ子から取った汁を乾燥させた粉から作った甘いヤツがあるんだけど、こいつも食ってみな、美味いから。
それと、手間は掛かってないけど、俺ん所みたいな網焼きで、貝を焼いた所にオレアノの実から取った油をちょいと垂らしてな、そこに塩を振りかけたヤツも美味いぜ。今の季節だと、酸っぱい果物を掛けて食うのも良いかもな。それに――」
楽しそうに教えてくれる屋台のオヤジの言葉を聞いて、どんなものかと興味を持った五郎たちは、早速港近くの市場に訪れていた。
「賑やかっすねぇ」
有希の言葉通り、そこは活気に満ちていた。
雑多な魚介類が所狭しと屋台に並び、果物や野菜も溢れている。
中継都市であるジェイドなだけあって、香辛料やお茶の種類も数多い。
「聞いた話だと、ジャイロっての売ってるのはこの先みたいだけど、あそこで売ってる網焼きも気にならねぇか?」
五郎の視線の先には、熱でパカっと蓋を開けた手の平サイズの貝が、旨味たっぷりの汁をふつふつさせている。
「うわっ、美味しそー。食べたいな~」
ねだるように言うレティシアに、五郎は楽しそうに返す。
「おう。一緒にみんなで食べようぜ。奢るから、じゃんじゃん行こうぜ」
「わーい! ありがとー、ごろーさん! ふとっぱらー!」
五郎ら財布を受け取って、早速買いに行くレティシア。
「ちょ、レティ! もう!」
レティシアの遠慮の無さに、顔を赤らめるカリーナ。それに五郎は苦笑ながら、
「気にすんなって。こっちが奢りたいだけなんだから。一緒に食べる方が、俺は好きだからよ」
そう言って、カリーナの手を取って引っ張っていく。
「えっ! あっ、ううっ……」
顔を更に赤らめ、うつむかせながら引っ張られるカリーナ。
五郎はそれには全く気付いた様子もなく、レティシアから出来立ての焼き貝を貰って、カリーナに渡していたりした。
「アレは、わざとやってるのですかな?」
五郎の様子に肩をすくめるように言うアルベルトに、
「残念ながら、素っすよ」
同じく肩をすくめるようにして有希は返し、出来立ての焼き貝を食べに行く。
「うわっ、まだふつふつ言ってるっすねぇ」
出来立てで熱々の貝を、渡された木串で取り出す。
ぽたぽたと、旨味の汁を滴らせるそれを、ぱくりと一口に。
「はふふっ……熱いっすけど、美味いっすねぇ」
淡泊だが旨味たっぷりの貝は、噛み締める毎に美味しさが溢れてくる。
ほど良く振られた塩と、植物油のオレアノ油が、貝だけでは足らない塩味とコクを加えてくれていた。
残った汁も、少し冷めた所で飲んでみれば、これがまた美味い。
「こっちの、果物を絞ったヤツも、さっぱりしてて良いですな」
酸味のある果物を絞った物を振りかけられた貝を食べながら、アルベルトは言う。
他にも、香辛料の振り掛けられた、ピリッと刺激的な味わいの物も美味しい。
素朴だが、素材の味が楽しめる一品だった。
五郎たちの食べ歩きは、そこでは終わらず、進んでいく先々で食べていく。
「これ美味しい! つるんってしてて、食感も良いよね!」
「うん。美味しいね。コプラの実の根っ子で、こんな料理が出来るんだ」
レティシアとカリーナは、屋台のオヤジが勧めていた、コプラの実の根っ子から作った甘味に喜びの声を上げる。
一口サイズに切り分けられた半透明なそれは、コプラの果汁の入ったお碗に入っている。
ぷるぷるのそれは、ほんのりとした甘味を持っており、コプラの実の果汁と合わさって、さっぱりとした清涼感のある美味しさを味わえる。
噛めば、くにくにとして、つるりとした喉越しが心地良い。
(タピオカとか、葛の根みたいだな、これ)
元の世界の食べ物と比較しながら、五郎は利用法を考えていく。
(根っ子をすり潰して、水でこした物を干した粉から作ってるらしいけど、水に溶く割合やら、火に通す時の熱で食感も変わるみたいだし、これは色々と試してみたいな)
料理人として、五郎は食べながら考える。
それはアルベルトとカリーナも同じだ。
なので、途中から考え込むあまり無言になった3人を、レティシアと有希は引っ張っていきながら、屋台のオヤジ一押しを食べに行く。
「ジャイロ、5人前くださーい!」
元気よくレティシアが頼み、目の前で屋台のオヤジは作ってくれる。
よく熱せられた鉄板に、溶いた小麦粉が流されて、あっという間にクレープ状の生地が。
それに、塩と香辛料で炒めた白身魚とエビを入れ、しゃきしゃきした食感の青物野菜を刻んだ物を乗せる。
くるっとクレープ生地で具材を包み込んで出来上がり。
一口食べれば、ピリ辛で刺激的な味わいが。
「辛ーいっ! でも美味しーいっ!」
レティシアは美味しさに笑顔を浮かべる。
旨味があるが淡泊な白身魚やエビに香辛料が加わって、具材の物足りない部分を十二分に補っている。
ピリ辛ではあるが、そこを刻まれた野菜がまろやかにしてくれて、どんどん食べ続けたくなる味わいだ。
「ホントに、美味しいね、レティ」
味が気に入ったのか、料理人ではなく、年頃の少女の笑顔を見せるカリーナ。
そんな彼女の笑顔に心地好さを感じながら、一行は食べ歩きを続ける。
そうしてある程度食べ終わった後で、今度は料理勝負に使う食材を見て回ることに。
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