転生して10年経ったので街を作ることにしました

笹村

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第一章 街を作る前準備編

13 帰り道で襲撃されました その④

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 爆音と爆圧が、俺の身体を打つ。その只中にあって、俺は一つの疑問が浮かぶ。

(魔力結晶になる事も無く自爆した?)

 爆風に吹っ飛ばされながらも、自爆される寸前に後方に跳びダメージを減らしていた俺は、意識の片隅で状況分析をする。

(肉体の維持が出来ないほど弱ったなら、自己保存をするために結晶化して休眠状態になる筈だってのに、どういうことだ?)

 魔物の本質は生物の負の感情がこもった魔力の塊なので、取り込んだ物質により作り出した肉体が破壊されても滅びはしない。
 再生が不可能なほど肉体が破壊されたなら、自身を構成する魔力を集約し結晶化して、再び肉体を作り出せるほど魔力を貯めるまで休眠化する。
 それをしなかったという事は、今まで知られていない新種という事か、あるいは――

(――と、それどころじゃないか)

 状況分析に費やしていた意識を戻す。
 爆発に吹っ飛ばされ宙に浮いた身体が落下し、地面に激突しそうになってるのに、さすがにいつまでも思考に費やす余裕は無い。

 俺は具現化させていた村正への魔力供給をカットし消すと、その分の魔力を身体強化に回す。
 地面に激突する寸前、身体をひねり足から着地。
 けれど勢いが付き過ぎ止まれず、身体を前に転がすようにして受け身を取る。
 何度か転がり地面に衝撃を逃がした所で立ち上がると、念の為に周囲を警戒するが、特に危険な気配は感じられなかった。

 最低限の警戒心を残し、身体のりきみをほぐす。
 そして受け身を取っている時に着いた汚れを手で払っていると、

「お疲れ~」

 へらへら笑いながら和真が近付いてくる。

「お前な、少しは手伝えよ」
「え~、少しは相手の気を引いてやったじゃん」
「それは助かったんで、ありがとう。でもな、お前、俺より強いんだから、少しは手を貸せ」
「え~、ヤダ~、疲れるじゃん」
「お前な……」
「大体さ~、余裕だったじゃん。神与能力チートスキルも使わなかったし」
「使わないで済むなら使わないよ。お前も知ってるだろ? 俺の神与能力チートスキルの使い勝手の悪さ」

 俺の神与能力チートスキルは、リリスをこちらの世界で実体化させるのに容量のほとんどを持って行かれたので、残り物で創ったような微妙な物だ。
 発動させるのに条件があるし、魔力以外の代償も必要になる。
 しかも、使ったのがバレると確実にリリスに怒られる、というか泣かれるので、基本使いたくない。

「お前の神与能力チートスキルを完全開放した時に比べりゃ、大したことないよ」
「そうか~? 結構ヤバいと思うんだけど、お前の神与能力チートスキル
「大抵、使う時は死に掛けるからな」
「そういうヤバさとは違うと思うけどな。まぁいいや、それよりとっとと帰ろうぜ~。ただ飯とただ酒をくれ」
「まだダメだ。帰る前に、周辺探るぞ。あの魔物の痕跡、何か残ってるかもしれないし」
「え~、良いじゃん、別に。単に運が悪かっただけだって。これ以上、俺の神与能力チートスキルに巻き込まれる前に、戻ろうぜ~」
「……ちょっと待て。やっぱり今、お前の神与能力チートスキルの影響受けてるのか?」

 ざわりと、嫌な予感が背筋に走り、俺は和真に尋ねる。すると和真は、少しだけバツの悪そうな表情になると、

「多分、な……でないと早々、魔物に襲われるなんて不幸に巻き込まれやしないだろ」

 微妙に自信なさげに返す。その応えを聞き、俺は更に訊き返す。

「……なぁ、微妙に自信なさげだけど、それって、今ここで魔物に襲われた事が、お前の神与能力チートスキルのせいなのかどうかが、分からないってことか?」

 和真の神与能力チートスキルの影響で、今ここで魔物に襲われました、ならまだ良い。
 けれど、もしそうではなかったとしたら?
 俺が受ける不幸は、それ以外の何かだったとしたら?
 まだ、俺が受ける不幸は、終わるどころか始まってすらいない可能性がある。

 危機感を抱きながら俺が訊くと、

「正直分からん。お前が今、俺の神与能力チートスキルの影響にあるのは、確実だと思うけど」

 こちらを気遣うような口調で、和真は応えてくれた。
 その応えに、俺は自分の不幸が、まだ始まっていない事に賭ける。

(和真の神与能力チートスキルに巻き込まれて、この程度な訳がない。もっと、致命的な何かが起こる筈だ。
 なんだ? 今の俺に、なにが起れば、不幸だと思える?)

 考える。必死に考える。

(リリスや菊野さんや、他の勇者のみんなに、なにか被害が出る?
 それは確かに不幸だけど、本当にそれか? そんなに分かり易い不幸なのか?
 もしそうなら、今すぐ屋敷に帰ってみんなの無事を確認して、警戒するように連絡を取るんだけど……)

 すぐに考えつけたことを、俺は否定する。

(……違う、これじゃない。この程度の不幸なら、いつでも起こることは想定してる。何かが起きても対応できるように、対策は取っているんだ。大した事にはならない。
 だったら、なんだ? 直接的に俺やみんなに不幸が訪れること以外に、何がある?)

 そこまで考え付けてから、ようやく俺は思いつく。

(直接でなければ間接的に、か? 身内ぐらいの近しい人達じゃない、少しだけ親しい人達や、そういった人達にとっての親しい人。そういう人達に不幸が起って、そこから間接的に俺たちに不幸がやって来る? そうだとしたら――)

 考えれば考えるほど、嫌な予感が膨れ上がる。
 少しでも早く気付かなければ、手遅れになるような、そんな予感。

(くそっ、対象となる人達が多すぎる。
 ……いや、そうでもないのか? 和真が俺を探してたのは、ここ最近のことだ。それを考えれば、ここ最近で親しくなった相手に不幸が来ると考えた方が――)

「――あっ!」

 直感が走る。根拠なんてまるでないが、それしか考えつけない。

「和真! 頼む! 力を貸してくれ!」

 余裕のない俺の声に、

「分かった。なにすれば良い?」

 和真は迷わず応えてくれる。俺は、頼りになる仲間に笑みを浮かべながら、

「新しく友達になった子がいるんだ。そこに行く」

 和真に短く返し、身体強化魔術を最大限に上げ、一気に走り出す。
 すぐに和真も同じようにして追い付いて来てくれたのを確認してから、更に速度を上げる。

(この速さなら、数分掛からないけど……間に合うか……)

「……違う。間に合わせるだ」

 俺は自分を鼓舞するように呟きながら、夜の闇の中を疾走し続けた。
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