異世界にて料理勝負をする事になりました

笹村

文字の大きさ
23 / 28
第2章 沿岸地帯ジェイドの海産物勝負

3 海辺の街を散策して料理のアイデア探し その④

しおりを挟む
「美味い物? だったら、港の周りに市が立ってるから、そこに行ってみるといいぜ」

 網焼き屋台のオヤジが、五郎達に上機嫌で応える。
 盛況なお客の賑わいに、あっという間に用意していたとうもろこしを全部売り切って、更に集めた食材も全部売れたのだ。
 ほくほく気分で上機嫌なのも当たり前。その上、醤油も幾らか分けたので、懇切丁寧に教えてくれる。

「あそこで美味いのは、最近だとジャイロって料理だな。小麦粉を水で溶かしたヤツをうすーく焼いてな、それに焼いた魚やら貝やらエビやらイカやら入れて巻いて、そこに香辛料を入れたヤツなんだけど、これがピリ辛で美味くてな。
 あとな、コプラの根っ子から取った汁を乾燥させた粉から作った甘いヤツがあるんだけど、こいつも食ってみな、美味いから。
 それと、手間は掛かってないけど、俺ん所みたいな網焼きで、貝を焼いた所にオレアノの実から取った油をちょいと垂らしてな、そこに塩を振りかけたヤツも美味いぜ。今の季節だと、酸っぱい果物を掛けて食うのも良いかもな。それに――」

 楽しそうに教えてくれる屋台のオヤジの言葉を聞いて、どんなものかと興味を持った五郎たちは、早速港近くの市場に訪れていた。

「賑やかっすねぇ」

 有希の言葉通り、そこは活気に満ちていた。
 雑多な魚介類が所狭しと屋台に並び、果物や野菜も溢れている。
 中継都市であるジェイドなだけあって、香辛料やお茶の種類も数多い。 

「聞いた話だと、ジャイロっての売ってるのはこの先みたいだけど、あそこで売ってる網焼きも気にならねぇか?」

 五郎の視線の先には、熱でパカっと蓋を開けた手の平サイズの貝が、旨味たっぷりの汁をふつふつさせている。

「うわっ、美味しそー。食べたいな~」

 ねだるように言うレティシアに、五郎は楽しそうに返す。

「おう。一緒にみんなで食べようぜ。奢るから、じゃんじゃん行こうぜ」
「わーい! ありがとー、ごろーさん! ふとっぱらー!」

 五郎ら財布を受け取って、早速買いに行くレティシア。

「ちょ、レティ! もう!」

 レティシアの遠慮の無さに、顔を赤らめるカリーナ。それに五郎は苦笑ながら、

「気にすんなって。こっちが奢りたいだけなんだから。一緒に食べる方が、俺は好きだからよ」

 そう言って、カリーナの手を取って引っ張っていく。

「えっ! あっ、ううっ……」

 顔を更に赤らめ、うつむかせながら引っ張られるカリーナ。
 五郎はそれには全く気付いた様子もなく、レティシアから出来立ての焼き貝を貰って、カリーナに渡していたりした。

「アレは、わざとやってるのですかな?」

 五郎の様子に肩をすくめるように言うアルベルトに、

「残念ながら、素っすよ」

 同じく肩をすくめるようにして有希は返し、出来立ての焼き貝を食べに行く。

「うわっ、まだふつふつ言ってるっすねぇ」

 出来立てで熱々の貝を、渡された木串で取り出す。
 ぽたぽたと、旨味の汁を滴らせるそれを、ぱくりと一口に。

「はふふっ……熱いっすけど、美味いっすねぇ」

 淡泊だが旨味たっぷりの貝は、噛み締める毎に美味しさが溢れてくる。
 ほど良く振られた塩と、植物油のオレアノ油が、貝だけでは足らない塩味とコクを加えてくれていた。
 残った汁も、少し冷めた所で飲んでみれば、これがまた美味い。

「こっちの、果物を絞ったヤツも、さっぱりしてて良いですな」

 酸味のある果物を絞った物を振りかけられた貝を食べながら、アルベルトは言う。
 他にも、香辛料の振り掛けられた、ピリッと刺激的な味わいの物も美味しい。
 素朴だが、素材の味が楽しめる一品だった。 

 五郎たちの食べ歩きは、そこでは終わらず、進んでいく先々で食べていく。

「これ美味しい! つるんってしてて、食感も良いよね!」
「うん。美味しいね。コプラの実の根っ子で、こんな料理が出来るんだ」

 レティシアとカリーナは、屋台のオヤジが勧めていた、コプラの実の根っ子から作った甘味に喜びの声を上げる。

 一口サイズに切り分けられた半透明なそれは、コプラの果汁の入ったお碗に入っている。
 ぷるぷるのそれは、ほんのりとした甘味を持っており、コプラの実の果汁と合わさって、さっぱりとした清涼感のある美味しさを味わえる。

 噛めば、くにくにとして、つるりとした喉越しが心地良い。

(タピオカとか、葛の根みたいだな、これ)

 元の世界の食べ物と比較しながら、五郎は利用法を考えていく。

(根っ子をすり潰して、水でこした物を干した粉から作ってるらしいけど、水に溶く割合やら、火に通す時の熱で食感も変わるみたいだし、これは色々と試してみたいな)

 料理人として、五郎は食べながら考える。
 それはアルベルトとカリーナも同じだ。
 なので、途中から考え込むあまり無言になった3人を、レティシアと有希は引っ張っていきながら、屋台のオヤジ一押しを食べに行く。

「ジャイロ、5人前くださーい!」

 元気よくレティシアが頼み、目の前で屋台のオヤジは作ってくれる。
 よく熱せられた鉄板に、溶いた小麦粉が流されて、あっという間にクレープ状の生地が。
 それに、塩と香辛料で炒めた白身魚とエビを入れ、しゃきしゃきした食感の青物野菜を刻んだ物を乗せる。

 くるっとクレープ生地で具材を包み込んで出来上がり。
 一口食べれば、ピリ辛で刺激的な味わいが。

「辛ーいっ! でも美味しーいっ!」

 レティシアは美味しさに笑顔を浮かべる。
 旨味があるが淡泊な白身魚やエビに香辛料が加わって、具材の物足りない部分を十二分に補っている。

 ピリ辛ではあるが、そこを刻まれた野菜がまろやかにしてくれて、どんどん食べ続けたくなる味わいだ。

「ホントに、美味しいね、レティ」

 味が気に入ったのか、料理人ではなく、年頃の少女の笑顔を見せるカリーナ。
 そんな彼女の笑顔に心地好さを感じながら、一行は食べ歩きを続ける。

 そうしてある程度食べ終わった後で、今度は料理勝負に使う食材を見て回ることに。

 けれどそこで、五郎たちは望まぬ相手に絡まれた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました

雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。 気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。 剣も魔法も使えないユウにできるのは、 子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。 ……のはずが、なぜか料理や家事といった 日常のことだけが、やたらとうまくいく。 無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。 個性豊かな子供たちに囲まれて、 ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。 やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、 孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。 戦わない、争わない。 ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。 ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、 やさしい異世界孤児院ファンタジー。

『異世界ガチャでユニークスキル全部乗せ!? ポンコツ神と俺の無自覚最強スローライフ』

チャチャ
ファンタジー
> 仕事帰りにファンタジー小説を買った帰り道、不運にも事故死した38歳の男。 気がつくと、目の前には“ポンコツ”と噂される神様がいた——。 「君、うっかり死んじゃったから、異世界に転生させてあげるよ♪」 「スキル? ステータス? もちろんガチャで決めるから!」 最初はブチギレ寸前だったが、引いたスキルはなんと全部ユニーク! 本人は気づいていないが、【超幸運】の持ち主だった! 「冒険? 魔王? いや、俺は村でのんびり暮らしたいんだけど……」 そんな願いとは裏腹に、次々とトラブルに巻き込まれ、無自覚に“最強伝説”を打ち立てていく! 神様のミスで始まった異世界生活。目指すはスローライフ、されど周囲は大騒ぎ! ◆ガチャ転生×最強×スローライフ! 無自覚チートな元おっさんが、今日も異世界でのんびり無双中!

【完結】平凡な魔法使いですが、国一番の騎士に溺愛されています

空月
ファンタジー
この世界には『善い魔法使い』と『悪い魔法使い』がいる。 『悪い魔法使い』の根絶を掲げるシュターメイア王国の魔法使いフィオラ・クローチェは、ある日魔法の暴発で幼少時の姿になってしまう。こんな姿では仕事もできない――というわけで有給休暇を得たフィオラだったが、一番の友人を自称するルカ=セト騎士団長に、何故かなにくれとなく世話をされることに。 「……おまえがこんなに子ども好きだとは思わなかった」 「いや、俺は子どもが好きなんじゃないよ。君が好きだから、子どもの君もかわいく思うし好きなだけだ」 そんなことを大真面目に言う国一番の騎士に溺愛される、平々凡々な魔法使いのフィオラが、元の姿に戻るまでと、それから。 ◆三部完結しました。お付き合いありがとうございました。(2024/4/4)

第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。

黒ハット
ファンタジー
 前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。  

『異世界に転移した限界OL、なぜか周囲が勝手に盛り上がってます』

宵森みなと
ファンタジー
ブラック気味な職場で“お局扱い”に耐えながら働いていた29歳のOL、芹澤まどか。ある日、仕事帰りに道を歩いていると突然霧に包まれ、気がつけば鬱蒼とした森の中——。そこはまさかの異世界!?日本に戻るつもりは一切なし。心機一転、静かに生きていくはずだったのに、なぜか事件とトラブルが次々舞い込む!?

莫大な遺産を相続したら異世界でスローライフを楽しむ

翔千
ファンタジー
小鳥遊 紅音は働く28歳OL 十八歳の時に両親を事故で亡くし、引き取り手がなく天涯孤独に。 高校卒業後就職し、仕事に明け暮れる日々。 そんなある日、1人の弁護士が紅音の元を訪ねて来た。 要件は、紅音の母方の曾祖叔父が亡くなったと言うものだった。 曾祖叔父は若い頃に単身外国で会社を立ち上げ生涯独身を貫いき、血縁者が紅音だけだと知り、曾祖叔父の遺産を一部を紅音に譲ると遺言を遺した。 その額なんと、50億円。 あまりの巨額に驚くがなんとか手続きを終える事が出来たが、巨額な遺産の事を何処からか聞きつけ、金の無心に来る輩が次々に紅音の元を訪れ、疲弊した紅音は、誰も知らない土地で一人暮らしをすると決意。 だが、引っ越しを決めた直後、突然、異世界に召喚されてしまった。 だが、持っていた遺産はそのまま異世界でも使えたので、遺産を使って、スローライフを楽しむことにしました。

1歳児天使の異世界生活!

春爛漫
ファンタジー
 夫に先立たれ、女手一つで子供を育て上げた皇 幸子。病気にかかり死んでしまうが、天使が迎えに来てくれて天界へ行くも、最高神の創造神様が一方的にまくしたてて、サチ・スメラギとして異世界アラタカラに創造神の使徒(天使)として送られてしまう。1歳の子供の身体になり、それなりに人に溶け込もうと頑張るお話。 ※心は大人のなんちゃって幼児なので、あたたかい目で見守っていてください。

転生貴族の領地経営〜現代日本の知識で異世界を豊かにする

ファンタジー
ローラシア王国の北のエルラント辺境伯家には天才的な少年、リーゼンしかしその少年は現代日本から転生してきた転生者だった。 リーゼンが洗礼をしたさい、圧倒的な量の加護やスキルが与えられた。その力を見込んだ父の辺境伯は12歳のリーゼンを辺境伯家の領地の北を治める代官とした。 これはそんなリーゼンが異世界の領地を経営し、豊かにしていく物語である。

処理中です...