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第一章 街を作る前準備編
5 転生仲間との話し合い その②
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とりあえずイイ笑顔を浮かべながら、俺は2人に言った。
「帰れ」
「どこにーっ!」
「いきなりは酷くない!」
ガッチャガッチャ大騒ぎしながら返すバカ2人。動くたびに、ぷしゃーっぷしゅーっと白い蒸気が至る所から漏れ出る。
「爆発せんだろうな、それ」
「自爆装置は標準装備だ!」
「ただの危険物じゃねぇか!」
「自爆は紳士のたしみなんだぞ!」
「そんな異次元な紳士いてたまるか!」
いつもの如く平常運転な2人に、いつもの如く突っ込まざるを得ない俺。
気付けば、菊野さんは一歩下がった所で静かにこっちを見てる。
「蔑みの眼差しが心地好いと思わないか?」
「同志なのだな!」
「俺まで巻き込むな!」
気のせいか、菊野さんのこっちを見る眼差しの生温かさが上がった気がする。
「とりあえず、それ脱げ。話はそれからだ」
こいつらのペースに合わせると話がいつまでたっても進まないので、少し強めの口調で2人に言うと、
「ふっ、ふはははははっ!」
「脱げ? 脱げだと?」
2人は意味も無く笑った後、
「「脱げないので脱がして下さい!!」」
ハモって言った。
「馬鹿か!」
「確認するまでも無いですね」
思わず声を上げた俺に、冷静にツッコミを入れる菊野さん。いかん、ちょっと恥い。
「……脱げないって、どうすりゃ良いんだよ」
菊野さんのツッコミで少し頭の冷えた俺が2人に聞くと、
「背中に、着脱用ボタンあるから、それ押してくれ」
「これ着てると、腕がそこまで回らないので無理なのだ」
ガッチョンガッチョン武骨な腕を回そうとしながら回し切れずに懇願してくる。しょうがないので2人の内、長身な八雲の背中に先に回ると、
「着脱用ボタンって……この赤いヤツか?」
ひとしきり背中を見て回った後に見つけた、赤いボタンがそうなのか聞いてみる。
「そうそう、それそれ。押してくれ」
「ん、分かった。押すぞ」
ぽちっと押してみる。が、何も起きない。
「押したぞ? 何の変化も無いけど、これで良いのか?」
「いや、16連射してくれ」
「多いわ! なんだその無駄な仕組み!」
呆れるけどしょうがないので連打してみる。
「押したぞ!」
「残念! 秒間16連射だ!」
「だからなんだその無駄機能!」
思わずツッコミを入れると、
「マジレスすると、間違って脱げたりしないようにする安全装置なのだ」
小柄な蒸気甲冑を着た出雲に返される。
「……なるほど。それ自体は納得できるけど、限度があるだろ。もうちょい簡単にしとけ」
「機能の限界を試してみたかった。反省はしている。後悔はしてない」
「お前は後悔しとけ、八雲」
げんなりしつつボタンを猛烈連射してやると、関節部分の至る所から白い蒸気を出しながら蒸気甲冑が着脱される。
「ふぅ。窮屈だった」
蒸気甲冑の下から出てきたのは、作業着に身を包んだ30後半に見える厳つい男。出雲と同じく造形神デミウルゴスに転生召喚された勇者の一人、叢雲八雲だ。
「窮屈って、それならなんでそんなの着てここに居る」
「ふっ。以前お前にはハリボテなプロトタイプを見せただけだからな。先日ついに装着できる試作品が出来て嬉しくて、驚かせたくなった」
「驚くより呆れるわ。それより、出雲も早く脱げ」
「脱げって。いやらしいのだ」
「その格好に欠片もエロス感じんから、いらん心配せんで早く脱げ」
「むぅ。分かったのだ。八雲、脱がせて~」
「おう。ちょっと待て」
手慣れた様子で着脱ボタンを16連射する八雲。
「手間のかかる物作ったな、お前ら。それ、使い勝手悪いだろ」
「作った後に気付いた」
「作る前に気付け」
「思いついちゃったら楽しくなってな。止まらなくなった。っと――」
着脱ボタンを押し終わり、出雲から離れる八雲。白い蒸気が流れる中、武骨な蒸気甲冑から一人の少女が現れる。
「はふぅ~。やっぱの生身の方が楽なのだ。装着性の快適さが次の課題になるのだ」
八雲と同じ作業着を着込んだ、小柄な少女に見える彼女が、八雲と同じく造形神デミウルゴスに転生召喚された勇者の一人、出雲栞奈だ。
見た目は、こちらの世界に転生召喚された時と変わらず、相変わらずかわいらしい。もっとも、見た目が変わらないのは、転生召喚された勇者全員がそうなのではあるが。
「まったく、お前らは。俺を驚かせたいからって、いちいちこういうことするな。ここまで持って来て着込むの、大変だったろ」
呆れながら俺が聞くと、
「いや、こっちで着てないぞ。工房から着て直で来た」
八雲は平然と言う。
「お前、そんなの着込んでここまで来たのか。王都の連中に目を付けられたらどうする気だ」
バカが馬鹿やってると思われるならまだ良いが、兵器を造っていると警戒されれば大ごとだ。場合によっては、火消しに動かないといけない。
などと心配していると、
「大丈夫なのだ。木箱に詰めて宅配して貰ったのだ」
「耐久実験も出来て一石二鳥だった」
2人の行動力は限度が無かった。
「宅配便で送られてくんな!」
「ちゃんと菊野さんに受け取りサイン書いて貰ったぞ」
「そういう問題じゃねぇよ。……お疲れさま、菊野さん」
その時の状況を想像して、労いの言葉を菊野さんに掛けると、
「いきなり厳重梱包された大きな木箱が2つも来た時は、どうしようかと思いましたけど。念のために神与能力で視て確認しましたので、木箱から出してからこの部屋に居て貰いました」
余裕を感じさせる落ち着いた声で返してくれる。
菊野さんの神与能力は、彼女を転生召喚した神である観測神アルゴスの権能をそのままコピーした偽真鑑定眼なのだけど、これは見ようと思った対象の透視や遠隔視だけでなく、過去視や疑似的な未来視すらできる能力だ。
魔王との戦いで、こちらの戦況をぐっと楽にしてくれた能力でもある。
「菊野さん居なかったら、倉庫に投げ込まれてたぞ、お前ら」
たしなめるように言うと、
「酷いのだ酷いのだ。せっかく、気を遣って外にはバレないようにして来たのに」
「貴様は人の心が分からない!」
なんでか俺がなじられる。
「その気遣いは助かるよ。ありがとさん。でも、そもそもが着込んで来なくても良いだろ」
「呆れる表情が見たくて」
「思いついたらやらずにおれなかったのだ」
「確信犯じゃねぇかよ……ったく、とにかく座れ。立ち話もなんだしな」
苦笑するようにため息一つ吐いて俺は2人に、応接室に幾つも備え付けられた、来客用のテーブルを挟んで設置されたソファセットの一つを勧める。
「分かったのだ。座るなら……あそこが良いのだ!」
来客用のお菓子として、小さなカップケーキが幾つも置かれたテーブルを前にしたソファを、目ざとく見つけた出雲が一番に座る。
その後を、苦笑しながら続く八雲。2人が向かったのを確認して、
「あのケーキ、菊野さんが用意してくれたんですか?」
小声で菊野さんに聞いてみる。
「ええ。どの程度来られるか分からなかったので、少し多めに作り過ぎちゃいましたけど」
「ありがとうございます。美味しそうですよ。残っちゃったら、あとでおやつにでも食べませんか? お茶は、俺が入れますから」
「……そうですね。時間に余裕があったら、お願いします」
お茶の約束一つとりつけて、俺は菊野さんに先にソファを勧める。今日は親しい仲間との話し合い。こういう時ぐらい、レディファーストをさせて貰っても良いだろう。
菊野さんは、ちょっと迷うようなそぶりを見せたけど、俺のエスコートを受けてくれる。
彼女が座ってくれてから、俺も隣に座り、早速話し合いを始めることにした。
「帰れ」
「どこにーっ!」
「いきなりは酷くない!」
ガッチャガッチャ大騒ぎしながら返すバカ2人。動くたびに、ぷしゃーっぷしゅーっと白い蒸気が至る所から漏れ出る。
「爆発せんだろうな、それ」
「自爆装置は標準装備だ!」
「ただの危険物じゃねぇか!」
「自爆は紳士のたしみなんだぞ!」
「そんな異次元な紳士いてたまるか!」
いつもの如く平常運転な2人に、いつもの如く突っ込まざるを得ない俺。
気付けば、菊野さんは一歩下がった所で静かにこっちを見てる。
「蔑みの眼差しが心地好いと思わないか?」
「同志なのだな!」
「俺まで巻き込むな!」
気のせいか、菊野さんのこっちを見る眼差しの生温かさが上がった気がする。
「とりあえず、それ脱げ。話はそれからだ」
こいつらのペースに合わせると話がいつまでたっても進まないので、少し強めの口調で2人に言うと、
「ふっ、ふはははははっ!」
「脱げ? 脱げだと?」
2人は意味も無く笑った後、
「「脱げないので脱がして下さい!!」」
ハモって言った。
「馬鹿か!」
「確認するまでも無いですね」
思わず声を上げた俺に、冷静にツッコミを入れる菊野さん。いかん、ちょっと恥い。
「……脱げないって、どうすりゃ良いんだよ」
菊野さんのツッコミで少し頭の冷えた俺が2人に聞くと、
「背中に、着脱用ボタンあるから、それ押してくれ」
「これ着てると、腕がそこまで回らないので無理なのだ」
ガッチョンガッチョン武骨な腕を回そうとしながら回し切れずに懇願してくる。しょうがないので2人の内、長身な八雲の背中に先に回ると、
「着脱用ボタンって……この赤いヤツか?」
ひとしきり背中を見て回った後に見つけた、赤いボタンがそうなのか聞いてみる。
「そうそう、それそれ。押してくれ」
「ん、分かった。押すぞ」
ぽちっと押してみる。が、何も起きない。
「押したぞ? 何の変化も無いけど、これで良いのか?」
「いや、16連射してくれ」
「多いわ! なんだその無駄な仕組み!」
呆れるけどしょうがないので連打してみる。
「押したぞ!」
「残念! 秒間16連射だ!」
「だからなんだその無駄機能!」
思わずツッコミを入れると、
「マジレスすると、間違って脱げたりしないようにする安全装置なのだ」
小柄な蒸気甲冑を着た出雲に返される。
「……なるほど。それ自体は納得できるけど、限度があるだろ。もうちょい簡単にしとけ」
「機能の限界を試してみたかった。反省はしている。後悔はしてない」
「お前は後悔しとけ、八雲」
げんなりしつつボタンを猛烈連射してやると、関節部分の至る所から白い蒸気を出しながら蒸気甲冑が着脱される。
「ふぅ。窮屈だった」
蒸気甲冑の下から出てきたのは、作業着に身を包んだ30後半に見える厳つい男。出雲と同じく造形神デミウルゴスに転生召喚された勇者の一人、叢雲八雲だ。
「窮屈って、それならなんでそんなの着てここに居る」
「ふっ。以前お前にはハリボテなプロトタイプを見せただけだからな。先日ついに装着できる試作品が出来て嬉しくて、驚かせたくなった」
「驚くより呆れるわ。それより、出雲も早く脱げ」
「脱げって。いやらしいのだ」
「その格好に欠片もエロス感じんから、いらん心配せんで早く脱げ」
「むぅ。分かったのだ。八雲、脱がせて~」
「おう。ちょっと待て」
手慣れた様子で着脱ボタンを16連射する八雲。
「手間のかかる物作ったな、お前ら。それ、使い勝手悪いだろ」
「作った後に気付いた」
「作る前に気付け」
「思いついちゃったら楽しくなってな。止まらなくなった。っと――」
着脱ボタンを押し終わり、出雲から離れる八雲。白い蒸気が流れる中、武骨な蒸気甲冑から一人の少女が現れる。
「はふぅ~。やっぱの生身の方が楽なのだ。装着性の快適さが次の課題になるのだ」
八雲と同じ作業着を着込んだ、小柄な少女に見える彼女が、八雲と同じく造形神デミウルゴスに転生召喚された勇者の一人、出雲栞奈だ。
見た目は、こちらの世界に転生召喚された時と変わらず、相変わらずかわいらしい。もっとも、見た目が変わらないのは、転生召喚された勇者全員がそうなのではあるが。
「まったく、お前らは。俺を驚かせたいからって、いちいちこういうことするな。ここまで持って来て着込むの、大変だったろ」
呆れながら俺が聞くと、
「いや、こっちで着てないぞ。工房から着て直で来た」
八雲は平然と言う。
「お前、そんなの着込んでここまで来たのか。王都の連中に目を付けられたらどうする気だ」
バカが馬鹿やってると思われるならまだ良いが、兵器を造っていると警戒されれば大ごとだ。場合によっては、火消しに動かないといけない。
などと心配していると、
「大丈夫なのだ。木箱に詰めて宅配して貰ったのだ」
「耐久実験も出来て一石二鳥だった」
2人の行動力は限度が無かった。
「宅配便で送られてくんな!」
「ちゃんと菊野さんに受け取りサイン書いて貰ったぞ」
「そういう問題じゃねぇよ。……お疲れさま、菊野さん」
その時の状況を想像して、労いの言葉を菊野さんに掛けると、
「いきなり厳重梱包された大きな木箱が2つも来た時は、どうしようかと思いましたけど。念のために神与能力で視て確認しましたので、木箱から出してからこの部屋に居て貰いました」
余裕を感じさせる落ち着いた声で返してくれる。
菊野さんの神与能力は、彼女を転生召喚した神である観測神アルゴスの権能をそのままコピーした偽真鑑定眼なのだけど、これは見ようと思った対象の透視や遠隔視だけでなく、過去視や疑似的な未来視すらできる能力だ。
魔王との戦いで、こちらの戦況をぐっと楽にしてくれた能力でもある。
「菊野さん居なかったら、倉庫に投げ込まれてたぞ、お前ら」
たしなめるように言うと、
「酷いのだ酷いのだ。せっかく、気を遣って外にはバレないようにして来たのに」
「貴様は人の心が分からない!」
なんでか俺がなじられる。
「その気遣いは助かるよ。ありがとさん。でも、そもそもが着込んで来なくても良いだろ」
「呆れる表情が見たくて」
「思いついたらやらずにおれなかったのだ」
「確信犯じゃねぇかよ……ったく、とにかく座れ。立ち話もなんだしな」
苦笑するようにため息一つ吐いて俺は2人に、応接室に幾つも備え付けられた、来客用のテーブルを挟んで設置されたソファセットの一つを勧める。
「分かったのだ。座るなら……あそこが良いのだ!」
来客用のお菓子として、小さなカップケーキが幾つも置かれたテーブルを前にしたソファを、目ざとく見つけた出雲が一番に座る。
その後を、苦笑しながら続く八雲。2人が向かったのを確認して、
「あのケーキ、菊野さんが用意してくれたんですか?」
小声で菊野さんに聞いてみる。
「ええ。どの程度来られるか分からなかったので、少し多めに作り過ぎちゃいましたけど」
「ありがとうございます。美味しそうですよ。残っちゃったら、あとでおやつにでも食べませんか? お茶は、俺が入れますから」
「……そうですね。時間に余裕があったら、お願いします」
お茶の約束一つとりつけて、俺は菊野さんに先にソファを勧める。今日は親しい仲間との話し合い。こういう時ぐらい、レディファーストをさせて貰っても良いだろう。
菊野さんは、ちょっと迷うようなそぶりを見せたけど、俺のエスコートを受けてくれる。
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